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ハード企業へと変貌するGoogle HTCのスマホ部門買収

 Googleが、台湾の携帯電話メーカーHTCのスマートフォン部門の一部を11億ドルで買収すると発表した。携帯電話メーカーの買収は、これで2度目。前回はMotorolaを125億ドルという巨費で買収し、2年ほどで売却してしまった。それなのに、なぜ再び携帯電話ハードを手に入れようとするのか――。そこからは、スマートフォンからポスト・スマートフォンへとつながる状況の変化がうかがわれる。

両社の台所事情

 両社の発表によると、HTCで「Pixel」開発を担当する従業員ら約2000人がGoogleに移籍。あわせてHTCは知的財産権をGoogleに非独占的にライセンスする。Pixelは、Googleが昨年発売したオリジナルスマートフォンでHTCに生産を委託している。

 移籍する従業員は、昨年、Googleがハードウェア部門を統合して発足した事業部に所属する。Pixelのほか、Nexus、Chromecast、Google Glassなどを製造しており、昨年、Lenovo傘下のMotorola CEOから担当バイスプレジデントに就任したRick Osterloh氏が率いている。

 Osterlohは公式ブログで、「この新しい仲間たちとは、既にPixelスマートフォンで密接に協力してきた。1つのチームになって、何ができるかに興奮を覚える」とコメントしている。11億ドルは現金で支払われ、取引完了は2018年内の予定だ。

 HTCは、2008年に発売された最初のAndroid端末「HTC Dream」(T-Mobile G1)のメーカーだ。同時にWindows Phoneでもトップシェアを誇り、2011年ごろまで世界のトップ5に食い込んでいた。しかし、Samsungに引き離され、Huaweiに抜かれて低迷。シェアは1%を切り、昨年は3億5100万ドルの純損失を出している。

 この不振から身売り観測まで出ていたが、部分売却で済んだことになる。同社はスマートフォンの受託生産部分を売却する一方で、自社ブランドスマートフォンやVRハードウェアの「Vive」製品ラインを維持。「HTC U11」に続くフラッグシップモデルの開発やIoT、AIへの投資を続け、VRエコシステムの構築に注力すると説明している。

 Bloombergによると、2000人はHTCにとっては約19%の人員削減になる。同時に11億ドルのキャッシュを投入して、利益率の高いハイエンドスマートフォン事業や、VR事業を柱としていきたい考えだ。だが、Viveも、Oculus riftやPlayStation VRなどとの価格戦争に直面しており、引き続き厳しい状態が続きそうだという。

 一方のGoogleは約910億ドルのキャッシュの用意があり、11億ドルのインパクトは大きくない。