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富士通研究所、生産ラインの画像検査プログラムを自動生成する技術を開発
AI技術「Zinrai」を活用、人手で開発する場合の5分の1の時間で自動生成
(2015/11/19 15:55)
株式会社富士通研究所は18日、電子機器などの生産ラインにおける部品実装や外観の不良を、カメラ画像から自動判定する画像検査プログラムの自動生成技術を開発したと発表した。
これまで、富士通研究所が開発してきた画像処理プログラムの自動生成技術では、直線や円などの比較的簡単な形状の認識に対応しており、これを部品実装や製品組立て時の位置合わせなどに利用してきた。
この自動生成技術をベースに、事前登録した複雑な形状の部品画像と基板全体の画像との照合方法を学習し、生産ラインの撮影画像に対して適用することで部品の位置ズレを判定する技術と、複数のパターンの部品画像から明るさや線の向きなど画像の特徴を認識して良・不良を判定することで不良品を識別する技術を新たに開発した。
開発した技術は、富士通株式会社のAI技術「Human Centric AI Zinrai(以下、Zinrai)」の機械学習、画像処理、最適化などを用いて、検査工程の画像処理プログラムを自動生成するもの。
実装部品の位置ずれ検査に対応する技術としては、任意図形を認識するプログラムとして、部品画像と基板全体の画像の2つを入力し、それぞれ異なる画像変換をして照合させることで、類似度分布を出力するプログラム構造を開発。この構造を用いて、遺伝的アルゴリズムと呼ばれる機械学習により、照合時のパラメーターを最適化する。これにより、認識したい部品画像と実際の装置が撮影した基板全体の画像に対する部品の正解位置をサンプルデータとして登録するだけで、照明変化の影響に強く、類似形状の部品が混在していても正しく認識するプログラムの自動生成が可能になり、高精度な位置ズレ検査を実現できるという。
良・不良判定検査に対応する技術としては、様々な画像変換によって明るさやコントラスト、エッジの向きなどの特徴量を抽出し、そのデータから良品に適合したモデルを生成。あらかじめ学習させた良品画像と不良品画像に対する判定結果と特徴量の分布による分離度を評価基準にして、遺伝的アルゴリズムによりモデルを最適化することで、高性能な画像の判定機能(分類器)を自動生成する。
実際の生産ラインにおける部品実装検査の画像処理プログラムに対する社内評価では、約2時間の学習で、生産ラインのプログラムに関する専門家が開発したものと同性能のプログラムを自動生成できることが確認できたという。これにより、人手で開発する場合の約5分の1の時間で自動生成でき、生産ラインの早期立ち上げや仕様変更への迅速な対応が可能となり、高精度でばらつきの少ない自動検査が実現できるとともに、安定した製品品質を保てるとしている。
富士通研究所では今後、製品の組み立ておよび検査工程における検査プログラムの高性能化を進め、2015年度中に技術の実用化を目指すとしている。