特別企画

NTT、富士通、日本アルカテルによるNFVベースの仮想NWサービス「VNPaaS」がETSIで認定

沖縄でデモ公開し実証

 NTTおよび富士通、日本アルカテル・ルーセントの3社は、通信ネットワークの基幹機能部であるサーバーの新しいアーキテクチャ確立に向けた共同プロジェクト推進に、2014年2月から取り組んでいる。特に、同プロジェクトにおけるキーテクノロジがネットワークの仮想化を実現する技術として注目されるNFV(Network Functions Virtualization)だ。

 3社はこのほど、NFVベースのVNPaaS(仮想ネットワーク基盤サービス)の具体的な実現および構成を、欧州における通信標準化団体であるETSI(European Telecommunications Standards Institute)のNFV ISGに提案し、ETSI公認のコンセプト実証PoCとしての認定を受けた。そして5月13日~15日の3日間、沖縄にて本ユースケース・デモを行い実証した。

NTT、富士通、日本アルカテル・ルーセント3社のVNPaaS共同研究とETSIへの提案

日本アルカテル・ルーセント株式会社 キャリア営業本部 テクニカルセールス アカウントセールスエンジニアの浅井宣雅氏

 VNPaaSは、仮想ネットワーク環境においてサービス提供会社に、アプリケーションの
開発をはじめ搭載、運用が可能なフレームワークを提供するサービスだ。日本アルカテル・ルーセント株式会社 キャリア営業本部 テクニカルセールス アカウントセールスエンジニアの浅井宣雅氏は「いま通信ネットワーク機能のソフトウェア化が進む中、さまざまな通信サービスを提供するサービスアプリケーションの複雑度も増大しています。これに伴い、サービスアプリケーションの開発量削減と迅速なサービス提供が必要とされます。VNPaaSはこうしたニーズにこたえるもので、3社は、最適な信頼性はじめ拡張性、運用性を提供可能な仮想ネットワーク基盤の実現に最大の目標をおき、共同研究に取り組んでいます」と共同研究の目的を説明する。

 具体的な共同研究の内容は、通信事業者の保守・運用要件を満たしながら、複数システム間におけるハードウェアリソースの共有や、ダイナミックなリソースアサインを可能とするサーバー仮想化技術・オーケストレーションの研究が1つ。また、システムを構成する汎用ハードウェア数の増加に応じて、リニアにシステム性能を向上させるとともに、複数ハードウェアへの適切な負荷分散や、装置故障時にバックアップデータをもつサーバーへの適切な振り分け先制御を行う高信頼スケールアウト型通信制御サーバー構成技術の研究、あるいは上記スケールアウト型通信制御サーバーの保守運用技術の提供など、となっている。

VNPaaSとは(Copyright 2014 NTT, Alcatel-Lucent, FUJITSU, All rightsreserved)

 これらをふまえて、3社の役割はそれぞれ、NTTがキャリアネットワーク全体アーキテクチャ、およびキャリア要件の提供、富士通が高信頼と拡張性を実現する分散処理ミドルウェア(NTT R&Dの分散処理技術を組み込んで開発)と保守・運用機能の提供、そして日本アルカテル・ルーセントが通信事業者向けの保守要件を考慮したサーバー仮想化・オーケストレーション技術をもつ製品「CloudBand」の提供となっている。

 そして3社は、こうしたおのおのの得意技術をいかしたVNPaaSを、ETSIのNFV ISGへ提案し、ETSI公認のコンセプト実証(PoC)として認定された。

ETSIのNFV ISGへ提案したVNPaaS(Copyrigh 2014 NTT, Alcatel-Lucent, FUJITSU, All rights reserved)

VNPaaSのユースケース・デモ実証

 5月13日~15日の3日間、3社は沖縄でVNPaaSのデモを行った。このデモは、複数地域にまたがって分散配置された通信ハードウェアを用い、通信システムに要求される信頼性や拡張性を担保するプラットフォーム上で、一つの仮想ネットワーク機能を実現させるコンセプトを実証したというものだ。

 デモの具体的な目的について浅井氏は「自動的なサービスの構築をはじめ、自律的な保守運用、そして通信サービスに対する需要に応じた自動的なVNFC(Virtual Network Function Component)の増減設を行い、適切なリソースでサービスを提供する最終コンセプトの前段である、VNFC故障時の自律的回復と需要変動による自動的な増減設を実証しました」と説明する。

 例えば、災害発生を想定してLocation#1と#2にサーバーを配置する。各ロケーションにある複数のVNFCを組み合わせて一つのVNFが構築されている。このとき、ユーザー要求の増加に伴い自動的にVNFCが増え、逆の場合は減るように設定されている。

 デモでは、VNFCとしてSIP(Session Initiation Protocol)サーバーを採用し、自動的なVNFC増減設や自律的な回復の際も、分散処理ミドルウェアにて負荷分散、データの冗長化を行うことで、既存のサービスに影響を与えることなくサービスを継続する様子を可視化した。

沖縄(万国津梁館貴賓室)で行われたVNPaaSのデモ(provided by FUJITSU)

 今後は、このたびのPoCにおける実績をベースに、引き続き3社の共同研究を通じて、信頼性や拡張性、運用性を必要とするさまざまな情報通信分野を支えるプラットフォーム技術について、その実用化に向けた取り組みを進める。あわせて、国内外のテレコムキャリアやベンダと協力しながら、グローバルな普及や世界標準化をめざして研究開発を進めていくとしている。

 また、アルカテル・ルーセント社の仮想化ストラテジについて浅井氏は、「情報通信分野における特徴として情報処理分野と異なり、アプリケーションは最適なロケーションに配置する必要があります。分散化されたデータセンターに最適に配置されたアプリケーションを効率的に運用するにはSDN連携が不可欠です。アルカテル・ルーセントでは、オーケストレータを担うCloudBandとネットワーク接続性を提供するNuageVSPが連携することでその機能を実現します。また、今後はCloudBand Ecosystemプログラムを通じて、各社との相互運用試験や評価を行い、マルチベンダ環境でのキャリアアプリケーションサービスを実現します」と語っていた。

沖縄(万国津梁館貴賓室)で行われたVNPaaSのデモ風景

真実井 宣崇