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気象からビジネス洞察を、IBMとThe Weather Companyが提携

 IBMとThe Weather Companyは3月31日(米国時間)、気象に関する洞察をビジネスに生かす戦略的提携について発表した

 The Weather Companyは、気象データサービスプラットフォームを提供する企業。何千ものソースから、世界約22億のポイントにおける、1日に100億件もの気象予測を提供している。今回の提携では、同プラットフォームをIBMクラウドに移行し、そのデータをIBMアナリティクスと統合する。

 気象がビジネスに及ぼす影響は大きく、米国だけでも年間5000億ドル近くの経済的影響を与えているという。にもかかわらず、ビジネスシステムでは気象において日々の変化はないものとされているのが一般的だ。近い将来気象に関して大きな混乱が起こると分かっていても、運用上の対応が行われると限らない。

 両社は高度な気象データと、IoTなどから得られる膨大なデータやその他さまざまなビジネスデータを組み合わせることで、企業の意志決定を支援する考えだ。

 たとえば、雹による車両損害のクレーム総額は毎年10億ドルを超える。両社の新サービスを利用することで、保険会社は保険契約者に対して迫り来る降雹に関する警報と、安全な避難場所を通知するテキストメッセージを送信できる。保険契約者は損害が発生する前に自分の車を移動させることが可能となり、保険会社は契約者あたり年間25ドルのコストが抑えられるという。

 また、降雪や気温変動が小売業の売上に与える影響も大きい。降雪地域では暴風雪の予報が出るたびに、食料品やシャベル、防寒着などの売上が急増する場合がある。一方で悪天候により消費者が屋内に引きこもったため、逆に売上が下がる可能性もある。2014年1月に発生した極渦の際には、その影響で気温の低下が5.5℃以上だった地域では売上が15.5%減り、5.5℃未満だった地域では2.9%の売上減少にとどまった。

 このような気象事象を把握して影響を予測することで、小売業は地域的および全国的な人材配備とサプライチェーン戦略を必要に応じて調整することが可能になる。これらを実現するため、両社は次の3つの方法で新たなサービスを提供する予定だ。

(1)気象に対応したWatson Analytics……過去と現在の気象データをWatson Analyticsなどの分析基盤と容易に統合可能に。具体的に保険・エネルギー・小売・流通などの業界向けに両社共同でソリューション開発を進める。

(2)クラウドアプリおよびモバイルアプリ開発者向けツール……PaaS「IBM Bluemix」で提供される高度なアナリティクスを用いて、気象データを運用システム・接続されたデバイス・センサーなどから得られるデータと組み合わせて利用し、素早くモバイルアプリを構築可能にする。

(3)ビジネスおよび運用上の気象に関する専門知識……気象データと他の情報ソースを組み合わせて業界の課題をより効率的に解釈し、ビジネス課題を解決するための洞察を顧客に提供できるよう、IBMが何千人にもおよぶコンサルタントを育成する。

 今回の事業提携は、IBMが今後4年間に計画している30億ドルを超えるIoT関連の投資方針に沿って築かれていく。今後、クラウドサービス、ソフト、関連する知的財産のポートフォリオが開発されていく予定だ。

川島 弘之