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ビジネスとワークスタイルの変革を加速させる仮想デスクトップ「DaaS」 クラウド型であることのメリットは?

 あるOS上で別のOSを動作させる仮想マシンを一般ユーザーが手軽に使えるようになったのは、20年近く前のことだ。当時はコンシューマーゲーム機のゲームソフトをPC上で動作させる「エミュレーター」として注目が集まり、1999年は現在に続く仮想デスクトップソフトウェアのVMwareが生まれたタイミングでもあった。

 少なくともその時点では、仮想マシンやエミュレーターは、プライベートなPC環境でプライベートな用途、例えば本来は特定のOSでしか使えないアプリケーションを異なる環境で動かしたいといったニーズや、メインとなるホストOSの環境を“汚さずに”マルチOS環境を用意して動作テストに活用したい、というような使われ方が多かったはずだ。

 しかしその後、ホストOSとその上で動作する仮想OSとが完全に分離されているという特徴から、セキュリティー上のメリットがあることにも価値が見い出された。コンピューティングパワーとネットワーク速度の向上に加え、サーバー側で仮想OSの動作に特化した「ハイパーバイザー」の採用も進んだことにより、サーバー上で複数の仮想OSを同時に動作させるVDI(Virtual Desktop Infrastructure)と呼ばれる仕組みが広がっていった。

 一方で、大企業を中心に以前からニーズの高かった「シンクライアント」の考え方は、今に至るまで根強く残っている。内部統制の強化が叫ばれ、個人情報をはじめとする情報の漏えい、次々に出現するマルウェアとコンピューターウイルス、脆弱性を突いたネットワーク攻撃など、セキュリティー上の課題やリスクの懸念は増えるばかり。それらをまとめて解決するには、全従業員が画一化されたデスクトップ環境を利用し、一括で管理・コントロールできるシンクライアントのようなシステムが最も都合が良いからだ。

ワークスタイルの変革に寄与するDaaS

 昨今注目が集まりつつある「DaaS(Desktop as a Service:仮想デスクトップサービス)」という概念は、そのような流れから自然に行き着いたクラウドサービスの1つと言えるだろう。DaaSはクラウドサーバー上で多数の仮想デスクトップを動作させることにより、ユーザーである従業員が必要最小限の性能をもつPCからインターネット経由でアクセスし、Windowsなどの一般的なデスクトップOSをまるでローカルPCで動かしているかのように扱えるものだ。

DaaSでは、クラウド上で仮想デスクトップ環境を動作させ、ユーザーはそれにアクセスして業務を行う

 企業のLAN内でシステムを完結させるのではなく、インターネット越しにあるサーバー上の仮想デスクトップを利用することになる。業務で作成したデータはすべてクラウドサーバー側に保管され、ローカルのクライアントPCには一切残らないのが大きなポイントだ。

 したがって、もしそのPCを紛失してしまったり、盗まれてしまっても、正しい手順でDaaSに接続されない限りは、情報の漏えいは起こりえない。

 また、データを保持するデスクトップOSがクラウド上にあることを考えると、社内にとどまらず社外からも柔軟に利用できるだろう。端末も、そのDaaSに接続できるネットワーク環境さえあれば、ユーザーが使用するPCなどの端末は(必要なスペックを満たしていれば)なんでも良いことになる。デスクトップPC、ノートブック、2-in-1型のタブレットなど、BYOD(Bring Your Own Device:私的端末の業務利用)の広がりもあって、多様化が進む多くの端末から利用可能だ。

 昨今のワークスタイル変革に向けた取り組みでは、こうした端末の多様化だけでなく、オフィス内のフリーアドレス化や、SOHO的なオフィス外環境の利用、自宅での業務などが許容される動きがあり、その場合の情報漏えいの危険性についても指摘される。ところがDaaSはデータがクラウド上にあり、物理メディアでいちいちデータを持ち出す必要がなく、情報漏えいの問題とは全くの無縁でいられるのだ。

Mac OS上で仮想デスクトップに接続した例
Androidタブレットでも仮想デスクトップを利用可能だ

運用はおまかせ、サービスとして利用することのメリット

 導入と運用面においてもDaaSのメリットは大きい。社内ネットワークで運用する従来型のVDIでは、ユーザー数や利用負荷に応じて大規模化していくサーバーの導入とメンテナンスを自社で行わなければならず、初期コストも、日々の運用コストも膨大なものとなる。1000ユーザー規模であれば、導入に数億円オーダーの投資が必要とも言われているほどだ。

 しかし、クラウドサービスであるDaaSの場合はサーバー関連の設備を自前で用意する必要はなく、「最初はテスト的に数十名分だけ」といったスモールスタートも可能。サーバーリソースをフレキシブルに変更できるため、その後は事業規模や本格展開のタイミングに合わせて徐々に利用ユーザー数を増やしていくことができ、コストコントロールしやすい。サーバーメンテナンスも当然ながら自社で行わずに済み、せいぜい社内ユーザーをサポートする運用管理担当者を置くだけでOKだ。

DaaSの導入により運用コストを圧縮できる

 自社で導入・運用する際には、システム更新の時期にも大きな問題が立ちはだかる。テクノロジーは常に進化しており、数年後にはDaaSにおいて最適なサーバーシステムやソリューションが全く新しいものに取って代わられているかもしれない。古いシステムを使い続けていれば、セキュリティーやコストバランスの面でだんだん時代にそぐわないものになっていくことは間違いないだろう。セキュリティーや業務効率を高めるために導入したはずの仮想デスクトップが、数年後にはそれ自体リスクをはらむ“高価な時限爆弾”と化す可能性もある。

 これもDaaSであれば一切心配することのない問題だ。サーバーシステムやソリューションは、DaaSを提供している事業者によって時代に合ったものが選ばれ、適宜更改される。また、大規模システムの運用ノウハウも豊富に有していることから、安定的で持続的な運用が期待できる。DaaSを利用する企業にとっては、不要なIT資産を抱えることがないうえに、導入・運用コストをほとんど省くことができるため、その分を本業の投資に回すのも良いアイデアだ。

DaaSの信頼性、パフォーマンスは大きな課題?

 とはいえ、DaaSにはデメリットも少なくない、と考える人もいるだろう。確かに、インターネット経由でクラウドサービスにアクセスすることによる途中経路での盗聴の可能性は否定できないし、インターネットの混雑によるレスポンスの低下も気になるところだ。サーバーやネットワーク上で障害が発生した際に利用できなくなる、という不安もあるだろう。最新デスクトップPCのような高性能が必要とされる業務には向いていないとも考えられるし、やはりある程度まとまったユーザー数で利用しないとコストメリットが得られないのでは、なんて疑問も出てきそうだ。

 そのような信頼性、パフォーマンス、コスト面の課題を、昨今のDaaSではどのように解決しているのだろうか。次回は実際に大規模なDaaSの提供をスタートさせたNTTネオメイトに話を伺い、同社が手がけるDaaSのメリットとデメリット、さらにはその魅力に迫りたい。

(日沼 諭史)