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災害時の情報共有や避難所運営、いかに効率化するか――宮城・登米市が実証
(2014/11/19 19:09)
宮城県登米市、慶應義塾大学(以下、慶大)SFC研究所、TIS株式会社の3者は、11月6日~9日に欠けて実施された陸上自衛隊東北方面隊大規模訓練「みちのくアラート2014」と連携して、災害時の自治体業務における情報伝達・収集手段の確保と、効率的な避難所運営、および住民との情報共有を目的とした「災害時の自治体及び住民間の情報共有システム実証実験(以下、実証実験)」を7日に実施した。
「避難所運営」「被災状況の把握」を効率化
登米市では、東日本大震災において、隣接する南三陸町から数百人規模の避難者を受け入れた。事前の想定を大きく超える被害の中で現場は混乱し、電力や通信ネットワークもは壊滅的被害を受け、数日間機能しない状況となった。実証実験では特に避難所開設・運営に関する自治体業務に着目し、この業務をICTでどのようにサポートできるかを明らかにすることを目的に実施された。
具体的には、東日本大震災の際に最も復旧の早かった携帯電話・スマートフォンを用いて、関係者間の情報共有・避難所における物資管理・避難者管理などを行うプロトタイプシステムを構築し、TISのクラウド型危機管理情報共有システム「Bousaiz(以下、ボウサイズ)」と組み合わせて活用。
東日本大震災と同規模の震災を想定し、本庁舎に設置された災害対策本部、および市内の2つの支所を仮想避難所として設置し、避難所運営や被災状況の迅速な共有・可視化への効果を実証した。
災害本部では、災害時の被災・対応状況といった情報を一元管理・共有できるボウサイズをタブレットで活用し、仮想避難所では避難者の特定と名簿作成、必要な物資の確認が行えるスマホアプリをボウサイズと連携させながら活用。災害発生後、一時的なシステム停止を想定し、オープンソースのクラウドオーケストレーター「CloudCondactor」によるクラウド間フェイルオーバーも検証したという。
得られた効果
これらの仕組みを活用し、災害発生後の初動対応を想定して実験を行ったところ、避難所運営では、住民がスマホアプリに自分の情報や要求物資などを登録すると、システム側で集計して自動で避難者名簿が作成されたことを確認。また、アプリの機能を使って、必要な物資について自治体側に伝達することができた。これにより、自治体は外部からの住民安否確認や必要物資の把握を迅速に行えるため、職員の負荷軽減が期待される。
また、被災状況の迅速な共有と可視化においては、災害対策本部でボウサイズを活用することにより、仮想避難所やその周辺における被災・対応状況をリアルタイムに把握できた。システム上で写真を共有し、地図情報も活用することで正確な状況把握が可能になり、災害対応の判断精度を高められた
東日本大震災においては、職員が現場に赴き被災状況を収集。災害対策本部へは携帯電話や衛星電話を使って口頭で報告していたため、現場の詳細な情報を把握できず、伝達ミスやタイムラグが生じていたという。
一方、課題としてはスマートフォンの操作に不慣れた高齢者の対応をどうするか、避難者情報(個人情報)の取扱をどうするかが今後の検討課題に挙がったとのこと。
実用的な情報共有システムを構築へ
今後の予定としては、今回の結果を受けて、3者で災害時の自治体の初動対応業務における実用的な情報共有システムの構築を進める考え。また、実証実験を通して登米市では、共有すべき情報やそれぞれの部署で必要とされる情報などを整理できたので、今後、災害時の応急業務を円滑にするためのヒト・モノの整備に向けた検討を行い、安心・安全なまちづくりをめざすとしている。