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「初年度は重点的に変革に取り組む」、日本ユニシスが新たな中期経営計画を説明

2017年度の連結売上高3200億円、営業利益170億円、営業利益率5.3%を目指す

 日本ユニシスグループは27日、2014年12月に発表した「中期経営計画(Innovative Challenge Plan)」に基づき、今後の事業戦略や計画達成に向けた具体的実行プランなどについて説明。

 日本ユニシスの黒川茂社長は、「従来の中期経営計画でできなかったものを最適、最速で提供できることを目指すのが、今回の新たな中期経営計画の狙い。最適だけでなく、最速が重要なキーワードとなる。ビジネス共創などの領域においては、これまでの『点』でのサービスを、『線』や『面』に広げ、利用者や地域の視点で取り上げたい。業種、業界をまたがるビジネス提案とエコシステムを推進する。初年度は変革に重点的に取り組み、成長分野への種まきをしていく」とした。

 2017年度(2018年3月期)を最終年度とする3カ年計画「Innovative Challenge Plan」は、「チャレンジと変革で持続的成長企業に」をテーマに、「社会的ニーズや課題から、持続可能な新しいビジネスモデルを構築する」ことを目指したもの。

 成長戦略として、決済やマーケティングなど、異業種をつなぎ、企業のデジタルビジネスを、最速、最適に提供するサービスとプラットフォームを提供する「デジタルイノベーション」、医療や介護などの観点から、社会を豊かにするサービスを創造し、サービス事業主体として推進する「ライフイノベーション」に取り組むほか、提供スピードを加速するため、サービスの工業化を進め、社内外のサービスを最速、最適に組み合わせて提供するサービス体系へと刷新する「ビジネスICTプラットフォーム」を、変革への取り組みに挙げた。

 さらに、コーポレートステートメントとして「Foresight in sight」を掲げ、「先見性と洞察力により、社会の課題を深く理解し、見える化し、社会貢献する」と述べた。

 また、「チャレンジと変革を実行するために組織改編および実行施策を開始」することを掲げ、「業種横断サービス強化」、「新事業創出強化と収益化」、「構造改革」、「人財変革」の4点に取り組む姿勢をみせた。

 なお同社では、成長領域に向けて、今後3年間で90億円の投資を予定している。

日本ユニシス 代表取締役社長の黒川茂氏
日本ユニシスが目指す姿

2017年度に売上3200億円、営業利益170億円を目指す

 中期経営計画における経営数値目標は、2017年度の連結売上高が3200億円、営業利益は170億円、営業利益率5.3%を目指す。そのうち、ビジネスICTプラットフォームの売上高が2800億円、デジタルイノベーションで300億円、ライフイノベーションが100億円を見込む。なお、2020年度には3500億円の売上高を目指し、営業利益は8~9%を見込んでいる。

中期経営計画の業績目標

 ビジネスイノベーション部門においては、各部門トップが事業方針の説明を行った。

 金融機関を担当する第一ユニットでは、「地域金融機関が選びたくなるビジネスパートナーを目指す」(日本ユニシスの永井和夫執行役員)とし、「金融機関が求めている今後の姿はどういうものかということを、顧客と話しあっている。デジタルイノベーション、ライフイノベーションといった観点から、新規領域の活動に力点を置き、金融機関の間口を広げることで、新たな収益基盤を構築。Next U's Visionをさらに発展させ、当社が持つ豊富なメニューを通じて、顧客の収益を高めるための支援を行う。オープンデータの活用や、非現金決済システムとの連携、ショッピングサイトである『れじおん』との連携などの金融機関のコア機能のほか、顧客リレーションや、日本ユニシスグループのケイパビリティを組み合わせることで、成長シナリオを提案する」とした。

地域金融機関が選びたくなるビジネスパートナーへ
オープンデータの活用
連鎖で付加価値を創出
日本ユニシス 永井和夫執行役員

 流通、製造業などを担当する第二ユニットでは、「グローバル化の進展やIoTによる新たな働き方、マイナンバー制度への対応、インダストリー4.0への対応、東京オリンピックへの期待など、この領域には大きな変革が到来しており、その変革スピードに、いち早く対応することが求められている。変革を先取りした新たな提案を行うことが必要であり、それに向けて、利用価値訴求モデルへの転換、ビジネス領域の拡大などを通じて、われわれ自身もビジネスモデルを変えていく必要がある。顧客やパートナーとのエコシステムも重要であり、これも新たなビジネスを創出することにつながる」(日本ユニシスの齊藤昇執行役員)と述べた。

 具体的には、デジタルエコノミーの拡大に即した新たな価値創造、大日本印刷やコニカミノルタなどのパートナーとの連携による共創ビジネスの加速、新たなモノづくり現場への対応のほか、通販、小売、リースなどに対応したCoreCenterのさらなる強化、ビッグデータ解析におけるMartSolutionの提供などによるビジネスICTプラットフォーム事業の成長、ギフトカード分野やsmartaxi、コンテンツ配信のLoMeS、サッカーくじシステムなどのノウハウを活用することで、新たなビジネスの創造、発明につなげるという。

日本ユニシス 齊藤昇執行役員
第二ユニットの事業戦略

 電力、ガス、通信、運輸、保険などを担当する第三ユニットでは、「社会インフラを担うビッグアカウントに対して、顧客目線でサービスレベルを維持、向上させ、なくてはならないパートナーとなることで、収益基盤を確保する」(日本ユニシスの小西宏和執行役員)と述べた。

 また、「電力自由化により、小売業でも電気を販売したり、電話会社も電気を売り出すといった動きが出てくる。日本ユニシスのこれまでの知見をさまざまな業種に提案していくチャンスが生まれる。スマートメーターによって、数多くのデータが集まってくることで、これを活用した新たなビジネスが創出につなげることを支援したい。さらに、日本ユニシスは、EVの充電スタンドではシェアナンバーワンを持ち、こうした実績をもとに乗り捨て型カーシェアリングサービスを提供したり、交通、物流、銀行などを連携することでスマートタウンプラットフォームを提案。これも新たなビジネスにつながる」と語っている。

日本ユニシス 小西宏和執行役員
第三ユニットの事業戦略

 地方自治体、病院/介護分野などを担当する第四ユニットは、「業務効率化のための道具としてICTを提供するのではなく、フィジカルな事業として展開することがこの組織の役割になる」(日本ユニシスの兵働広記執行役員)とする。

 「地方自治体では、地域創生、地域包括ケアが重視されている。エコシステム事業の創造、地方創生ファーストでのアプローチ、特約店とのパートナー戦略への取り組みを加速する。地方創生では、これまでとは異なり、地域という切り口から取り組み、まち、ひと、しごとという切り口から地域の好循環を作りだす。また、佐渡で展開している在宅医療支援システムをはじめとする医療および介護システム、SAVEaidやサイカメラZEROを活用した防災システムのほか、大日本印刷と連携している教育システム、丸善と取り組んでいる電子図書館など、尖っているソリューションを生かしていきたい」(兵働執行役員)。

 このほか兵働執行役員は、「尖った首長がいる地方自治体を7、8を選び、それらの自治体と、健康支援基盤運営事業、防災支援基盤運営事業、生涯学習支援基盤運営事業などの領域に重点的に取り組む」とも語った。

日本ユニシス 兵働広記執行役員
第四ユニットの事業戦略
地域創生コンセプト

3つの全社プロジェクトを通じて新規ビジネスの早期高収益化を

 一方、インキュベーション部門では、2015年4月から、決済イノベーションプロジェクト、マーケティングイノベーションプロジェクト、地方創生チャネルプロジェクトの3つの全社プロジェクトを発足したことに触れ、「これらの全社プロジェクトを通じて、新規ビジネスの早期高収益化を目指す。また、ビジネスイノベーション推進部を通じてさらなるビジネス機会を発掘。外部ステークホルダーと連携して、これまでにないビジネス構造を確立する」(日本ユニシスの八田泰秀執行役員)と述べた。

 決済イノベーションプロジェクトでは、クレジットカードやデビットカード、プリペイドカードなどの決済基盤を活用した提案強化のほか、マーケティングイノベーションプロジェクトでは、大日本印刷と決済連動マーケティングサービスの展開、地方創生チャネルプロジェクトでは、地域金融機関と連携して、中小企業を元気にする地域創生への取り組みを行うとした。

 また、グローバルへの展開も視野に入れており、三井物産と組んで、ASEANのコングロマリット企業との連携、ベトナムへの日本システムの輸出に取り組むことを明らかにしたほか、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞の凍結融解への共同研究、製薬企業を交えてセンサー、クラウドなどを活用した医療プラットフォームの実用化などにも取り組むという。さらに、ミラノ万博日本館における展示においても、日本ユニシスが協力していることを紹介。「日本ユニシスは、若い優秀な人材と連携することで、新たなビジネスの創出につなげたい」と語った。

日本ユニシス 八田泰秀執行役員
インキュベーション部門の役割と位置付け
全社プロジェクトの取り組み
主な新規分野への取り組み

 最後に、日本ユニシスの子会社であるユニアデックスの入部泰社長が、同社の取り組みについて説明。「当社が目指しているのは、エクセレントサービスカンパニー。お客さまの満足を第一義とし、最高の感動を与えるサービスを提供する会社になることを目指している」としたほか、重点戦略として、「IoT市場への対応」、「グローバルビジネス」、「SDX」、「クラウドファーストへの対応」の4点をあげた。

 クラウドファーストへの対応としては、「U-Cloudへの取り組みを機軸にして、マルチクラウドの統合SMS、LCMを推進。マルチクラウド環境をインテグレーションできる会社を目指す」と述べた。

ユニアデックス 代表取締役社長の入部泰氏
ユニアデックスの事業戦略

大河原 克行