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フォーティネット、2016年は国内向けに独自の事業戦略を展開

“フォーティネット=SMB向けUTM”というイメージから脱却図る

フォーティネットジャパン 社長執行役員の久保田則夫氏

 フォーティネットジャパン株式会社は2月18日、2016年の事業戦略について記者説明会を開催した。2015年第3四半期(7~9月)に国内セキュリティ機器市場でベンダー売上額、出荷台数ともにシェアNo.1を達成したことを受け、2016年は、SMB向けUTM製品にとどまらず、あらゆる規模の企業・組織をサイバー攻撃から防御する包括的なネットワークセキュリティベンダーを目指し、国内独自の事業展開を加速していく考えだ。

 説明会ではまず、フォーティネットジャパン 社長執行役員の久保田則夫氏が2015年の事業概況について説明した。「ワールドワイドの事業は、2009年のIPO以降、高い成長率を続けており、2015年の売上高は前年比31%増、10億ドルを突破した。従業員もこの5年間で急速に増え、4100人を超えるまでの企業となっている。日本市場においては、2015年第3四半期にセキュリティ機器市場でベンダー売上額、出荷台数ともにシェアNo.1を達成した。大規模な情報漏えい事件の発生やマイナンバー問題などによって、セキュリティ対策の重要性がさらに高まり、多層防御を実現する当社製品のニーズが拡大したと考えている」と、ワールドワイド・国内ともに2015年は好調に推移したという。

ワールドワイドの売上高推移
国内セキュリティ機器市場の売上シェア

 2015年の国内事業のトピックスについては、「大阪オフィスを昨年10月に移転し、20人規模に拡張するとともにショールームを設置。また、昨年11月に名古屋オフィス、今年1月に東京オフィスの拡張を行った。さらに、昨年の大きな取り組みとして、フォーティネットのセキュリティ研究部門であるFortiGuard Labsを日本にも開設し、国内の顧客向けに最適化した情報を日本語で提供開始した」(久保田氏)としている。昨年7月に買収した無線LANベンダーのメルー・ネットワークスにも触れ、「今年1月に日本での事業統合を完了した。今後、メルー・ネットワークスのWi-Fi技術と、当社のセキュアなネットワーク環境を組み合わせたセキュアドWi-Fiソリューションを国内で展開していく」(久保田氏)との考えを述べた。

 こうした状況を踏まえた上で、2016年の事業戦略について久保田氏は、「今年からワールドワイドのリージョンが6つに分かれ、日本もその1つのリージョンとして独立した。これによって、日本法人は、本社の戦略に縛られることなく、国内市場に合ったマーケティング、営業、サポートなどを展開することが可能となった」と、独立したリージョンとして日本独自の戦略を展開していく方針を明らかにした。

 具体的な施策としては、組織体制では、日本法人の社員数を来年1月までに1.5倍に増員する計画。また、国内セキュリティ機器市場におけるリーディングベンダーとしての地位をより強固にするため、「SMB」、「エンタープライズ/パブリック」、「SP/ストラテジックアカウント」の3つのセグメント別に事業部を設置し、それぞれの顧客ニーズに応じたマーケティング戦略を展開していく。

 ソリューション展開では、FortiGuard Labsをベースに、「コアプロテクション」から「アドバンストプロテクション」、「グローバルインテリジェンス&サービス」までの幅広い製品ポートフォリオを活用し、あらゆる企業・組織のニーズをカバーする包括的なセキュリティソリューションを提供していく。また、顧客からのセキュリティサービスのニーズに対応し、FortiSandboxに関わる各種運用を、4月以降にサービスとして提供する計画。さらに、顧客のセキュリティ診断を同社が無償で行うプログラム「CTAP(Cyber Thread Assessment Program)」の提供も予定している。

 パートナー支援では、「フォーティネット・パートナー・プログラム」を拡充し、今までの「ゴールド」、「シルバー」、「ブロンズ」の上位ランクに「プラチナ」を追加するとともに、海外向けに「グローバルパートナー」を設置する。4月から、この新プログラムに移行するという。あわせて、同社のトレーニングプログラムである「NSE(ネットワークセキュリティエキスパート)認定資格プログラム」の日本語版を新たに提供開始し、国内のセールスおよび技術者トレーニングを強化する。技術者向けの初級プログラム「NSE4」において、初年度で全国技術者100人以上の認定を目指す。

「フォーティネット・パートナー・プログラム」の拡充
「NSE認定資格プログラム」の概要
フォーティネットジャパン 副社長兼マーケティング本部長の西澤伸樹氏

 製品/マーケティング戦略については、フォーティネットジャパン 副社長兼マーケティング本部長の西澤伸樹氏が説明。「当社は幅広いセキュリティ製品をラインアップしているが、その中で『エンタープライズ・ファイアウォール』、『コネクテッドUTM』、『標的型攻撃対策』、『セキュア無線LAN』、『データセンター・セキュリティ』、『クラウド・セキュリティ』の6つのソリューションにフォーカスして、製品/マーケティング戦略を展開していく」との考えを示した。

 とくに、「エンタープライズ・ファイアウォール」では、FortiGateのオペレーティングシステムの最新版「FortiOS 5.4」を中核に、より高度なサイバーセキュリティを実現する内部セグメンテーション・ファイアウォール(ISFW)の提案を推進していく。「『FortiOS 5.4』では、内部ネットワークをセグメント化して攻撃を封じ込め、高度な脅威からネットワークを保護する機能を提供する。具体的には、ポリシー編集、リアルタイムレポーティング、ポリシーヒットのカウンタ表示、ドリルダウン&クイック隔離、デバイストポロジーなどの新機能を備えている。これにより、ISFWを実現し、多層防御の強固なセキュリティ戦略を実施することが可能になる」(西澤氏)としている。

 「このほか、『コネクテッドUTM』では、FortiGateの機能とコスト性能比を向上した新製品『Eモデル』をローエンドから順次投入する。『標的型攻撃対策』では、ゲートウェイとサンドボックスとエンドポイントのシステム連携による即時防御を提案する。『セキュア無線LAN』では、インフラ型、統合型、クラウド型の3タイプの製品ポートフォリオを展開し、企業規模や業種を問わず、すべての無線LAN環境を網羅するソリューションを提供していく」(西澤氏)と、今年の製品/マーケティング戦略の重点施策について説明した。

 久保田氏は、「こうした取り組みによって、今年は“フォーティネット=SMB向けUTMベンダー”というイメージからの脱却を図る。そして、あらゆる規模の企業・組織をサイバー攻撃から防御する包括的なネットワークセキュリティベンダーとして認知されるよう力を注いでいく」と、国内での新たな事業展開に意欲を見せた。

唐沢 正和