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“会計業務の究極の効率化へ”、自動化機能で利用者を支援するクラウド版「弥生会計オンライン」

 弥生株式会社は7日、小規模法人向けクラウド会計サービス「弥生会計オンライン」を7月7日からスタートした。価格は、年額2万6000円(税別)から。また、すべての機能を最大2カ月、無料で利用できる無料体験プランを用意する。

 「弥生会計オンライン」は、2014年1月にスタートした「やよいの白色申告オンライン」、同10月にスタートした「やよいの青色申告オンライン」に続く、弥生としては3つ目のクラウド会計サービス。「もっともっと“かんたん、やさしい”クラウド会計ソフト」がコンセプトで、クラウドの特性を生かし、WindowsだけでなくMacからも利用することができる。クライアントにはHTML5を採用し、将来的には、タブレット利用への最適化も計画されているとのこと。

 クラウドプラットフォームとしては、弥生のほかのサービス同様、Microsoft Azureを採用。国内に置かれたデータセンターを利用しており、日本の中で完結したサービスとなっている。

弥生会計オンラインの基本機能

使いやすさを追求、自動化を推進

 取引入力については、銀行明細、クレジットカードなどの取引データを自動取り込み、自動仕訳することができる。法人銀行口座についても、CSVデータのインポートに加え、10月からは自動連携に対応する予定。全銀協規定フォーマットに加え、三井住友銀行、りそな銀行、よこはま銀行の独自フォーマットへ対応する計画で、対応フォーマットは順次拡大を予定している。

 「最近になって、家計簿ソフトのデータ取り込みの際のセキュリティ問題がクローズアップされている。今回、当社が提供するのは法人向けサービスで、トラブルが起こった際の影響はより大きいことを懸念し、このタイミングでの対応ではなく10月スタートで慎重に行っていく予定だ」(弥生 代表取締役社長の岡本浩一郎氏)。

 自動仕訳機能については、利用者の履歴に基づいて適切な仕訳を提案していくことに加え、「ユーザー数が多い弥生の強みが生きる。弥生全ユーザーのデータを生かしたサジェスト機能を提供し、仕訳の手間を軽減する」ことが特徴となっている。

スマート取引取込

 また10月から、一件一件の取引を入力すると煩雑となる、交通費のようなものについては、多数で重要度の低い情報をまとめて仕訳データとして登録する「まとめ仕訳」機能を提供する。移動が多いユーザーの場合、一日だけでも5件、6件と乗り降りごとに仕訳データが作成され、データが多く、面倒になることを防ぐための機能となる。

 12月には電子帳簿法改正に対応し、スキャナ、スマートデバイスで証憑類を読み取り、取引データを生成する「OCR取込(スマート取引取込)」を提供。画像からOCR処理によって取引データを生成し、取引データを仕訳データへ自動変換する。証憑の整理、ファイリング、仕訳入力までの作業を一気通貫で自動化する機能となる。

まとめ仕訳
OCR取込

 なお岡本社長は、「“究極の効率化”とは業務そのものがなくなることだが、30年前に登場した会計ソフトによって、転記や集計といった作業が自動化され、その部分では“究極の効率化”を実現した。しかし、それは後工程だけ、つまり半分でしかない。今回、入力の自動化と証憑の電子化が達成されることにより、取引が発生してから試算表・決算書が作成されるまでの過程が、すべて自動化される。それを実現するのが進化を続ける弥生会計であり、今回の弥生会計オンラインの提供は、1つのマイルストーンだ」と述べ、こうした自動化による支援は、大きな意味があるとアピールしている。

弥生 代表取締役社長の岡本浩一郎氏
進化を続ける弥生会計
弥生会計によって自動化の範囲を拡大、利用者により使いやすい環境を提供する

 もちろん、まだまだ自動化は完全ではなく、カバーできない部分もある。こうした部分も、これまで強みとしてきた「かんたん取引入力」機能で利用者を支援する。これは、簿記・会計の知識がなくても簡単に取引入力を行うことができる機能で、よく使う取引のテンプレートも豊富に用意した。

 「テンプレートを利用する場合、例えばプリンタと入力すると、プリンタを買うという取引テンプレートが呼び出され、消耗品として登録される。ただし、プリンタであっても10万円以下は消耗品扱い、10万円以上は資産扱いとなる。10万円越えるものを購入したのに消耗品と登録してしまった場合には、決算処理時点でアラートをあげて修正ができるといった仕掛けを持っている」(岡本社長)。

かんたん取引入力

 このほか、数値データだけでは状況把握が難しいことから、経営者を支援する機能として、グラフでデータを表示できるレポート機能も搭載しており、現状を一目で把握できるようにしている。「グラフからは個別の取引や仕訳にさかのぼることも可能で、例えば支出の内訳、月別といったドリルダウンを行うことで、支出が多い品目、月などを確認できる」。

わかりやすいレポート機能で経営者を支援

 なお、決算に関しては10月に対応を予定しており、画面の案内にそって進行すれば決算書作成ができる仕様となっている。

 ただし、多くの企業は会計事務所を利用していることから、会計事務所との連動にも配慮。会計事務所との同時利用や、データ連携を行う機能を用意した。「2016年3月には、会計事務所と双方向でデータ連携できる機能の提供を予定している。弥生会計オンラインから入力した内容は、弥生ドライブを通じて会計事務所の弥生会計AEに同期される一方、弥生会計AEでの入力が、やはり弥生ドライブを通じて弥生会計オンラインにも同期される仕組み。決算に加え、月次監査にも弥生を利用できる仕組みとしていく」(岡本氏)。

会計事務所との双方向連携も

 価格は、電話/メールなどでの製品操作サポートや、仕訳相談/経理業務相談(キャンペーン)などが含まれる「ベーシックプラン」が年間3万円(税別)。操作サポートや各種相談が提供されない「セルフプラン」が年間2万6000円(税別)。

 また、新設法人が1年間無償で利用できる「起業家応援キャンペーン」、弥生PAP(会計事務所向けのパートナープログラム)会員である会計事務所の顧問先企業は、1年間無償で利用できる「弥生PAP紹介キャンペーン」も用意した。

無料体験プランと2つの有償プランを用意する
2つの有償プランの違い

クラウド利用はまだ一部、ただし新規開拓を進める武器に

 弥生ではこれまで提供してきたオンラインサービスの利用者を明らかにした。2015年6月末現在で、「やよいの白色申告オンライン」の登録ユーザー数は2万6261、うち有償プラン登録が1万2109、確定申告書類作成を完了したユーザー数が7927。

 「やよいの青色申告オンライン」は、登録ユーザー数は2万3154、うち有償プランは1万8680、確定申告書類作成完了ユーザー数が8082。

 トータルでは登録ユーザー数が4万9415、有償プラン登録ユーザー数が3万789、確定申告書類作成完了ユーザー数が1万6009となった。

 同社が行ったアンケートによると会計ソフト利用率が25.7%、会計ソフト利用者のうちクラウドを利用しているのは7.7%、弥生のシェアは29.5%となった。

 岡本氏はこの結果について、「クラウドアプリケーションでもトップシェアとなったものの、決して多い割合ではなく、満足しているわけではない。そもそもクラウド会計アプリケーションの市場規模が小さく、もっと市場拡大を進めていく必要がある」と分析。デスクトップも含めて、「アプリケーション利用者をさらに拡大していく必要がある」と指摘する。

 デスクトップアプリケーションについても、クラウドを通じて外部データの取込を行う「YAYOI SMART CONNECT」、クラウドへのデータバックアップサービス「弥生ドライブ」といったサービスとの連携機能を提供している。こうした機能の強化も引き続き行い、会計アプリケーション全体で、利用者拡大を進めていく計画だ。

 岡本社長は、「クラウドで目指したのは新規顧客の獲得。デスクトップ版の利用者拡大のためにさまざまな取り組みを行ってきたが、従来のデスクトップ版では『ちょっと敷居が高い』と感じている層を取り込みたい」と述べ、新規顧客獲得がサービス開始の狙いと説明。「デスクトップ版の根強いファンが存在する。社内ではフローベース(新規獲得顧客)でデスクトップ、クラウドが5対5と説明している。5年後もデスクトップ版の方が多いのでは」と、当面はデスクトップ版が主力と見ている。

三浦 優子