特別企画

学校導入? 家庭負担?――学校タブレット導入ケース別のメリット・デメリット

「町ぐるみ」~高森町の場合

熊本県教育庁 教育政策課 指導主事の山本朋弘氏

 次に紹介されたのは、熊本県阿蘇郡高森町が2011年から取り組む町ぐるみでの活動だ。

 県が研究推進校を市町村単位で公募。現状名乗りを上げた10市町村・21校に対し、整備計画の立案、学校間で格差を生まないようにするための協議会の設立、研修支援などの面から支援している。

 高森町もそんな市町村の1つで、「高森に誇りを持ち、夢を抱き、元気の出る教育」を理念に新教育プランを策定し、高森東小学校、高森中央小学校、高森東中学校、高森中学校の4校共同で授業改善に取り組んでいる。

 その内容は「必ずしもICTを使うことが目的ではなく、授業改善という大きな視点から、その一環としてICTを活用する」(熊本県教育庁 教育政策課 指導主事の山本朋弘氏)というもので、「確かな学力と豊かな心の醸成」「地域とともにある学校づくりの推進」「教育環境の整備」「教育研究会の活性化」を掲げた新教育プランの下、小中学校の連携(小中一貫教育カリキュラムなど)も目指しているという。

 取り組みがスタートして丸3年が経過し、一人一台のタブレット環境がほぼ整ったという高森町。特筆すべきは、その取り組みが地域・学校・行政一体となって進められていることで、テレビ会議で行政が研修を行ったり、先生がポスター発表したり、それらの活動を地域に公開するなど、まさに「町ぐるみ」の活動となっている。

 授業でもタブレットを各教科で活用し、「だいぶ使えるようになってきた」(山本氏)という。

県で研究推進校を市町村単位で公募
高森町の教育プラン
地域・学校・行政一体となって進められている

 では、「町ぐるみ」のメリット・デメリットは何だろうか。

 山本氏がメリットとして挙げたのは、地域の教育プランに反映できること。「町ぐるみで取り組むことで、教育長の思いやICTの効果を先生方、特に校長先生方に理解してもらえやすい。小中学校の連携をいかに進めていくかなども、行政や家庭の理解を巻き込んで進めていけるところが大きい」と話す。また、研修が進めやすく、全体に浸透しやすいことや、導入から運用までの流れがスムーズに進む点を挙げた。

 一方でデメリットとして挙げたのは、教育委員会におけるシステム導入・運用の負担だ。「高森町では市町村教育委員会内にICT補佐官を任命している」という。また、各学校でのリーダー育成もポイント。「どうしても先生方の異動などがあるため、新しく市町村外から入ってきた先生をどう巻き込んでいくかなどが課題」とした。

 なお、「各学校が足並みをそろえるのは難しいのでは」とモデレーターの中川氏が問うと、「ポイントは校長先生同士の合意形成。現場の先生同士では授業を一緒にやっているので意識あわせができていることが多いが、校長先生はいろいろな考えを持っている。その共通理解を形成するために、議会を立ち上げるなどの仕組みが必要。高森町でもそうやって進めている」とした。

メリットデメリット
・地域の教育プランに反映しやすい
・研修が進めやすく、全体に浸透しやすい
・導入~運用の流れがスムーズに進む
・教委委員会内での導入・運用負担
・各学校のリーダー育成が必要となる

(川島 弘之)