特別企画

Webスタンダードを積極的にサポートするMicrosoft Edge

Windows 10 Anniversary Updateでの強化点を見る

 Windows 10 Anniversary Updateに搭載されるWebブラウザ「Microsoft Edge」の新バージョンでは、より広範囲にWebスタンダードをサポートしている。今回は、このMicrosoftのEdgeに対する最新の取り組みを解説する。

 なお、Anniversary Updateに搭載されるEdgeでは、HTMLレンダリングエンジンがEdgeHTML 14(Windows 10 November UpdateではEdgeHTML 13)、Edge本体としては38番台(同じく25番台)がバージョン番号となっている。

Anniversary UpdateのEdgeは、EdgeHTMLが14番台、Edgeとしては38番台となっている

拡張機能をサポート

 Anniversary UpdateのEdgeにおけるもっとも大きな進化は、拡張機能のサポートだ。Edgeでは、セキュリティホールになりやすいActive Xなどのプラグインが廃止された。このため多くのアプリケーションで提供されている、ブラウザ用のプラグインなどもサポートされていない。

 しかし、EdgeのライバルとなるGoogle Chrome、Mozilla Firefoxなどでは拡張機能をサポートしており、MicrosoftでもEdgeで早急に拡張機能をサポートすると発表していたが、やっとAnniversary UpdateのEdgeでサポートされることになったわけだ。

Anniversary UpdateのEdgeでは拡張機能がサポートされる。プレビュー版では、すでにいくつかの拡張機能が用意されている

 Edgeの拡張機能は、W3C(World Wide Web Consortium:HTML規格やWeb関連の規格を策定している)で規格化されたモノをそのまま使っている。

 こうした拡張機能は、ChromeやFirefoxでも一足先にサポートされているため、ChromeやFirefoxの拡張機能は、タグなどをEdge用に若干変更する必要はあるが、ほとんどはそのまま利用できるという(ChromeやFirefoxの拡張機能をダウンロードして、Edgeで使えると言うことではない)。

 5月には、Mozilla、Microsoft、Operaの3社が、拡張機能のコアAPI、マニフェスト、パッケージなどを標準化すると発表している。ここにGoogleの名前が入っていないが、コアAPIはChromeをベースにしている。

 MicrosoftのEdgeチームは、GoogleのChromeチームとひんぱんにミーティングを開催しており、よりよいWebスタンダードの策定と互換性の向上を目指している。もちろん、W3CやEcma International(JavaScriptの標準化を行っている)などで積極的に規格を提案したり、策定作業を行ったりしている。

 Microsoftがどんどん独自規格をIEに取り込み、Webスタンダードとは大きくかけ離れたブラウザをユーザーに提供していた時代とは大きく異なり、スタンダードありきに変わってきているのだ。

Edgeの拡張機能は、JavaScript、HTML、CSS、JSONなどのWebスタンダードのパーツで作られている
W3Cのスタンダード規格がそのまま使われている

 なお、W3Cの拡張機能規格では、拡張機能をJavaScriptとHTML5でプログラミングしている。これにより、ブラウザ拡張機能の開発のハードルを低くし、多くの開発者に安全な拡張機能を開発してもらおうとしている。また一度開発した拡張機能は、Edgeだけでなく、Chrome、Firefox、Operaなどで利用できるようになる。

拡張機能は、JavaScriptやHTMLなどをZIPでパッケージ化している

 Edgeの拡張機能は、Storeからの配布になる。ユーザーは、Storeから拡張機能をダウンロードすれば、自動的にEdgeにインストールされる。このため、ユーザーが個々にインストール作業などを行う必要はない。

 拡張機能の開発者は、Microsoftが運営しているStoreに拡張機能を登録する必要があるので、登録手続きなどに少し時間がかかる(開発時は、ローカルPCでテストできる)。このため、数多くの拡張機能が提供されるのは、半年後、もしくは1年後になるだろう。

 一方でStoreを利用することにより、開発者は拡張機能を有償で販売することもできる。Storeに登録される時点でMicrosoftの審査をパスしているため、マルウェアやアドウェアなどの混入は少なくなるだろうから、こういった部分でも安心できるだろう。またMicrosoftからすれば、閑散としているStoreに人を集める手段になるともいえる。

現状のプレビュー版では、拡張機能を紹介するWebページが表示される
Webページでは、リリースされている拡張機能に関する紹介が行われている
紹介ページから拡張機能を選択するとStoreが立ち上がりインストールできる。最終版では、拡張機能の紹介ページではなく、Edgeから直接拡張機能があるStoreにジャンプするようだ
Officeの拡張機能では、OneDriveに入っている文書をOfficeオンラインを使って表示したり、簡単に編集することができる。

 企業でAnniversary Updateを使用している場合、会社が認めていない拡張機能を社員が勝手にインストールする、といったことも起こるだろう。そこでAnniversary Updateのグループポリシーでは、Edgeの拡張機能の使用許可など、Edgeのさまざまな機能が管理できるようになった。Active Directory(AD)のグループポリシー管理で、Edgeの拡張機能のインストールを企業全体で管理することができる。

 PC版のAnniversary Updateと同じコードを使っているWindows 10 MobileのEdgeでは、拡張機能がサポートされていなかった。このあたりは、注意が必要だろう。プログラム自体はJavaScriptを使用しているため、サポートされてもおかしくない。このあたりは、規格化との兼ね合いなのかもしれない。

同じビルドのWindows 10 MobileのEdgeでは、拡張機能がサポートされていない