ニュース
NTT Com、アルプスアルパイン、STech Iの3社、ローカル5Gを用いたオンボード映像伝送の実証実験を実施
2025年3月12日 11:30
NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)、アルプスアルパイン株式会社、双日テックイノベーション株式会社(以下、STech I)の3社は11日、栃木県茂木町のモビリティリゾートもてぎにおいて、ローカル5Gを用いた高精細・低遅延なオンボード映像伝送の実証実験を実施したと発表した。
NTT Comは、モータースポーツ分野においてICTを活用した取り組みを行ってきた。現在、サーキット場では、車両や設備のセンサーデータの伝送、トランシーバーなどの無線機の利用、売店などでのキャッシュレス決済、車載カメラからの映像伝送など、さまざまな用途で無線通信が活用されている。さらに近年では、レースカーのオンボード映像をリアルタイムで活用した、臨場感のあふれるレース観戦が要望されるなど、サーキットコース全域においてより高品質な無線通信が求められている。
サーキットコース全域で高品質な無線通信の実現に向けては、ローカル5Gシステムを利用した安定無線通信の構築、高速移動に適したローカル5G基地局の設置およびチューニングの実施、基地局と5Gコアの無線接続に関する検討に取り組んできた。
サーキット場では、イベント開催時に数万人規模の来場者がスマートフォンの無線通信を利用するため、キャリア無線基地局への通信が増大する。これにより、来場者のスマートフォン通信や運営に関わる通信など、サーキット場全体で無線通信がしづらい状態が発生する。
実証では、キャリア5Gとは異なる周波数帯を専有可能なローカル5Gシステムを構築した。これにより、来場者が多い場合でも、サーキット場内の運営において安定した無線通信が実現可能となる。
また、広大なレース会場では建物やトンネル、地面の勾配などにより電波が届きにくい場所が生じる。そのためチューニングを施し、サーキットコース全域で電波の届きにくい場所が発生しないよう、ローカル5Gシステムを構築した。
一般的なキャリア5Gでは、ハンドオーバー時のパラメーター(別の基地局接続に移行するタイミングなどを制御する値)は、高速移動に特化していないため、サーキット場では通信品質が劣化する場合がある。そのため、実証では通信端末が高速移動することを想定して、ハンドオーバー時のパラメーターを調整している。
ローカル5Gは、一般的に基地局と5Gコアを光ケーブルなどの物理線を用いて接続するが、構築する環境によっては、基地局と5Gコア間を物理線で接続できないケースがある。そのような環境でもローカル5Gシステムを構築できるようにするため、基地局と5Gコア間の接続をミリ波帯無線システムを用いて接続する取り組みを行った。
実証において、NTT Comは実験項目の策定および実施、結果の解析、ローカル5Gエリア構築に向けた、電波伝搬シミュレーションの実施、ミリ波帯無線システムを用いたローカル5Gシステムの構築検証、現地での電波の実測やハンドオーバーのパラメーター策定を行った。
アルプスアルパインは、実験に適したローカル5G端末の供給、必要な機能の追加実装、車載製品の設計・製造経験に基づいた車上計測や車載時のアドバイス、レースカーの高速移動時の端末情報の解析を行った。STech Iは、Celona製品の供給および製品技術サポート、ローカル5Gシステムのハンドオーバー解析および各種パラメーター調整サポートを行った。
実証の結果を踏まえ、ローカル5Gシステムを利用した高精細・低遅延なオンボード映像の配信や、現地での安定した決済通信環境の提供など、よりよい顧客体験の提供に向け、実証を進める。また、ミリ波帯無線システムを活用したローカル5Gシステムにおいても、実用化に向けた実証を続ける。
さらに、高速で移動する車やドローンなどからのリアルタイム映像データを利用した、監視・警備・点検など、さまざまなユースケースでの活用にも適用可能かを検討するとしている。