Infostand海外ITトピックス

35ドル端末がネットTVを変える? Googleの「Chromecast」 (カギを握るのはコンテンツ?)

カギを握るのはコンテンツ?

 Chromecastに対しては、多くのメディアが好意的だ。「ChromecastはTV配信分野でのGoogleの独占の始まりか」(Forbes)、「これまでで最も重要なスマートTV技術」(The Register)と題した2つの記事を見てみよう。

 Forbesに寄稿したコンシューマー技術専門ブロガーのLarry Magid氏は、Appleと、この秋にSTBを発表するとの観測があるAmazon、それにソニー、LG、PanasonicなどのゲームやスマートTVメーカーとの競合を認めながらも、市場は比較的早期であること、35ドルという価格でGoogleがテレビ配信業界を独占するかもしれないと予想する。

 PVR(パーソナルビデオレコーダー)とは異なり、ストリーミングではユーザーはコマーシャルをスキップできない。このため、Huluなどのコンテンツプロバイダーやテレビ局も前向きになるだろうと見る。この点についてThe Registerは、メディアサービスやアプリ開発者は「端末の登場を待つ必要がない」と付け加える。

 辛口な見解で知られるThe Registerも、珍しく全面的に肯定的な論調で分析している。現時点での機能については、既存のデバイスができる機能の域を出ていないとしながらも、その潜在力の高さからChromecastを評価する。

 たとえば、Chromecastは端末のコンテンツをテレビで閲覧するのではない。送信アプリはコマンドを送るだけで、コンテンツはクラウドから配信される。そのため、Chromecastで閲覧しながら端末側でメールをチェックするなど他の操作が可能だ。

 「プラットフォームという言葉が乱用されているが、Chromecastは他の専用メディアプレーヤー端末と比較するとメディアプラットフォームに近い位置にある」とThe Registerは記す。この仕組みをはじめChromecastの潜在力は高く、エコシステムを作ることができれば大成功する、とみる。

 だが、CNN Moneyはローカルメディアのストリーミングが公式にはできないこと、HDMI端子で電力供給できないので別途給電用USBが必要であること、Chromecast標準のやスタンドアロンのユーザーインターフェイスがないこと、などの問題点を挙げ、「一般的なコンシューマーの人気を集めるには、制限が多すぎる」ため、「一時的なソリューションだ」とした。機能面だけではなく、ハードウェアを作るというGoogleの動きが、Google TVで提携しているハードウェアパートナーとの関係に悪影響を及ぼすリスクもあると指摘する。

 Googleがテレビに挑戦するのはこれが初めてではない。2012年に発表した球形のストリーミング端末「Google Q」はリリースまでこぎつけず、ソニーなどと協業したスマートTVプラットフォームGoogle TVも失敗。Google TVでは「Hulu」などの外部サービスやコンテンツプロバイダーの支持を得られなかった。Chromecastはどうなのだろう?

 The Register、CNN Moneyなど多くが、成否を分ける要因は利用できるコンテンツがどれだけ増えるかだと指摘する。The Registerは、SDK(Google Cast SDK)を使って開発したアプリについてGoogleの許可が必要であるなど制限があることも疑問点としている。

(岡田陽子=Infostand)