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「Firefox」がモバイル進出 MozillaのスマートフォンOS


 Mozillaが、「Firefox OS」というスマートフォンOSで、モバイルに進出することを正式に発表した。Firefoxは、かつてブラウザーが「Microsoft Internet Explorer」の圧倒的なシェアで占められる中に登場して、第2位の地位を築き上げた。その名を受け継いだFirefox OSは、Webアプリに対応したOSだ。Firefoxはモバイルの世界も席巻するのだろうか。

Mozillaのモバイル向けWebベースOS

 Firefox OSは、「Boot To Gecko」(B2G)として2011年7月にスタートしたモバイル端末向けOSプロジェクトの成果だ。Firefoxの中核であるレンダリングエンジンGeckoを利用。Linuxカーネルや、プラットフォームに依存しないJavaScript APIなどで構成される。

 最大の特徴はWebベースで、HTML5を使って開発したアプリケーションが動く点だ。通話などの電話の機能まで全てWebアプリとして動作し、複雑なミドルウェアを削減することで、軽さを実現したという。Firefox OSで、携帯キャリアはカスタマイズとリッチなユーザー体験を提供できるとしている。

 7月2日のFirefox OS発表では、同時に端末メーカーとしてTCL Communication Technology(「Alcatel One Touch」ブランドで展開するホワイトブランドメーカー)とZTEの中国2社がFirefox OS搭載端末を製造する意向を表明した。

 チップセットでは、現在スマートフォンで大きなシェアを持つQualcommの「Snapdragon」が同OSをサポートするという。さらに携帯キャリアでは、スペインのTelefonica、ドイツのDeutsche Telekomなど7社程度が支持するという。Firefox OSの搭載端末は2013年初め、Telefonicaがブラジルで展開する「Vivo」ブランドから登場する予定だ。


狙うはローエンド

 スマートフォン・プラットフォームはIT業界の最激戦区である。まずiPhoneのApple iOS、そしてメーカーの支持を集めるGoogle Androidの二頭体制が明確になりつつあるが、これにMicrosoftが「Windows Phone 8」で何度目かの携帯市場挑戦にかかる。さらに「BlackBerry」「Symbian」など古くからのOSもあれば、Linux Foundationの「Tizen」、Hewlett-PackardもPalmベースのオープンソースモバイルOS「Open webOS」を準備している。こんな中で、MozillaはFirefox OSを投入することになる。勝算はあるのだろうか?

 Firefox OSについて、Mozillaは「オープンなWebの力をモバイルにもたらすことで、既存の独占的なプラットフォームの支配や限界から解き放つ」と述べている。また、開発者に対しては、既存のWeb技術でアプリケーションを構築できること、既存のHTML5アプリが動く点を大きな特徴として売り込んでいる。

 MozillaのCEO、Gary Kovacs氏はReutersに対し、「収益目的のGoogleやAndroidに対する代替であり、市場に自分たちが入り込む余裕はある」「幅広く受け入れられるだろう」と、Firefox OSでのチャンスを語っている。

 Mozillaの戦略をみると、Firefox OSはローエンドに的を絞っている。Mozillaのエバンジェリスト、Christian Heilmann氏はArstechnicaの取材に対し、「プラットフォームは主として途上国を対象としており、エントリーレベルの端末向け」と述べている。

 これらの市場ではスマートフォンがまだ普及しておらず、もっと価格帯を下げたスマートフォンが求められる。オープンソースで参入障壁が低いことで、Firefox OSがニーズにフィットすると考えているようだ。また、Hailmann氏は、iOSとAndroidに対抗するつもりはないと強調したという。

 しかし、BetanewsではFirefox OSが対抗するのは「Android 2.3」(Gingerbread)と見る。Symbianの名前もいくつかのメディアから挙がっている。例えばeWeekでは、NokiaはSymbianよりWindows Phoneを選択したが、Symbianはいまだに開発が続いているOSであると指摘する。Apps Tech Newsは、HuaweiやZTEなどが製造するAndroid端末、Samsungの「GALAXY Mini」、NokiaのSymbianライン「Asha」などと競合すると見る。

 Firefox OSを採用するTelefonicaの幹部はFirefox OSを選択する背景について、複数のメディアに語っている。PC Proによると、Androidよりも優れる点としては、ハードウェア要件が低く、Androidよりもメモリや電力の消費で優れること、分断化がなく、アップデートが容易なことなどを挙げている。またTechRadarに対しては、iOSとAndroidアプリストアにあるアプリの75%がHTML5を利用しており、Firefox OSに容易に移植できる点を利点として挙げている。


「鉄砲での戦いに、刀で臨む」

 だが、新しいモバイルOSに対するメディアの反応は、歓迎というより冷淡にも感じられる。Apps Tech Newsは「ブランディングが重要だ。発表された携帯キャリアはブランド力があるが、(未知数のFirefox OS)端末をポートフォリオに入れるのをためらう者もいるのではないか」とのYankee Groupのアナリストのコメントを引用している。

 eWeekは「Firefox OSは市場の流れを変えない」として、10の根拠を列挙した。すなわち、AndroidやSymbianとの戦いに加え、「Firefoxは“テッキー”すぎる」「タブレット戦略が欠如」「OSのコアとしてのFirefoxブラウザーは機能しない」ことなどを挙げる。合わせて、これまでさまざまなプラットフォームがiOSとAndroidに挑戦したが成功していないし、「成功するには、極めて印象的な特徴が必要なのだが、Firefox OSにはそれがないように見える」と述べている。

 Betanewsは、Webブラウザーで成功したFirefoxの時との違いとして、モバイルOS分野はより競争が激しいと指摘。Mozillaは非営利団体でありリソースが限られることなどを挙げながら、「Firefox OSのスマートフォン市場への参入は遅すぎる」と結論づけ、「鉄砲での戦いに、刀で臨むようなもの」と評している。

 だが、TelefonicaとしてもFirefox OSが成功を約束するものでないことは十分承知のようだ。「(成功に必要な)作業が膨大なものであることは分かっている」とTelefonicaの幹部はPocket-lintに語っている。では、どうすればFirefox OSは成功できるのか。

 TechRadarはFirefox OSの成功に必要なポイントとして、リリース時期、価格、WebベースのHTML5、アプリエコシステム、ソーシャルネットワークとの親和性、Qualcommなどを挙げている。

 また、CSS InsightのアナリストはReutersに対し、モバイルOS成功に必要なものは「スケール(規模)とモメンタム(勢い)の好循環」とした上で、「メーカーとキャリアのコミットは、開発者の支持と消費者の関心を加速するのに不可欠で、これがプラットフォームへのニーズを強める」と述べている。

 Mozillaは循環を起こさねければならないということだ。そのローンチは来年初めの予定だ。


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(岡田陽子=Infostand)
2012/7/9 10:34