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Windows 10 Technical Preview for Phonesファーストインプレッション

 2月12日に、Windows 10 for PhonesのTechnical Preview(以下、プレビュー版)がWindows Insider Programで公開された。1月末に米国で開催されたWindows 10に関するプレスイベントでも2月中に公開するとアナウンスされており、その約束が果たされたといえる。

 今回は、このプレビュー版のレビューをお届けする。

Windows 10ファミリーのモバイル版

 Windows 10 for Phonesは、以前Windows Phoneとして提供されていたモバイル向けのOSを、Windows 10に融合させたものだ。Windows 8/8.1とWindows Phone 8/8.1では、OSのカーネル部は共通したモジュールが採用されていたが、1つのアプリをWindows 8/8.1とWindows Phone 8/8.1で使用することはできなかった。

 ところが、2014年春に開催されたMicrosoftの開発者向けコンファレンス「Build 2014」において、Universal Appというアプリケーション・フレームワークが提唱され、1つのアプリがWindowsとWindows Phoneの両方で動作するようになった。

 Windows 10 for Phonesは、Windows OSとWindows Phoneを融合させたモバイルOSといわれている。このため、以前のWindows Phoneという名称を改め、Windows 10ファミリーOSとしての位置付けに変わった。

 Windows 10 for Phonesは、Windows 10とほぼ同じ機能をスマートフォンで実現したものといえる。ただし現状では、MicrosoftのWindows Phone(旧NokiaのLumiaシリーズ)を対象としている。このためプロセッサとしては、Qualcomのプロセッサ(ARMベース)のOSだ。

 Windows 10 for Phonesには、ARMプロセッサのみではなく、x86/x64プロセッサ向けのエディションも用意されているようだが、現状では対応するスマートフォンなどがないため、2015年中はx86/x64ベースのWindows 10 for Phonesは販売されないと思われる。

 なお、今回のプレビュー版は、既存のWindows Phone(Lumia)向けとなっているため、Windows RTを採用したSurface 2やLumia 2520向けは提供されていない。Microsoftとしては、Windows RTに関しては、Windows 10 for Phones and Tabletsへのアップデートは考えておらず、ハードウェア自体も販売を停止して、製品を終息させるようだ。こういったことからもWindows RTは、完全に失敗したOSといえるだろう。

Windows Insider ProgramのWebサイト。Windows 10 for Phonesがインストールできる機種などの情報が掲載されている

荒削りすぎるプレビュー版

 Windows 10 for Phonesのプレビュー版だが、現在、日本国内では試せるスマートフォンが存在しない。これは、日本国内でWindows Phone 8/8.1のスマートフォンが販売されていないことに由来する(Windows Phone 7からWindows 10 for Phonesへのアップデートはできない)。

 Windows Phoneに関しては、Windows Phone 7の時にauが東芝のIS12Tを販売したが、ビジネス的には成功とはほど遠いモノだった。この後、どのキャリアもWindows Phoneを手がけることはなかった。

 そこで今回は、海外から購入したLumia 636をWiFiモードでテストしてみた。

 ちなみに2月16日現在、Windows 10 for Phonesのプレビュー版をテストできる機種は、Lumia 630/635/636/638、Lumia 730、Lumia 830などに限定されている。Lumia 830/iconやLumia 1520のようなハイエンド機種に対しては、現状ではプレビュー版は用意されていない(ソフトウェア的な問題による。将来的に提供予定)。また、Lumia以外のWindows Phoneへの提供も行われていない(Lumia以外のWindows Phoneがほとんど販売されていないということから)。

 Windows 10 for Phonesのテクニカル プレビュー版へのアップデートにあたっては、Windows Insider Programに登録した上で、指定されたURLをWindows Phone 8.1のブラウザでクリックして、Windows Insiderというアプリをインストールして行う。

 インストール後、Windows Phoneの設定→電話の更新を行えば、Windows 10 for Phonesがインストールされる(機種によってはWindows Phone 8.1へのアップデートなどをインストールする必要がある)。インストール時間に関しては、ダウンロード時間を合わせて、30分以上かかった。

Windows Phone 8.1でWindows Insider ProgramのWebサイトを表示。結構きつい文言が書かれている。Microsoftとしても、エンジニアや開発者に絞った提供だということを強調したいのだろう
Windows Insiderアプリをインストール。
インストールをメニューからWindows Insiderアプリを起動して、「Get Preview Builds」をタップ
Windows Insiderプログラムでは、SlowとFastの2種類が選択できる。これは、Windows 10と同じくプレビュー版のアップデートの頻度。今回はFastを選択
Windows Insiderアプリを終了後、設定→電話の更新から実際のアップデートを行う
Windows 10 for Phonesをインストール。現状のテクニカルプレビューは、一般ユーザーが試すには、荒削りすぎる

 実際にインストールしてみたWindows 10 for Phonesだが、一応日本語の表示が行えた。ただ、一部中国語のフォントを利用しているようで、漢字に違和感を抱いた。また、言語設定の部分に関しても、すべてが作り込まれているわけではない。完成までの道のりは遠そうだ。

 現状のWindows 10 for Phonesの画面UIとしては、Windows Phone 8.1とあまり変わらない。使ってみた印象としても、Windows Phone 8.1との差はほとんどない。

Windows Phone 8.1のメニュー画面。アプリがタイルとして表示されている
Windows 10 for Phonesのメニュー画面。Windows Phone 8.1との違いは全くない。逆にタイルの拡大縮小がうまく動かなくなっていた。このあたりは、今後のアップデートで変わっていくのだろう

 一部、画面の上部からフリックして表示する(指を下にスライドさせる)通知エリアが変わっていた。WiFi、Bluetooth、カメラ、ディスプレイの明るさの設定などのショートカットボタンだけでなく、各種の情報の通知エリアが表示される。ここでは、メールのヘッドラインが表示されている。

 この通知エリアは、Windows 10のAction Centerと同じ機能を持っている。

 また、設定の表示なども、Windows 10のイメージ合わせたイメージに変わっている。

 ブラウザに関しては、IEだけしか用意されていない。将来的にはWindows 10で採用されるSpartanも搭載されるだろう。

 アプリストアに関しても、Windows 10のWindows Storeではなく、既存のWindows Phone用のストアが表示されている。ゲームに関しても、Xbox LiveではなくWindows Phone向けのGame Hubのままだ。

画面上部を指でスワイプすれば、Action Centerが表示される。ここでは、各種設定や情報が通知される
Action Centerでは、メールのタイトルなどが表示される
Windows 10 for Phonesの設定画面。イメージは、Windows 10に合わせてある。
ストアもWindows Phone 8.1のまま。
添付されているOfficeもWindows PhoneのOffice Mobileのまま
Cortanaは、言語設定を日本にしていると利用できなかった。
ゲームもWindows PhoneのGame Hubのまま

 今回のプレビュー版では、スマートフォン向けにWindows 10 for Phonesを提供したというだけで、まだまだ完成度は低いし、必要とされるモジュールもそろっていない。実際Microsoft側でも、Windows Insider Programのページで「スマートフォン用Windows 10 Technical Previewの提供を開始しましたが、完成にはほど遠い状態です。実際、今お使いのスマートフォン(Windows Phone 8.1 が搭載されているもの)とあまり変わりはなく、少々荒削りで、発展の余地がかなりあります」と説明している。

 このため、このプレビュー版を通常使用しているスマートフォンにインストールすることは推奨していない(説明文の各所に、開発者やエンジニア向けのリリースということが入っている)。

 3月に入れば、スペインのバルセロナで、世界最大の携帯電話/キャリアの展示会Mobile World Congress(MWC)が開催されるため、MWC後のアップデートでは大幅に変更されるだろう。

Windows 10 for Phonesは、日本では販売されるのか?

 多くのユーザーにとって気になるのは、日本国内ではWindows 10 for Phonesのスマートフォンは販売されるのかということだろう。

 現在の状況では、非常に難しいだろう。携帯電話キャリアにおいては、現状でWindows Phoneを発売するメリットはほとんどない。

 NTTドコモ、au、ソフトバンクの3社ともに、最も売れているのは、AppleのiPhoneということを考えれば、Windows 10 for Phonesがリリースされたとしてもすぐに販売されるとは思えない。

 ただ、企業での利用ということを考えると、少し話は違う。Universal AppによりWindows 10とWindows 10 for Phonesで同じアプリが利用できるようになれば、企業において採用の可能性も出てくる。そうなれば、Windows 10の普及とともに、Windows 10 for Phonesも企業で採用されるだろう。

 企業において、自社の専用アプリを開発する場合、Windows、iOS、Androidなど3つのアプリ開発にかかるコストと手間を考えれば、Windows 10において、パソコンとスマートフォンのアプリ1つを開発すればいいのは大きなメリットだ。

 ただ、こういったこともWindows 10 for Phonesが動作するスマートフォンが販売されなければ、話にならない。

 総務省が昨年末「SIMロック解除に関するガイドライン」を改正したことで、今年の5月以降に販売されるすべての携帯電話でSIMロック解除が義務化される。また、MVNOにより低価格のデータ通信、通話プランが各社から提供され始めている。このような状況に合わせて、いくつかの企業からSIMフリーのスマートフォンなども販売されてきている。

 できれば、日本マイクロソフトもこの流れに乗るようにして、Windows 10 for Phonesのスマートフォンを自ら提供してくれないものか。そうすれば、企業においてもWindows 10 for Phonesを採用しやすくなる。

 日本マイクロソフトでも、Surface ProなどのタブレットPCを販売していることを考えれば、製品を提供するための流通やインフラ、サポートなどもそろっているといえる。後は、どのような決断を下すかだろう。実際に、日本マイクロソフト自身がWindows 10 for Phonesのスマートフォンを販売するなら2015年中には製品が出るが、通信キャリア(MVNOを除く)と歩調を合わせるということを選択すれば、Windows 10 for Phonesのスマートフォンが日本国内で提供される可能性はほとんどなくなるだろう。

 本格的に企業にWindows 10やWindows 10 for Phonesが導入されるのは、2016年や2017年になるだろう。この時期になれば、携帯電話キャリアとしても、考えを変えてWindows 10 for Phonesのスマートフォンやファブレットをラインアップにそろえるかもしれない。

 このように、日本での展開に関しては、OSの出来栄えだけでなく、市場の変化、キャリアとの関係などいろいろな要素が絡むが、Microsoftは、モバイルに関してはAppleやGoogleの後塵(こうじん)を拝しているのだから、できればアグレッシブな展開を日本マイクロソフトに期待したい。

(山本 雅史)