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新元号・消費税10%への対応も抜かりなく、定番会計ソフト「弥生」、デスクトップアプリの2019年版を発売
2018年10月12日 00:00
弥生株式会社は11日、会計・青色申告ソフトシリーズの新バージョン「弥生 19 シリーズ」8種11製品を発表した。いずれも10月19日発売予定。価格は保守サポートの有無によっても異なるが、最もリーズナブルな「セルフプラン」の場合、「弥生会計 19 スタンダード」が2万7200円、「弥生の青色申告 19」が8000円(いずれも税別)。対応OSはWindows 10/8.1/7。
Windows向けのデスクトップ版「弥生」が刷新
会計ソフトとしての弥生のラインアップは2シリーズに大別されるが、今回発表されたのは、Windows対応デスクトップアプリ版の最新バージョン。ブラウザ上から利用するクラウドアプリ版「弥生オンライン」(Windows/Mac両対応)は別途リリースされている。
デスクトップ版弥生は、約1年に一度のペースで大幅な機能刷新、法律や税制の改正への対応を行うのが通例。弥生 19 シリーズでは、平成30年分の所得税確定申告に対応する。
一方、ユーザーの業務効率改善を支援すべく、自動仕訳機能の強化などを図った。
11日に開催された製品発表会には、代表取締役社長の岡本浩一郎氏が出席し、自らプレゼンを行った。「弥生は、お客さまの業務を支えるのがなによりの目的。法令改正されても支障なく業務できるようにすること。これがまず一番。ただ、もちろんそれだけに限らない。人口減の中で、弥生を使っていかに業務を効率化していただけるかも重要だ」(岡本氏)。
2019年5月には新元号、帳票への影響大
弥生 19 シリーズにおいて、法制面における改修で最も大きなトピックが「新元号(改元)」と「軽減税率を含む消費税法改正」の2つだ。
来年2019年5月1日には、新天皇が即位する。これに伴って新たな元号が制定されるわけだが、どのような名称となるのが、公表時期はいつなのかなど、即位の直前・直後になってみないと実際には分からない点も多い。
一方で、新元号への変更は企業や行政機関の情報システムに大きな影響を与えるものと予想される。システム改修がスムーズに実行されなければ、各種業務が停滞する恐れもある。
政府発表によれば、即位1カ月前となる4月1日に新元号が発表される予定という。弥生でもこれを前提に、対応の具体案を作成し、ソフトウェアのオンラインアップデートをもって“新元号対応版”の弥生 19 シリーズ正式リリースとする計画だ。
とはいえ、新元号への対応は広範に及ぶ。伝票入力時に新元号を選択できるようにすることは比較的簡単な部類で、60種類・100カ所以上に上ると予想される出力帳票の変更に多大な時間がかかるとの見通しを、岡本氏は示した。
例えば生年月日の表記。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」では、「明・大・昭・平」の記載があり、いずれかを丸で囲う。対して「被保険者賞与支払届」では、誕生日の表記にあたっての符号を、昭和なら「5」、平成なら「7」として扱う。さらに「給与支払報告書」では「明・大・昭・平」の欄が2段になっていて、どれか1つに*印を付ける方式。このように、表記方法は帳票によって全く異なる。
また、新元号は漢字2字と想定されるが、完全な確証はない。また、明治はM、大正はT、昭和をS、平成をHとする略号が広く使われているが、新元号がもしM・T・S・Hのいずれかで始まる文字列になると、さらに大規模なシステム改修にもつながりかねない。
「現在の想定でいくと、新元号発表から改元まで約1カ月しかない。システム改修は段階的なものにならざるをえないかもしれない。このため弥生 19ではなく、さらに将来出るであろう弥生 20において新元号への対応が完了となるケースもあり得る」(岡本氏)。
消費税が3種類あるって?!実は違う「2019年9月までの8%」と「軽減税率の8%」
そして2019年10月1日には、消費税率が現在の8%から10%へとアップする。あわせて、食料品や新聞などの消費税率を8%とする軽減税率制度もスタートする。
消費税10%化はこれまで2度延期されているだけに、その実施可否について、やはり確証はない。さらに輪をかけて複雑なのが、消費税率が実は3種類あるという事実だ。1つは2019年10月以降の標準税率。これは当然10%である。
そして同時に始まる軽減税率は8%。ただ、消費税は、正確には「地方消費税」という内訳がある。6.24%が国へ、1.76%が地方自治体へと収められる仕組みだ。
これらに対して、会計処理の都合上、2019年9月末日までの取引には、経過措置として8%の消費税率が適用される。ただしこちらは国に6.3%、地方自治体へ1.7%が渡る。つまり同じ8%の税率であっても、国と地方への配分比率が異なるため、会計上は別物として扱わなければならない。より正確には、長期リース物件などでかつての消費税5%が適用され、2019年にも残っていれば、それを当然区別せねばならないため、実に4種類の消費税率があるとも言える。
また、軽減税率が適用される物品かどうか、現場でどう判断すべきかも課題だ。店で弁当を買えば軽減税率8%だが、これを店内のイートインスペースで食べた場合は外食と判断され、本来の10%を適用すべきとされる。
こういった微妙な判断を、近年普及が進むAI自動仕訳で処理しきれるのかどうか? 岡本氏は「会計ソフトだけで済む話ではない。お客さまへの情報発信も含め、対応していかなければ」と、気を引き締めていた。食料品店でない、一般の事務所などであっても、接客のために飲料・茶菓子類を買えば、それは当然8%の税率なので、経費伝票の書き方も変わる。つまり、どんな事業所であっても軽減税率は関係してくる問題だからだ。
“業務3.0”を引き続き推進、2020年以降の大規模法令改正も見据えて
弥生では、会計事務効率化の行き着く先として、“業務3.0”の実現を標榜している。ネットバンキングの情報、CSVデータ、レシート画像などを自動で取り込み、AIによって仕訳・起票する「スマート取引取込(YAYOI SMART CONNECT)」機能は近年強化を続けており、各社のタブレットPOSレジとの連携も進めている。
ネットバンキング連携については、これまでスクレイピングという手法で実現する例が多かったが、今後は銀行が正規に公開しているAPIを利用し、セキュリティと利便性の両立も図っていきたいという。
そして2020年以降も、税制改正や政府事務のさらなる電子化など、企業環境はめまぐるしく変わっていきそうだ。明確になっている部分だけを見ても、まずは2023年10月、いわゆる「インボイス」方式が消費税に関連して導入される。企業がより正確に仕入税額控除を受けるために導入されるものだが、制度の細部については今後さらに検討が進められる。
「平成30年度税制改正」では、個人の課税についても大きく変わる方針が示された。基礎控除額を38万円から48万円に引き上げる一方、給与所得控除は10万円減額される。こうして働き方の多様化に対応しつつ、子育て世帯・介護世帯の負担を和らげるために「所得金額調整控除」も新設される。
弥生では、ソフトウェアを利用する企業がより安心して事業を継続できるよう、有償の「あんしん保守サポート」制度も用意している。法制対応の確実な実施はもちろん、仕訳に関する相談なども受け付ける。こういった施策を積み重ね、ユーザー企業と共に着実な成長を目指していく。