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SAP、生成AI「Joule」の強化や「SAP Build」の新機能など、TechEdでの発表を解説

 SAPジャパン株式会社は10日、同社のテクノロジーイベント「SAP TechEd」にて発表された内容について説明会を開催した。説明会の冒頭で、SAP Asia Pacific Japan プレジデントのポール・マリオット(Paul Marriott)氏は、「日本企業はテクノロジーの採用率がほかの市場と比べて遅れているが、AIは日本企業にチャンスをもたらすものだ。AIを採用することで生産性が向上し、再び成長軌道に乗ることができ、日本ならではのメリットを十分生かせるようになるだろう」と述べた。

SAP Asia Pacific Japan プレジデント ポール・マリオット氏

 続いて、SAP Business Technology Platform担当 エグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高製品責任者のマイケル・アメリング(Michael Ameling)氏が、同社の生成AIアシスタント「Joule」を強化することや、「SAP Knowledge Graph」という新たなデータ関連ソリューションが登場すること、そして開発者向けツール「SAP Build」に新機能が追加されることなどを紹介した。

SAP Business Technology Platform担当 エグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高製品責任者 マイケル・アメリング氏

 アメリング氏が最初に説明したのは、生成AIアシスタントのJouleについてだ。2023年9月末の発表以来、SAPではさまざまな製品にJouleを統合しており、「使用頻度の高いビジネスタスクの80%をJouleでカバーできている」(アメリング氏)という。

 そのJouleに、コラボレーションAIエージェントが導入される。AIエージェントのコラボレーション機能により、生産性とイノベーションが推進されるという。

 またアメリング氏は、Jouleの新しいユースケースとして、クレーム処理と財務会計の2つを紹介した。クレーム管理のユースケースでは、不正確な請求書や拒否された支払いなどをAIエージェントがシナリオ分析し、問題解決を支援する。財務会計のユースケースでは、AIエージェントが請求書の支払いや処理、元帳の更新などを自動化し、財務プロセスを合理化するという。

Jouleを強化

 次にアメリング氏は、データ活用をさらに推進するため、「SAP AI Coreにナレッジグラフ機能を導入する」と述べた。それが、SAP Datasphereと、Jouleを通じて2025年第1四半期に利用可能になる新ソリューションのSAP Knowledge Graphだ。

 同ソリューションは、SAP S/4HANAのデータにセマンティックレイヤーを追加することで、ABAPテーブルやSAP Fioriアプリケーションなどにビジネスコンテキストを与え、データの価値を最大化する。また、発注書や請求書といったビジネスデータのつながりを整理して利用できるようにし、手作業によるデータモデリングの複雑性を軽減する。

 SAP Knowledge Graphは、AIをSAP固有のビジネスセマンティクスに根付かせることで、不正確または無関係な結果のリスクを軽減、組織がインテリジェントなアプリケーションを容易に開発し、生成AIをより効果的に活用できるようにするという。

データの活用

 続いてアメリング氏は、開発者を支援する機能についても紹介した。まず、2025年第1四半期には、Joule Studioで顧客やパートナーが独自のJoule機能を構築できるようになると述べた。

 また、SAP Build Codeにて、コードの解説やドキュメント検索機能を提供、JavaやJavaScript開発者の作業を効率化するほか、SAP Build Process Automationでは、AIを活用してワークフローを自動化する。

 SAP Buildは開発や拡張の機能を統合し、ABAP Cloudにも対応。これにより、開発者がSAP Buildから直接ABAP Cloudプロジェクトを作成し管理できる。さらに、SAP Buildに拡張ウィザード機能を追加することで、SAP S/4HANA Cloud Public Editionから直接SAP Buildにアクセスできるようになる。

開発者向けの強化

 アメリング氏は、SAP Integration Suiteについても触れ、2025年上半期よりAIが生成した提案によってインテグレーションスクリプトが最適化されるとした。また、Integration Suiteに、Anaplan、Coupa、HubSpot、NetSuite ERP、Snowflake用のアダプターを追加するという。

 さらに、2025年第2四半期には、SAP Analytics Cloud Compassにて、モンテカルロシミュレーションによるリスクシナリオのモデリングを可能にするとしている。