事例紹介

「クラウドソーシングで地方創生」には何が必要? 様々な取り組みが進展中

「クラウドワークスアンバサダーサミット」から紐解く

 クラウドワークスは9日、地方創生にクラウドソーシングで挑む全国40団体が集合する「クラウドワークスアンバサダーサミット」を開催した。

クラウドワークスの魅力を伝えるアンバサダー

 クラウドワークスは、Web上でお仕事マッチングするクラウドソーシングプラットフォームを提供する企業。その利用を促進するための施策が「クラウドワークスアンバサダープログラム」で、全国各地で地域に根ざして活動する団体・企業が、地域で就労する個人などに、クラウドワークスの効果的な活用法を伝える「クラウドワークスアンバサダー(以下、アンバサダー)」として活動している。

 クラウドワークス 執行役員 経営企画担当の田中優子氏によると、「サービスは順調に成長しており、(2015年)3月中にユーザー50万人に達する見込み。ユーザーは全国に拡大しているが、東京以外が77%と特に地方での活用が広がっている。そうした中でアンバサダーの役割が重要なものになっている」という。

ユーザーは全国に拡大。東京以外が77%
受注率も東京以外が87%。地方と東京をつなぐインフラに成長しつつある!?

 アンバサダーの役割は、(1)クラウドワークスの魅力を全国に伝える、(2)クラウドワークス上で行われる受発注を支援する――の大きく2点。2014年7月11日に始まった制度だが、「アンバサダーは全国42都道府県106団体に。立ち上げ8カ月で急拡大している」(同氏)という。

 急拡大の原動力となった1つが、2014年8月25日に発表された地域特化型クラウドファンディング「FAAVO」のアンバサダー登録である。「地域特化型」という文字が示すとおり、全国に拠点を持つFAAVOと手を組むことで、アンバサダーを一挙に全国に広げることに成功したのだ。現在、全国中小企業へのIT導入を支援する「経革広場」との連携も進めており、全国の団体が順次登録中。「アンバサダー制度はまもなく47都道府県すべてがカバーされる」(同氏)という。

アンバサダーの役割
アンバサダーは全国42都道府県106団体に
FAAVOと提携

クラウドファンディングとクラウドソーシングは相性抜群!?

 実際のところ、クラウドソーシングとクラウドファンディングはとても相性がいいようである。クラウドワークスのお仕事例として、アンバサダーでもある仙台・MAKOTOが自社で運営するクラウドファンディングのコピーライティング、機能に関するネーミング、ロゴデザインなどをクラウドワークスで発注。その資金を自社のクラウドファンディングで調達した例が紹介された。

 同様の取り組みが、徳島・フューチャーコワーカーズ(FAAVO徳島)の野菜ソースラベルデザインや、大阪・NFL(FAAVO大阪)の武将スーツのロゴデザインといったお仕事でも実施され、クラウドファンディングで資金調達→クラウドソーシングでお仕事発注という流れができつつあるようなのだ。

仙台・MAKOTOの事例
クラウドファンディングで資金調達→クラウドソーシングでお仕事発注の流れ

PCを使えない人もクラウドソーシングを活用するような流れ

 また、宮崎県日南市では「行政がアンバサダーとして活動する」という先進的な取り組みが始まっている。日南市がクラウドソーシングの活用法などを市民に広めるというものだが、具体例として、地元の漁師が宮崎カツオブランドの全国PRというお仕事をクラウドワークスで発注する事例が注目を集めた。

 「漁師の方はPCスキルがなく、実際には息子さんがお仕事発注を行った。市がアンバサダーとなることで、本来であったらクラウドソーシングなんて知る機会もなかったような人たちも新しい仕事の形に取り組めるようになっている」(同氏)――と、そんな新たな展望も見え始めている。

宮崎県日南市が行政としてアンバサダーに登録
地元の漁師が宮崎カツオブランドの全国PRにクラウドワークスを利用

地方の産業としてクラウドソーシングが市民権を得るとき

 一方、懸念されるのがクラウドソーシングで仕事単価が下落しないかというものだが、日南市が進める市内で月収20万円ワーカーを育成するプロジェクト(参考記事)が、その懸念を払拭するヒントになりそうである。

 日南市が選定した3人の主婦ワーカーに地元のアンバサダー(BRING株式会社)がアドバイスしながら、地元メディアのテゲテゲツーシンがその取り組みを追うことでPRを図るというもので、「1年ほどはかかるかもしれないが」(同氏)目標の月収20万円をめざして、いままさに取り組まれている最中だ。もしかしたら、このように収入目標を立てて取り組む施策が達成されたときが、そしてそのノウハウが体系化されたときが、クラウドソーシングが本当の意味で「地域の新たな産業」として市民権を得るときかもしれない。そのためには、何はともあれアンバサダーの役割が非常に重要となる。

月収20万円ワーカーを育成するプロジェクト

受発注スキルを段階的にステップアップさせていく取り組み

 アンバサダーのミッションは、クラウドワークスの魅力を全国に伝えることと、クラウドワークス上で行われる受発注を支援すること。地域におけるクラウドソーシング普及のためにチャレンジとなるのが、クラウドソーシングへ踏み出す際のハードルを下げることと、受発注の流れをよりスムーズにし、その質も段階的に熟成させていくことだ。

 「クライアント側の発注の際には、新しい人材活用のあり方を知るという段階から、支援を受けながら発注し、やがては自らの力で業務を切り出し発注するという段階へステップアップしていく必要がある。ワーカーの受注の際も、窓口を通じて提供された仕事を支援を受けながら行う段階から、多様なスキルを持つ個人がチームを組んで仕事をする段階が理想」(同氏)。

 そこへ向けて現在、東北大学や徳島・フューチャーコワーカーズなどが発注体験講座を開いている。具体的には、学生が企業へ要望をインタビューし、自身で提案依頼書(RFP)を作成し、クラウドワークス上で発注するという「ディレクター体験」といった取り組みが進められている。

発注体験講座が展開中
学生がディレクター体験

クリエイター育成協会がワーカーの教育プログラム展開へ

 こうした取り組みを正式なプログラムに進化させようという動きも出ており、クリエイター育成協会が「受発注スキル向上プログラムの開発・提供」に着手した。Web業界ではいま「Webディレクション」としてプロジェクトの全体を取りまとめるような知識を求める傾向が強いことや、クラウドワークスのワーカーにはPhotoshop・Illustratorを使える人がすでに多数いて、もはや差別化対象にならないことを背景に、専門知識プラスαの能力として「ディレクション力」を学べるスクールの開講を進めている。

 内容はおよそ9カ月にわたって、各種研修から、インターンとして実務にチャレンジし、最終的にクラウドワークス案件を発注側としてメインディレクションを担当するという教育プログラム。「実務を経験することで、チームが“赤の他人”の集合体であることを理解できる。さまざまな考え方を持つその道のプロたちが言い合いながら、エゴを理解し合い、チームを形成し、プロジェクトとして動く。その一連を経験できる」(クリエイター育成協会 理事/東京マネージャーの高田信宏氏)という。こうした経験を通じて、単発のお仕事で終わってしまうワーカーだけでなく、永続的にクラウドソーシングで働けるワーカーの育成モデルを構築したい考えという。

 「まずはアンバサダーの皆さまにこの教育プログラムを受けていただき、願わくば地域にディレクション教育を普及する活動をともに広げていきたい」(高田氏)。全国40団体のアンバサダーが集うサミットの場でそう呼びかけていた。

高田氏の講演の様子
地方創生にクラウドソーシングで挑む全国40団体がクラウドワークスのオフィスに結集

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 20〜39歳の若年女性が半減し行政機能が維持できなくなる「消滅可能性都市」に、全国計896の自治体が該当すると指摘される昨今、地方に労働基盤を提供するクラウドソーシングには「地方創生」という意味でも大きな期待がかかっている。

 経済産業省が補助金を出す行政の取り組みとしても、初めて「クラウドソーシング」という文字の踊る「クラウドソーシング・プロデューサー」制度が始まった。クラウドソーシング協会が「プロデューサー」と認定した団体に、経産省が活動費として53万円を支給するものだが、現在105の認定団体のうち約30団体がアンバサダーから選出されているという。

 クラウドソーシングは「地方創生」の一端を担うか。そのためには何が必要で、何が課題なのか。今後もこうした取り組みに注目したい。

(川島 弘之)