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鉄道車両や航空機など超大規模データにも対応、富士通が生産準備ソリューション「VPS」を強化

 富士通株式会社は23日、組立製造業向けに、デジタルプロセス株式会社が開発した生産準備ソリューション「FUJITSU Manufacturing Industry Solution VPS(Virtual Product Simulator)」(以下、VPS)の新シリーズを販売開始すると発表した。7月7日より出荷開始する。

 「VPS」は、製品の組立プロセスの検討を3次元モデルで支援するデジタル生産準備ツール。実機の代わりに、CADで作成した製品の3次元データを活用し、組立生産準備における製品レビューから製造指示にいたる業務プロセスを一貫支援できるという。

 近年では、鉄道車両全体(編成全体)や航空機全体といった超大規模な製品でも、設計検討をはじめ、製造ラインのレイアウトや工程のシミュレーションまでを、一貫して3次元データ上で行うことが求められていることから、そのようなニーズに対応するため、今回はラインアップを強化した。

 具体的には、デジタルプロセスで販売してきた、10万部品を超えるような超大規模フルアセンブリモデルでの設計検討を可能とする「Dipro VridgeR(ディプロ ブリッジャー)」を「VPS VridgeR」としてラインアップに追加。VPS形式のデータにも対応したことで、ほかの「VPS」製品との連携を強化している。

 ユーザー企業は、「VPS VridgeR」により、超大規模フルアセンブリモデルでの設計レビューや干渉チェックを容易に行えるようになるため、デジタル試作における業務プロセス全体を効率化し、設計品質向上に貢献できるとのこと。

 また、大規模3次元データを扱うために描画性能を強化した、生産ラインのレイアウトおよび工程検討を可能とする「FUJITSU Manufacturing Industry Solution GP4」も、「VPS GP4」として「VPS」のラインアップに追加された。

 3次元の仮想生産ライン上に、「VPS Manufacturing」で検討した製品の組み立て手順などのプロセス情報を3次元形状情報とともに取り込み、作業員のムダのない動きや姿勢、生産ラインの流れに応じた最適な人員配置、作業に要する時間をシミュレーションできるという。あわせて、描画処理時間を最大10分の1に短縮する性能向上を行い、大規模な製品とそれを扱う生産ラインをスムーズに描画できるようにしている。

 このほか、既存のVPS製品についても、性能向上と操作性向上を行い、処理時間を大幅に削減した。例えば、組み立て時に部品が干渉しないかなど、設計検討(製品成立性)を行う「VPS Digital Mockup」では、部品間にすき間が十分あるかを確認するクリアランスチェック機能の処理時間を、最大100分の1に短縮する性能向上を実施。生産設備の動作シミュレーションを行う「VPS IOC Express」では、可動部分が多い大規模な設備において、例えばアームを動かすという生産設備の機構動作に対し、アーム上で一緒に動く部品を自動でひも付ける機能を加えている。

 1ライセンスあたりの税別価格は、「VPS VridgeR」が65万円、「VPS GP4」が440万円。また「VPS Digital Mockup」と「VPS Manufacturing」は各250万円、両製品のセットである「VPS Standard」が400万円となる。なお、「VPS Manufacturing」「VPS VridgeR」の利用には、「VPS Digital Mockup」のライセンスが必要。

 富士通では、2017年3月末までに50億円の売り上げを目標としている。

石井 一志