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セールスフォース・ドットコム、自社製品を体系的に紹介

国内での活用事例も

 株式会社セールスフォース・ドットコム(セールスフォース)は18日、自社製品群を体系的に紹介する説明会を実施した。「個々の製品の紹介は実施しているが、どういった体型で、どんなビジネスを行っているのかを知りたいという声があったことから、歴史をふまえて製品群を紹介する」(セールスフォース マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアマネージャーの田崎純一郎氏)。

セールスフォース マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアマネージャーの田崎純一郎氏

 17年前誕生したsalesforce.comは、社名になっているようにセールスを支援するSFA、CRMのクラウドベンダーとしてスタート。現在では営業支援、顧客向けサービス、マーケティングという3つのアプリケーションを軸に、この3つを支援するためのコミュニティ、アナリティクス、カスタマイズ可能なプラットフォームという3つの要素をあわせた、全部で6つの製品体系によってビジネスを展開している。

 田崎氏は、「今後はこれらの製品をどう組み合わせ、ソリューションとして提供するのか。見込み顧客から、売り上げを確保し、さらにアフターサービスまでを一連のソリューションとして提供していくことが鍵となっている」と説明した。

 また、これらを提供するベースとなるインフラは、マルチテナントのクラウドであり、これを実現する仕組みとしてメタデータトリブンであると説明された。

 salesforce.comは、日本では2000年に法人を設立し、その後2007年に日本郵政公社(当時)が5000ライセンスを導入。2011年にはトヨタメディアサービスに出資して戦略的提携を実施するなど、国内でのクラウドビジネスを展開してきた。

 「salesforce.comって何の会社なの?と尋ねられた場合には、一番わかりやすい答えである、『クラウドCRMで世界最大のベンダーです』とお答えしている。オールドメディアとは違う形で、お客さまとつながっていくことを目指し、最近ではIoTにも積極的に取り組んでいる」(田崎氏)。

「クラウドCRMで世界最大のベンダーです」
日本市場におけるニュース

 創業時点からの特色が、マルチテナント型の独自アーキテクチャを採用していることだ。「シングルテナントは1社ごとにサーバーが必要であるのに対し、当社は最初からインターネットスケールのマルチテナントを採用している。こう説明すると、『データが混ざってしまわないのか?』と懸念されるお客さまもいらっしゃるが、メールを思い起こせば、社員が50万人いる会社でもサーバーが人数分用意されているわけではない。混在した環境でも問題は起きない」(田崎氏)。

 マルチテナントで複数のユーザーを持つことができるのは、顧客ごとの設定/カスタマイズはメタデータで管理されているため。マルチテナントデータベースは、データ、データの定義情報、アプリケーションコードの3つがそろうことで情報を生成。サービスにログインできるユーザーだけが、情報にアクセスすることができる。

 「共通機能はシングルコードで、これを応用することでバージョンアップも容易に行うことができるというメリットも生まれた」(田崎氏)。

 メタデータによって実現する“マルチテナント”インフラの上に、当初は営業支援(SFA)、顧客管理(CRM)を提供してきたが、提供するアプリケーション、サービスは年々拡大している。

シングルテナント vs マルチテナント
マルチテナントを可能にするメタデータドリブン

 「軸足はあくまでもCRMに置いている。IT化によって効率化、生産管理を追求してきた時代には、ERPが中心だったが、現在のように新しい需要を生み出すためにITを利用する時代においては中心にあるのはCRM、つまり顧客が中心となるからだ。CRMに軸足を置くことでイノベーションが実現する」(田崎氏)。

必ずCRMがシステムの中心に

 具体的な製品群としては、

(1)営業支援:「sales cloud」、タレント管理「work.com」、「steelbrick CPQ」、D&Bデータクレンジング「data.com」など
(2)サービス(顧客管理):「service cloud」、「SOS for Apps」、「Field Service」など、
(3)マーケティング:「marketing cloud」、B2Bマーケティング「pardot」など
(4)コミュニティ:「community cloud」、企業内SNS「chatter」など
(5)アナリティクス:「analytics cloud」など
(6)プラットフォーム(カスタマイズ):「app cloud」、業務アプリ向けPaaS「force.com」、ハイスケールアプリ向けPaaS「heroku enterprise」、クラウドアプリのマーケットプレイス「appexchange」、「IoT cloud」など

が挙げられる。

セールスフォース製品の全体像
セールスフォースの各製品

 セールスフォースの製品群を利用し、業務改革に成功した事例として、神奈川県の旅館「元湯陣屋」が紹介された。陣屋は神奈川県の鶴巻温泉にある温泉旅館だが、現在の社長である宮崎富夫氏が実父の急逝をうけ2009年に陣屋に入社した時には、赤字となっていた。この立て直しのために導入したのがセールスフォースのソリューション。従来は紙に手書きしていた予約台帳をデジタル化することで、各スタッフの情報共有のための転記、調理スタッフなどの情報共有のためのホワイトボードの記載などをやめて、全スタッフがモバイル端末によって情報共有を行う体制へと切り替えた。

 その結果、100人を越えていた従業員数の削減などを実現し、人件費、原価率をダウン。サービスの質向上、営業体制の見直しなどによって売り上げアップを実現した。「宮崎社長によれば、改革前は7000円台でも泊まる人がいなかった旅館単価が、現在では3万円台となった」という。

陣屋の課題
陣屋コネクトの導入効果

 さらに自社で作った旅館用アプリケーション「陣屋コネクト」を販売する別会社、株式会社陣屋コネクトを設立して160施設に導入するなど、ビジネス拡大にも成功している。

 「自社で開発したアプリケーションについては、当社とパートナー契約を結んでもらうことで、ロイヤリティはいただくものの、自由に外販してもらうことができる」(セールスフォース マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアディレクターの御代茂樹氏)。

株式会社陣屋コネクトを設立

 同社以外にもIoTによって、業務用プリンタのメンテナンスサービスのコスト削減と質向上を実現したサトーなど、日本でもさまざまなユーザーが存在している。

 また、一部ユーザーから製品のライセンス体系がわかりにくいという声があがっていることに対応するため、「近日中に、新しい価格体系を発表する予定で、できるだけシンプルに、わかりやすく価格体系を提供することを計画している」(御代氏)としている。

セールスフォース マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアディレクターの御代茂樹氏

三浦 優子