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SAPジャパン、日立、ESRIジャパン、社会インフラに関するビッグデータ活用システム基盤を開発

 SAPジャパン株式会社、株式会社日立製作所(以下、日立)、ESRIジャパン株式会社は9日、3社の製品を連携させ、社会インフラに関する将来予測を可能にするビッグデータ利活用システム基盤を開発し、実用化に向けた検証を実施したと発表した。

3社製品の連携イメージ

 開発したシステム基盤は、社会インフラに関する膨大な現在と過去のデータをもとに、特定区域の混雑状況の予測などさまざまな将来予測を迅速に行い、地図画面上で瞬時に可視化するもの。

 3社では、IoTなどITの新たな潮流が生まれ、センサーやカメラなどから収集した多様かつ膨大なデータの活用によって新たな価値が生み出されつつあるとして、社会インフラ分野においても、交通渋滞の抑制や広域な物流業務の効率化、インフラ設備の安定稼働など、ビッグデータの利活用により安全・安心・快適な社会を実現する新たなサービスの創出が期待されていると説明。こうした背景のもと、今回のシステム基盤の開発・検証プロジェクトを、SAPジャパンの共同研究施設「SAP Co-Innovation Lab Tokyo」で実施した。

 今回のプロジェクトでは、SAPのインメモリデータベース「SAP HANA」と、日立のデータベースエンジン「Hitachi Advanced Data Binder(以下、HADB)」、企業における地理空間情報を活用した意思決定を支援するESRIジャパンのソフトウェア「ArcGIS」の3製品を連携させ、将来予測を行うとともに、その結果を地図画面上へ瞬時に表示するシステム基盤の開発・検証を行った。

 具体的には、「SAP HANA」を用いて「HADB」に蓄積された膨大なデータを高速に処理するため、両製品の連携を実現するソフトウェアである「連携アダプタ」を開発し、「SAP HANA」のデータ仮想化技術であるSDA(Smart Data Access)機能と組み合わせることで、3製品がスムーズに相互連携するシステム基盤を構築した。

 また、「SAP HANA」に格納した現在の状況に関するデータと「HADB」に蓄積した履歴データを活用した将来予測を行い、現在の状況と将来予測の結果を「ArcGIS」の地図画面上で瞬時に表示できることを検証した。

 検証にあたっては、東京大学空間情報科学技術研究センターが提供する、約130万人分の移動履歴とその交通手段に関するデータ(人流データ)を活用し、タクシーの最適配車を想定したシミュレーションを実施した。東京首都圏のある特定日時における人流データを現在の状況と仮定し、そのデータをもとに「SAP HANA」で「現在の混雑箇所」を把握。現在の混雑箇所から数十分後に移動する可能性が高い複数地点を「HADB」に格納した膨大な履歴データの中から統計的に導き出すことで、将来予測を行い、これらの結果を「ArcGIS」の地図画面上に高速に表示することが可能となった。

 3社では、開発したシステム基盤は、人流予測による快適な都市交通インフラの実現や、最適な集荷・配送ルートの予測による広域物流業務の効率化、インフラ設備の故障予兆把握と保守点検ルートの最適化などに活用できると説明。今後は、同システム基盤の実用化に向けた取り組みを推進していくとしている。

 東京・芝公園のザ・プリンスパークタワー東京で11月12日に開催するイベント「SAP Forum Tokyo 2015」では、今回の検証をベースにしたタクシー配車デモを、日立のブースで紹介する。

三柳 英樹