特別企画
最新版以外のアプリも使いたい! マネージドサーバーで企業の“ワガママ”に応える
(2014/10/15 06:00)
日常で使い慣れているアプリケーションがバージョンアップした。しかし、インターフェイスが変わったり、よく使っている機能が変更されてしまったり、といった理由で旧バージョンを使い続けたい、といったケースは、企業ではよくあることだ。
一方、利用していたサーバーの保守やリース期間が切れ、アプリケーションの環境を移行しないといけなくなる場合もある。また、最近ではアプリケーションを外出先などのモバイル環境から利用したい、というニーズも増えており、そのために、モバイルから利用でき、管理も手軽なクラウド版への移行を検討すること多くなった。
しかし、そうしたクラウド版では、最新版か、せいぜい1つ前のバージョンまでにしか対応していないことが多く、社内で利用しているバージョンのまま使いたいので、移行を断念せざるを得ない、といったケースもよく聞く。
では、こうした場合にはどういった対策が考えられるのだろうか。企業にとって身近なアプリケーションである「グループウェア」を例に考えてみよう。
グループウェアを社外に出そうとしても、最新版しか使えない?
中小企業向けのグループウェアの中でも、「サイボウズ Office」はシェアの高い製品だ。共有できるスケジューラーやそれに連動した会議室管理などの機能は、規模の小さな企業でもよく使われている。
サイボウズ Officeはパッケージソフトとして数多く販売されていたため、企業が自ら、あるいはSIerに依頼して、サーバーへインストールして使ってきた。日常的に使うソフトということもあって、同じサーバーで長く使い続ける企業も多いだろう。
同じサーバーを使い続けていると、サーバー機やOSのリプレースが必要な時期がやがて訪れる。そうしたシステム変更にあたり、特に中小企業であればオンプレミス運用から外に出そうという判断になるケースも多いだろう。このような用途に向けて、サイボウズ OfficeのASPサービスが数社から提供されているほか、最近ではサイボウズ社自身がサイボウズ Officeのクラウド版をサービスとして提供している。
ただし、サイボウズが提供しているクラウド版では、最新の「サイボウズ Office 10」がベースになっている。もちろん最新版では、機能やユーザーインターフェイス(UI)が洗練されており、特にメール機能や未読一覧機能などは、以前のバージョンに比べて大きく進化しているのだが、習い覚えたUIがいきなり切り替わったり、機能の使い勝手が変わったりすると、全社員が必ずしもITになじんでいないような企業では、かえって能率が下がる、といったケースもでてくるだろう。
サーバーやOSを入れ替えてオンプレミス運用を継続すれば、バージョンを選べるが、そうすると今度はサーバーを自社で管理しつづけなくてはならず、IT担当者の負担は変わらなくなるし、モバイル対応についてもオプションの導入などを検討し直さなくてはいけない。
お任せで管理できる手軽さ
そこで、オンプレミスのようにサイボウズ Officeのバージョンを選んで使え、ASPサービスのように管理はお任せで使いたい――。こうした課題を解決するために検討したいのが、管理を事業者に任せつつサーバーを運用できる、ホスティングサービスやマネージドサーバーといったサービスだ。
特にマネージドサーバーは、手軽に利用を始められるし、金額的にもさほど高くないため、こういった場合に向いているように思える。また、実際にいくつかのサービスを見てみると、サイボウズ Officeでの利用実績があるようだ。
例えば、NTTスマートコネクトの「スマートコネクト マネージドサーバ」(以下、マネージドサーバ)も、サイボウズ Officeに対応したマネージドサーバーの1つ。サイボウズ Officeの旧バージョンを使うこともできる。
「サイボウズOfficeのインストールは簡単なので、IaaS環境などに自社でインストールして使う、ということもできます。しかし、サーバーの管理の手間を考えると、事業者側に運用を任せていただくメリットがあるでしょう」と、NTTスマートコネクトの平田賀一氏は説明する。
なお「マネージドサーバ」には、既存のサイボウズ Officeのライセンスを持ち込めるので、新たにライセンスを購入する必要はなく、自社で利用しているライセンスを継続して使えばいい。もちろん、「マネージドサーバ」が持つメールサーバーやWebサーバーの機能も使える。
自社のスケジュールにあわせて最新版への移行を計画可能
「マネージドサーバ」では、前述のように、サイボウズ Officeの旧バージョンに対応している。NTTスマートコネクトの北川彩音氏によると、利用は最新版のサイボウズ Office 10が多いというが、「古いバージョンの指定もいただいていますし、問い合わせもあります。同じバージョンを使い続けられることも含めて、選択肢を提供していることを評価していただいているようです」という。
また旧バージョンだけでなく、最新バージョンを含めて対応しているので、いつまでも古いまま使い続けるのではなく、計画的に新しいバージョンへアップグレードしていく際にも、「マネージドサーバ」を使い続けることが可能だ。
クラウド版のサイボウズ Officeでは、提供側のスケジュールにあわせて最新版へ切り替えないといけないが、「マネージドサーバ」をサーバーとして利用すれば、ユーザー企業側のスケジュールにあわせて移行計画を作ることができる。これが、大きなメリットといえるだろう。
なお「マネージドサーバ」の場合は、別途料金はかかるものの、インストール作業やバージョンアップ作業を事業者側に任せるオプションサービスも用意されているので、そうした作業も任せることもできる。結果としてユーザー企業は、自らインストールやサーバーのシステム管理をする必要なしに、サイボウズ Officeを利用できるわけだ。
なお実際の利用者は、「一般企業から、地方公共団体、あるいは地方の医師会のような団体など、さまざまです」と平田氏。提供形態からくる特性として、人数が多くなるとASPサービスより価格が有利となるというが、「実際はいろいろな規模で使われていて、価格だけではないようです」という。
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システムの「お任せ」と「自由度」は、しばしばトレードオフになりがちだ。しかし、このようなマネージドサーバーを利用した場合、選択肢をユーザー側が持った中で、管理をお任せにできる。
サイボウズ Officeのようなグループウェアに限らず、アプリケーションがどんどん新しくなることにはメリットもあるが、提供側の都合で最新版になってしまうのでは、全社的な対応が難しいことも現実にはあるはず。そうした場合に、マネージドサーバーのようなサービスは有効な武器になるだろう。