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大塚商会の2015年度中間決算、前年特需の影響で減収減益に

 株式会社大塚商会は3日、2015年度(2015年12月期)の中間決算を発表した。連結売上高は前年同期比4.4%減の3179億3300万円、営業利益は同4.6%減の231億7300万円、経常利益は同4.4%減の236億9700万円、四半期純利益は同2.4%減の146億4900万円となった。

 単体でも、売上高は前年同期比5.3%減の2923億2600万円、営業利益は同5.4%減の208億1200万円、経常利益は同5.0%減の215億200万円、四半期純利益は同3.9%減の133億700万円となった。

 前年がWindows XPサポート終了、消費税増税によるシステム改変と大きな特需があったことから減収減益となったが、代表取締役社長である大塚裕司氏は、「連結、単体ともに売上高は前年割れとなったが、一昨年(2013年度)と比較すると5.5%増で、前年が特需だったことを考えるとまずまずの数値といえるのではないか。営業利益は目標値は達成することはできたが、もうひとがんばりを望みたかった」と減収減益ながらも、状況は決して悪くないと説明した。

 通期見通しについては前回発表値を変更せず、売上高は前年比2%増の6180億円、営業利益は同1.4%増の376億円、経常利益は同0.4%増の383億円、当期純利益は同0.6%増の236億円のままとする。「7月以降、ダラダラと悪くなっていった昨年とは環境が違うはず。まずは7月~9月の業績をしっかりと固める」との見通しから、増収増益目標達成を目指す。

代表取締役社長の大塚裕司氏
2015年1月~6月 業績の概況
売上高・利益の状況(連結)

 大塚商会の連結セグメント別売上高は、システムインテグレーション(SI)事業は前年同期9.2%減の1907億2000万円、サービス&サポート事業は同3.9%増の1270億3400万円、その他の事業は同6.1%減の1億7800万円。

 昨年の特需で売り上げが伸びたSI事業は減収となったが、「ストックビジネスであるサービス事業の売り上げが着実に伸びている」と、安定した収益確保につながるサービス事業の売り上げ増がプラス要因だと説明した。

 単体の詳細セグメント別売上高では、SI関連商品が前年同期比11.9%減の1464億9500万円、受託ソフト等が同7.1%減の203億5200万円、サプライが同5.4%増の647億7800万円、保守等が同2.6%増の606億9800万円。「SI関連の減に対し、サプライ、保守の伸びのありがたみを感じる」(大塚社長)。

セグメント別売上高(連結)
詳細セグメント別売上高(単体)

 顧客企業の年商別、1口座あたり売上高増減率の月次推移では、売上高100億円以上の大企業の成長が鈍いが、年商10億円から100億円未満の層、10億円未満の層は堅調な推移となっている。

 「前年度の期末決算発表時に、7月以降の推移がリーマンショックの時の動きと似た嫌な動きになっていると申し上げた。年商100億円以上の顧客は回復が遅く、成長が鈍い。年商100億未満、年商10億円未満の層は明るい雰囲気がある。リーマンの際には、数字が下回ったまま回復せず悪化していったが、今期に関しては、下期は上向きに転じるのではないかという明るい兆しを感じている」(大塚社長)。

顧客企業の年商別、1口座あたり売上高増減率の月次推移
顧客企業の年商別売上構成

 その要因となっているのが第2四半期(4月~6月)の業績だ。連結売上高は前年同期比1.9%増の1585億2200万円、営業利益は同14.8%増の139億4800万円、経常利益は同15.1%増の141億9400万円、当期純利益は同19.0%増の89億3300万円となった。

 「年初からの予想通りの結果。営業利益、経常利益ともに2けた増と順調な伸びを見せている」(大塚社長)と、前年が特需だった第1四半期(1月~3月)とは異なる状況となっている。

 詳細セグメント別売上高増減率の四半期推移でも、第1四半期は前年が特需だったためにSI関連商品、受託ソフト等が大きく落ち込んだものの、第2四半期ではその2つのセグメントともに上向きとなっている。

売上高の四半期推移(連結)

 重点戦略事業の状況としては、中間期ではたのめーるは前年同期比6.4%増の693億8300万円、Smileは同13.2%減の59億8800万円、ODS21(大塚ドキュメントソリューションズ)は同3.2%増の261億6700万円、OSM(大塚セキュリティマネージメント)は同11.4%増の301億4900万円。第2四半期についてはたのめーるが前年同期比13.4%増、ODS21が同11.3%増、OSMが同24.4%とさらに高い伸びを見せている。

重点戦略事業の状況
たのめーる年次推移

 ハードウェアは複写機が前年同期比8.3%増の2万2294台で、うちカラー複写機が同12.1%増の2万604台、サーバーが同4.7%増の2万1943台、パソコンが同31.7%減の41万8547台となった。

 パソコンの販売見通しについて大塚社長は、「1月から6月までのタブレットの販売台数は前年同期比2.8倍。パソコンとタブレットトータルでクライアント機の需要ととらえると、第2四半期の対前年増減率は同22.7%減に改善される。Windows 10の登場で、タブレットのビジネス活用が増えていくと見込むことができるが、Windows 10の需要が本格化するのはまだこれから。特需の反動もほぼ6月までで収束し、7月以降はクライアント機全体で伸長に転じるのではないか。速報値ではあるが、7月の数値を見ると半年続いてきた前年割れから回復している」と説明した。

 サーバーの販売台数については、「クラウドへの移行、仮想化の導入といった影響があり、販売台数が見通しにくい。Windows Server 2003の置き換えについては、売上100億円以上の顧客の反応が想定よりも鈍く、伸びていない。当社エンジニアが対応するサーバーを持つ企業は5000社あり、うち36.3%の企業がそのまま継続利用している。実は大塚商会内部にも2003がある。これは外部には一切接続せず、イントラネット用に利用している。万が一外部接続が行われないよう、監視をしながら利用を続けている。同じような提案を、継続して2003を利用しているお客さまに提案している。ただし、これらのお客さまについては更新需要が続いていくと考える。セグメントではセキュリティ分野が高い伸びとなったが、インターネット用セキュリティが第2四半期には21.4%、サーバー用セキュリティが51.6%と大幅に伸長した。サーバーの台数は読み違えたものの、中身としてはセキュリティ需要が高まっている。残っているWindows Server 2003に対してはフォローを継続的に行い、きちんとビジネス化していく」という計画だ。

パソコン販売台数の四半期推移
サーバー販売台数の四半期推移

 2015年下期の方針としては従来と変わらず、営業利益率、経常利益率ともに昨年からの7%という目標を維持する。「昨年はこの目標に対し、6.1%という結果となった。今年は7%に届くよう、チャレンジする。ただし、悪いことをして無理やりこの目標値を達成するつもりはない」と大塚社長は東芝問題を意識した発言を行った。

 下期の市場予測としては、経済状況はゆるやかに回復し、人手不足の顕在化、マイナンバー制度の導入、攻めのIT投資による生産性向上ニーズ、モバイル・タブレットの市場拡大、企業のIT活用および省エネニーズは底堅いと、大塚商会にはプラスとなる環境があると見ている。

 重点ターゲットとして、昨年7月から実施している多店舗・多拠点を持つ企業への取り組みを引き続き強化する。「本部ではすでにIT化が進んでいても、拠点の対応はまだという企業も多い。ITの街の電気屋さんを標榜する当社としては、かゆいところに手が届く提案を行うことで需要が見込める」(大塚社長)。

売上高・利益の計画(連結)
多店舗・多拠点企業への取り組み

 また、マイナンバー制度向けに新しいサービス「らくらくマイナンバー対応システム」を新たにリリースした。これはコピー、ドキュメントソリューションを手がけてきた経験を活かし.手書きされた調書、届け出書類を複合機でスキャンしてデータ化。OCR機能を使い、書類に記入された社会保障番号を読み込み、社員情報とひも付けしてマイナンバー付きの調書・届出書として出力する。一般社員が手書き書類のデータ化を担当し、マイナンバー取扱担当者のみがマイナンバー付き書類の出力を行う。マイナンバーを出力できる人を制限することで、データ流出を抑える。

 「これは複合機、ドキュメントソリューションを手がけているからこそ提供できるソリューション。他社にない強みとしてアピールしていく」とマイナンバー制度導入よるビジネスチャンスを見込んでいる。

 こうした新ソリューション導入などから、「通期は増収増益の目標は変更しない。まずは7月から9月までのビジネスを確実に伸ばしていくところから取り組む」という。

らくらくマイナンバー対応システム

三浦 優子