米Googleが当局の検索情報開示要求を拒否、その真意は?
2004年夏の上場以来、その一挙一動に注目が集まる米Google。常にメディアをにぎわしている同社の今度の相手は米司法省だ。同省がオンラインポルノ規制の調査のため検索データの提出を求めたのに対し、Googleが応じなかったというものだ。Googleを“プライバシーを守る英雄”と見ることもできるが、異論も出ている。
司法省は1月18日、カリフォルニア州北部地区米連邦地裁に書類を提出し、この中で、Googleに対して検索エンジンに関連するデータの提出を求めた。米司法省は現在、「Child Online Protection Act」(COPA、児童オンライン保護法)の合憲性について調査を進めており、今回、参考資料とするためGoogleに協力を求めた。同省が要求したのは、1)過去1週間分の検索クエリのサンプル100万語、2)ランダムに抽出したWebサイトのURL100万件、と伝えられている。
司法省は、米Yahoo!、米Microsoft、米America Online(AOL)にも同様の要請をしており、3社はこれに応じてデータを提出したもようだ。Yahoo!は、プライバシー情報は一切開示していないと説明している。
Googleが要求を拒否したのは、1)訴訟の当事者ではなく情報を提出する必要はないと判断したこと、2)ユーザーのプライバシーを保護すること、などが主な理由という。同社の行動に対し、プライバシー保護や同社の社訓である“Don't be evil”(悪いことをしない)を守った点などに一般ユーザーの支持が集まっている。
だが、本当の理由はそれほど単純ではないのでは? という見方も浮上している。
Googleの事業にとって、オンラインポルノの規制はマイナスに働くだろう―と見るのは米Forbes誌だ。Googleがデータを公開することで、いかにポルノ関連の検索が多いかなど、オンラインにおけるポルノの実態が明らかになった場合、どうなるだろう。政府が規制に本腰を入れると、広告から収益を得ているGoogleには不利になるだろう、と同誌は分析している。
また、1月19日にGoogleの対応を賞賛する声明を発表した電子フロンティア財団(EFF)は、あわせてこの中で、Googleがユーザー情報を持つことへの懸念も表明している。
EFFは「Googleはかなりの量のユーザーの検索クエリログを蓄積しており、クッキー、IPアドレスなどにより識別が可能」としたうえ、同社に対し、ユーザー情報の収集・蓄積をやめ、収集した情報を削除して追跡可能な情報を最小限に抑えるよう求めている。プライバシー保護のためにとったGoogleの行動がきっかけとなり、同社の個人情報収集活動にもスポットが当たった形だ。
実際、これまでにも、電子メールの「Gmail」、オンラインの個人データベースの「Google Base」、書籍検索の「Google Print」などでの同社の情報収集に関して、プライバシー侵害を危惧する声があがっている。
Googleが次々に繰り出す新サービスには、個人情報を使うことで成立するものが多い。同社はいまや世界中のユーザーの膨大な個人情報を保有している。それを開示するには、使い方が何であれ、慎重な対応が求められることは間違いない。Googleと司法省の議論は、プライバシー管理に対する新しい方法やアプローチ、場合によっては規制の必要性を考えさせるものだ。
裁判所はGoogleの拒否の理由の聴取を2月22日に行うことを決めた。Googleと司法省の闘いは、次の段階に進もうとしている。