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もっと使い易く高品質なグローバルネットワーク Coltが目指すNetwork as a Service
2025年1月30日 09:00
様々なクラウドサービスを利用することが一般的になり、企業は「欲しい時に欲しいだけ使う」「画面上で設定すればすぐに使える」ことに慣れている。だが現状では、クラウドと同様の俊敏性や柔軟性を持つネットワークサービスが提供されていない。いくつかの通信事業者が、ネットワークもas a Serviceで提供するNaaSに取り組んでいるが、中でもグローバルに自社ファイバーを持つColtテクノロジーサービス(以下、Colt)の取り組みは、海外拠点を多く持つ企業にとって朗報だ。
クラウドのメリットを生かせるか否かはWAN次第
コスト効率や、ビジネスへの俊敏なアジャストを目的として、クラウドサービス(AWS、Azure、Oracle Cloudなど)を使う。これはもはや常識だ。クラウドのメリットは、「必要なら増やして、不要になったら削除する」「使った分だけの従量課金」点が挙げられ、コンピューティングリソースについては、各クラウド事業者がそれを実現して提供している。
ただし、クラウドのインフラ、つまりハイパースケーラーのサーバーたちは、企業から見るとWAN(Wide Area Network)の向こう側にある。クラウドの「迅速で柔軟な変更」というメリットを享受するためには、自社からクラウド事業者までのネットワークも、同様の俊敏性と柔軟性が必要ということだ。
一般的なシステムは主に、サーバー(プロセッサーとメモリ)とストレージ、ネットワークで構成されている。そしてネットワークは、ネットワーク機器までではなく、そこから伸びたケーブルがなければ意味をなさない。日本国内に限れば、ダークファイバーが比較的潤沢で、ネットワーク機器を設定すれば簡単に開通や増速できる。ただし、世界中どこでもそうというわけではない。
グローバル展開している企業から「来週、東南アジアの帯域を倍にして」「新しい拠点を欧州に開設するから、来月開通して」とオーダーが来ても、現地のネットワーク事業者から回線を調達しているとしたら、在庫がなければ応えられない。
クラウドの柔軟性を享受するためには、それに追随できる柔軟なネットワークが必要。それが可能なのは、自前のファイバーを世界中に持ち、各地の商用ビルまでつなぎ込んでいて、要望があればすぐに回線を渡せるネットワーク事業者だけということだ。
海外拠点が増えるとネットワーク管理が面倒になる
元々グローバル企業と言われていた大企業はもとより、一般的にはドメスティックな印象のあるメーカーなどでも、海外売上の拡大を目指す企業が増えている。当然、海外に置いた拠点や販売店も自社のネットワークに接続しなければならないが、相手国が複数になると管理が煩雑になる。また、国によってサポート品質がまちまちで、トラブル対応に苦慮するケースもあるようだ。
それを解決する方法が、グローバルネットワークを1社にまとめてすっきりさせること。各国の現地キャリアの回線を調達して国際ネットワークとして販売しているケースもあるが、できれば、Coltのように各国に自前の回線を持つ通信事業者を選ぶのがお勧めだ。
Coltは英国の企業だが、米Lumen TechnologiesのEMEA事業を2023年11月に買収し、欧州で最大の通信事業者となっている。その他、APAC(日本を含むアジア地域と豪州)や北米に接続ポイントと自社回線があり、国をまたいでもワンストップでサービス提供できるのが特徴だ。
「国によってレギュレーションや文化が違う。そこを理解しているかどうかが、ネットワーク品質に影響する」と、英Coltテクノロジーサービスの水谷安孝氏(アジア太平洋地域社長)は言う。
日本では、非常に高いサポート品質が当たり前なので、ユーザー企業はそれと比較して、インフラ部門や運用を担当するSIerに苦情を言う。ただし、依頼したら時間ぴったりに来てくれる国ばかりではないし、動いてもらうためのプッシュの仕方があるという場合もある。そのような現地における機微を理解し、現地の言語でコミュニケーションできることが、品質を左右する。
Coltの主なサービスは、以下の通りだ。
- 専用線サービス:企業等の拠点間を接続する高品質の閉域網(L1/L2/MPLS)
- クラウド接続サービス:主要パブリッククラウドとのセキュアで広帯域なダイレクト接続
- インターネット接続:帯域保証型のインターネット接続(Local Break Out)
- 従量課金型サービス:必要な時に必要な分だけネットワークを利用
2024年11月現在、40カ国、52メトロネットワーク、世界230都市以上でサービス提供している。接続している商用ビルは3万2000以上、データセンターは1100以上という。
クラウドとのダイレクト接続についていえば、現在接続可能なサービスは、AWS、Azure、Oracle Cloud、Alibaba Cloud、IBM Cloud、Google Cloud。欧州では、VMware Cloud、SAP Cloud Platform、Salesforce Success Cloudへの接続も提供されている。
ネットワークも従量課金の「Colt On Demand」
「週に一度、グローバルのビデオ会議を行う」「シーズナリーのセールを実施する」など、ネットワークのトラフィックが、ある期間だけ通常よりも大幅に増えることはよくある。
しかし、「コンピューティングリソースはクラウドで柔軟に利用できるのに、ネットワークは複数社に見積もりを依頼して、それがなかなか来なくて催促するなど、時間がかかる」という話をよく聞く。新規プロジェクト立ち上げの場合には十分な検討が必要で、見積もり依頼→検討→発注→接続という手順になる。ただ、ネットワーク調達のフローがそのパターンしかないため、今まで通りのコストと品質で追加したいだけという場合でも、時間がかかってしまうのだ。
そうなると、あらかじめ最もトラフィックが多い時期に合わせた帯域で契約しておくことになる。もちろんこれは、不要なコストがかかる状態。さらには、キャパシティプランニングをしくじって、トラフィックの急増に対応できず、アプリケーションがトラブルを起こす危険性もある。
これを解消するのが「Colt On Demand」だ。完全にソフトウェア化されたネットワークサービスで、Colt On Demandポータルか、API連携したアプリケーションの画面から、拠点間を接続している専用線を、リアルタイムでオーダー、デリバリー、変更できる。Coltの自社所有ネットワークなので、新規開通も短納期だし、帯域の変更はリアルタイムで反映される。
「Colt On Demandを使うと、システムをデザインする段階で、必要な帯域やルートなどを画面上で設定し、見積もり依頼からプロビジョニングまで、ネットワーク調達を自動化できる」(水谷氏)
Colt On Demandを使うと、各種パブリッククラウドへのダイレクト接続も従量課金で使えるため、契約期間や契約帯域に縛られずに済む。例えば、週一バックアップの時に増速し、利用の少ない土日は逆に減速するというのがよくある使い方だ。
マルチクラウド環境を生かすNaaSの必要性
事業に関わる様々なアプリケーションを、パブリッククラウドやSaaS、エッジクラウドで稼働させる企業が増えている。このため、これらを相互に、あるいはオンプレミスのデータセンターと接続する必要がある。ただし、異なるクラウド事業者のネットワークを統合するのは、かなり複雑で難しい作業となる。
あるプロジェクトでAWSを使い、別のシステムではAzureを使い、データベースはOracleを使っている。こんな環境はよくあるだろう。それぞれのクラウドと自社をつなぐのはそれぞれのダイレクト接続サービスで、部署ごとにネットワークの契約が乱立してしまう。その結果、監視・管理の対象が増えて、インフラ担当者の負担が重くなる。
さらに、従来のネットワークソリューションでは、クラウドと同様の俊敏性と柔軟性を実現できないことが明らかになっている。
企業が求めているのは、複数のクラウドを含む環境全体のネットワークをオンデマンドで迅速にプロビジョニングし、パフォーマンス管理やセキュリティポリシーを一貫性のあるソフトウェア制御で適用できるソリューションだ。これを、NaaS(Network as a Service)と呼ぶ。
各社サービスとの接続を統合する方法として、検討が進んでいるのがAPIの標準化だ。現在、MEF(Metro Ethernet Forum)というネットワーク技術の標準化団体で、NaaSの定義やAPIの標準化を進めている。
Colt On Demandは、ネットワークをオンデマンドで提供するサービスであり、NaaSに求められている機能の多くを満たしている。2024年に開催された「Global NaaS Event」では、グローバルで3部門、欧州で3部門の、合計6部門でNaaSエクセレンスアワードを受賞した。さらに、現在セキュリティ機能の統合や、様々な事業者とのAPIを介した連携の準備を進めている。水谷氏によれば、「近々新しい発表ができそう」とのことだ。