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Microsoftは昔と違う? Googleとの特許訴訟終結に見る変化

新しいMicrosoftに高評価

 数年前は連日のようにメディアをにぎわしたスマートフォン関連の訴訟だが、今は落ち着いてきている。多くが合意や和解に至り、一連のスマホ特許訴訟の中で最も注目されたAppleとSamsung間の訴訟でさえ2014年8月、米国外での取り下げが発表されている。そしてMicrosoftとGoogleだ。

 業界はもちろん、このニュースを歓迎した。Bloombergは「ハイテク大手による訴訟が減っていることは業界にとっては良いことだ。先の訴訟は悪い前例を作ってしまったが、良い方向に改善している」というアナリストの意見を紹介している。Fortuneも両社にとって良いことだとした上、「特許訴訟は恐ろしいほど巨額であり、幹部と開発者にとっては大きな懸念だ」と理由を説明している。

 この決定で特に株を上げたのはMicrosoftのCEO、Satya Nadella氏だろう。Nadella氏はCEOに就任して2年目を迎えたが、iPad向けMicrosoft Officeの発表を機に、OfficeのAndroid対応、Nokia買収の減損処理とハードウェア戦略の見直し、HoloLensなどの新しいサービス、Windows 10のローンチなどを行ってきた。

 特に、競合のAppleとGoogle向けに生産性スイートなどのアプリを提供することで、対立よりも協調の方向を打ち出している。Nadella氏は9月のSalesforce.comイベントで自らiPhoneでデモを行った。また、Google創業者のLarry Page氏が8月に持ち株会社Alphabet立ち上げを発表した時に、GoogleのCEOとしてSundar Pichai氏任命を発表した際には、ツイートでPichai氏に祝福メッセージを送っている。

 こうした姿勢は、特許訴訟を仕掛けてきた前任のSteve Ballmer氏とは対照的だ。Ballmer氏はMotorolaを提訴する前に「Androidは特許フリーだ。Androidは無料ではない。きちんと特許ライセンスに合意する必要がある」とWall Street Journalに述べていた。Ballmer氏時代、MicrosoftはHTC、LGなどAndroidをスマートフォンや家電などに利用する製造するメーカーと相次いで特許クロスライセンスを締結。Androidメーカー各社から得るライセンス料は、Windows Phone事業を上回るといわれてきた。

 FBR Capital Marketsのアナリスト、Daniel Ives氏は「Nadella氏は、ほかの技術企業から嫌われるのではなく、愛される企業へと会社のイメージを変えてきた。今回の合意は、GoogleとMicrosoftが今後提携に向かう入り口になる」と評価するコメントをBloombergに語っている。

(岡田陽子=Infostand)