特別企画

監視カメラシステムの効率的な導入は統合ネットワークが鍵

アライドテレシスに聞く、ネットワークカメラソリューションのポイント

 監視カメラシステムの普及が加速している。以前は主流であったアナログカメラから2010年代になってネットワーク(IP)カメラへの移行が進み、2014年には出荷台数でネットカメラがアナログカメラを逆転している。ネットカメラの出荷台数は毎年15%以上という高い成長を続けており、2020年の東京オリンピックに向けてさらなる成長率の上昇が予測されているという。

 2015年に監視カメラで注目が集まる技術は「4K」対応だ。昨年、先行して製品を発売したアクシスコミュニケーションズなどに加え、今年はソニーやパナソニックなどのベンダーが、続々4K対応製品を投入する。フルHDの4倍の解像度を実現できる4K対応は、利用法によっては、従来複数台で監視していたものを1台でカバーできるなど、トータルでのコスト削減につながるとともに、新たな利用の可能性も広げるだろう。

 一方でカメラの高解像度化は、データの巨大化を生み、増大したトラフィックを確実に送信し管理するためシステムへの要求は高くなる。アライドテレシスは得意のネットワーク技術をベースに、この課題に応えられる監視カメラソリューションを提供しているという。

 今回は、アライドテレシス 営業統轄本部 サーベイランスシステム事業推進室 室長の村田俊哉氏に話を聞いた。

アライドテレシス 営業統轄本部 サーベイランスシステム事業推進室 室長の村田俊哉氏

多様化する監視カメラ活用と、変化する日本人の意識

 現在、監視カメラ導入の目的は多様化している。代表的な利用シーンとしてまず思い浮かぶのは地域防犯だろう。商店街や通学路などに設置されたカメラを目にする機会は多い。監視カメラがあるだけでも犯罪抑止力になるため、シャッター化している商店街でも安全性をアピールするために監視カメラの導入を図る例もある。多くの自治体が、犯罪防止のため監視カメラ等への補助金制度を設けていることも普及に拍車をかけている。アライドテレシスでも、150台のカメラを含む千葉県市川市の街頭防犯カメラシステム(2008年)や品川インターシティのビル監視システム(2012年)など、この分野での実績は多い。

 防災系のニーズも重要だ。火山や集中豪雨での土砂災害、洪水被害の恐れのあるダムや河川沿い、最近発生が増加している竜巻などを対象に、官庁や自治体などがリアルタイムの情報公開を前提に監視カメラシステムの導入を進めている。

 また、フードディフェンスでの利用も進んでいる。食の安全は消費者にとっても生産者にとっても重要な問題であり、工場の生産工程の記録はもちろん、ハンバーガーチェーンの衛生管理問題など、流通過程でも監視カメラがあって当たりまえという認識が広がりつつある。

 さらに、マーケティングに活用する企業も多い。小売店舗の導線設計で戦略商品の置き場所の判断などに記録映像が活用されている。従来利用されていたPOSの購買情報では商品が売れなかった際の理由の分析などは困難だったが、パイロット店舗に多数のカメラを配置して、消費者が商品を手に取ったり戻したりまでを記録することで、行動分析と顧客分析を結びつけることが可能になってきた。

 このようにさまざまなシーンでの監視カメラ利用が進むなか、近年は監視カメラに対する日本人の意識もだいぶ変わってきた。以前は「監視」という言葉に多くの人が拒否反応を示していたが、直接のプライバシー干渉さえなければその存在を許容する人が増えている。テレビでは毎日のように事件報道で監視カメラの記録映像が映し出され、交差点で立ち止まった時にも見上げればそこに監視カメラがある。YouTubeには個人が発信するさまざまな映像があふれている。車載カメラとドライブレコーダーも自動車購入時のオプションとして人気を呼んでいる。映像記録はもはや特別なものではない。

 自治体や企業が、目的意識を持って継続的に撮影する映像は、市民や消費者の安全を守るための利用をうたっている。正しい目的で使用されれば、防犯監視や食の安全を守るために効果を発揮できる。街角や建築物内にあふれる監視カメラは、社会インフラとして認識され始めている。

ネットワークの信頼性と安全性が、監視カメラシステムの2つの課題

 「IP監視カメラの市場が急拡大した時期は、HD普及と重なります。地上波TVがHDになって監視カメラもHD品質を求められるようになりました。当初は720pでしたが、やがてフルHD(1080p)に移行しつつあります」と、村田氏は説明する。監視カメラの解像度が上がることで鮮明な映像を見られるようになり、人物や車のナンバーの特定も可能になるなど、利用範囲を広げてきた。

 アナログ時代は同軸ケーブルで防災センターに引き込み、スイッチャーで分配していたが、カメラがIP化したことで、100台のカメラをスイッチで集線することにより、光ファイバー1本で引き込めるようになり、監視室のスペースや保守の省力化にもメリットが生まれた。

 4K対応が進めば映像品質はさらに上がるだろうが、カメラの高解像度化はデータの巨大化につながるため、膨大なデータの送受信や管理を実現するためにシステムやネットワークへの要求は高度になる。トラフィックの増加は、映像に乱れを発生させたりブロックノイズを生みやすい。

 「一般的なネットワーク機器は、ストリームデータを流すことは得意ではない」と村田氏は指摘する。送信に失敗したデータを再送信しても、映像の場合すでに次の表示に切り替わっている。これには帯域確保の優先制御で品質を確保する必要がある。アナログカメラとは異なり、無停止稼働のためには、ネットワークは1カ所の切断や1台の機器の故障で配下が全部落ちるスター型ではなくリング型の方が適している。また、スイッチは電源を二重化する。電源とファンの二重化で重篤な障害の大半は回避されるなど、ネットワークを運用するためのノウハウが重要になってくる。

 IPカメラシステムは多様な接続が可能となり、外部からの攻撃に対する脆弱性が問題になっている。

 例えばこんな事例だ。カメラサーバー/NVRには録画された情報が蓄えられている。カメラサーバー/NVRのメーカでは情報セキュリティとして対策が提供されていることは確かだが、万が一マルウェア感染を起こし、悪意のあるインターネット上のサイトに録画データをアップロードされては取り返しがつかない。

 こうした課題に対し、アライドテレシスではネットワークで対応する。

 Secure Enterprise SDN Solutionは、インターネットにアクセスするトラフィックをモニタリングし、ユーザ端末が悪意のあるサイトへアクセスをした場合、ユーザ端末に一番近いエッジと呼ばれるネットワーク機器で隔離/遮断する機能を提供可能なソリューションだ。

「ふるまい検知」によるセキュリティの確保

 Secure Enterprise SDN Solutionには多彩な機能があるが、IPカメラネットワークに適用する場合はこうなる。「例えばカメラからレコーダーへトラフィックがあるのは正常ですが、意図しないネットワークを経由してサーバーに来るのは変です。また、レコーダーから外部に出ていく場合も、正常な宛先への通信と、不適正な場合が考えられます。正常なふるまいをネットワーク側に定義しておいて、それ以外のふるまいに対してはトラフィックをとめるなどの措置を行います」(村田氏)。

高信頼な監視カメラソリューション

 アライドテレシスが提供するEtherGRID-VMS(Video Management System)ソリューションは、スイッチ、サーバー、VMS、UPSなどをパッケージ化した映像監視(Surveillance)ソリューションだ。ネットワーク仮想化技術をベースに、監視カメラの安定活用を実現する。情報系のSIerには映像系システムを扱うのが苦手な場合も少なくない。そこで、アライドテレシスでは検証済みの監視カメラシステムパッケージとして提供している。

EtherGRID-VMSソリューションの概要

 監視カメラソリューションの核となるテクノロジーAMF(Allied Telesis Management Framework)では、各スイッチを1台の仮想的シャーシスイッチとして管理することによって、従来は各拠点に分散するスイッチなどネット機器の設定は、1台ずつPCをつないで行っていたが、コアスイッチでまとめて設定できるようになる。

 また、物理障害時は対応している代替スイッチを接続するだけで、自動的に設定情報がダウンロードされるため、現場での設定作業は必要ない。さらに、AMFはコアからエッジまでを途中に未対応機器があっても、トンネリングで柔軟にデータをやりとりできる。ポリシー変更などの設定も一元管理できるため、集中管理が可能で設定ミスも削減可能だ。なお、こうした点が評価され、AMFは2014年、「iCMG Architecture AWARD 2014」でITインフラ分野の最優秀賞を受賞している。

AMFはネットワークの自動構築、保守運用の負荷軽減をサポートする
AMFはiCMGのArchitecture AWARD 2014でITインフラ分野の最優秀賞を受賞した

 EtherGRID-VMSソリューションはインテリジェントな画像解析ソフトを組み込めるため、持ち去り検知や顔認識、性別など属性推定、人数カウントなどが自動で可能だ。立ち入り禁止区域に人が立ち入った場合に警報を発するなどのシステムもトータルに構成できる。

 また、映像データの保存用にはコンテナ型データセンターも提供している。4Kの場合フルHDの4倍、アナログカメラからだと実に28倍のデータ量になる上、昔は1~2週間だったデータ保存期間が延長の方向にあるため、大容量の保存が必要になる。例えばフードディフェンスのケースでは作ってから食べるまで冷凍食品で1年、缶詰なら10年の期間がある。マーケティングでの利用などは過去との比較はどこまでやればいいか、明確な判断基準がないため、データを捨てることができない。カメラ数も増加しており、昔はひとつの建物で数十台だったのが、数百台も珍しくなくなっている。

 このようにデータは急激に増加しているが、サーバーラックをオフィスに置くのは床荷重や機器の発熱と冷却用電力の問題などで困難だ。コンテナ型DCは法律上建物ではないためそのまま駐車場などにも置けるし、冷凍コンテナと同じ仕組みなので、断熱性にも優れ電気代を数分の一に節約できる。病院でも電子カルテやエックス線写真など大量のデータがある場合、建物内にストレージを置けないため、コンテナをトレーラーで運んできて駐車場に置きそのまま使用している例がある。

 アライドテレシスではITサービスとして、Net.Pro(IT導入構築支援)、Net.Monitor(IT運用支援)、Net.Assist(IT運用管理)、Net.Cover(製品保守)などを提供しており、物理的なシステムの導入だけでなくネットワークのライフサイクルすべてをサポートする。これにより、コンサルティングや調査から始まり、運用や障害駆けつけまでをカバーする効果的なソリューションを実践できるため、継続的な利用でも安心できる。

 EtherGRID-VMSソリューションは、150社、3000種以上のネットカメラに対応し、監視カメラの数が数十台からの小規模から利用可能だが、カメラの台数が多いほどコストメリットが明確になる。タイ・バンコク都庁の3万台のIPビデオカメラからなる交通監視システム(後、防犯にも応用)は、今後市民の声に対応し、5万台規模のさらなる巨大システムへ増強の方向だ。

統合ネットワークがこれからの重要ポイント

 ネットカメラも従来のクローズドから、ほかのネットワークとの統合の方向に進んでいる。「本社と支社間で映像だけのネットワークを引くのはコストの無駄です。基幹系/情報系/音声系のネットワークと統合すれば、ランニングコストの削減が可能です」(村田氏)。

 自治体などでの導入でも、本庁舎と支庁舎は以前からネットワークで結ばれている場合がほとんどだが、支庁舎近くにカメラを設置して得た監視映像は本庁舎でも見たいといったニーズが発生する。これだけのために新しいネットワークを敷設するのは不経済であり、映像トラフィックの品質を担保しながらの統合ネットワークがアドバンテージを持っている。

 カメラメーカー主導の場合ほかのネットワークとの同居を嫌う傾向があるが、アライドテレシスは統合ネットワークを得意とする。ワールドカップブラジル大会が行われた競技場のひとつでも、監視カメラ映像、デジタルサイネージ映像、スタジアム内放送、観客のためのWi-Fiサービスなどのネットワーク統合をなしとげた実績がある。また、アライドテレシスは医療系のネットワークでも多くの導入事例があり、カルテやエックス線など従来個別ネットワークで存在したものを効率的に統合管理実現している。

 今後、監視カメラの台数がさらに増大し、監視映像の管理が重要性を増すなか、アライドテレシスの統合ネットワーク技術を中心としたソリューションへのニーズはさらに高まっていくだろう。

狐塚 淳