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「SUSE Linux Enterprise 12」国内提供、搭載された新機能を紹介
(2014/11/14 06:00)
ノベル株式会社11月13日、エンタープライズ向けLinuxディストリビューションの最新版「SUSE Linux Enterprise 12」を発表した。10月27日にドイツ本社から発表された製品の国内での提供開始となる。
SUSE Linux Enterprise 12の実際の製品としては、サーバーOS「SUSE Linux Enterprise Server」、HA(高可用性)の拡張機能「SUSE Linux Enterprise High Availability」「Geo Clustering for SUSE Linux Enterprise High Availability」「SUSE Linux Enterprise Virtual Machine Driver Pack」、デスクトップOS「SUSE Linux Enterprise Desktop」「SUSE Linux Enterprise Workstation Extension」などからなり、サブスクリプション形式で販売される。「SUSSE Linux Enterprise Server for SAP Applications」「SUSE Linux Enterprise Real Time Extension」なども後日リリース予定。
また、60日間の評価用アクティベーションキーや、Web上でソフトウェアアプライアンスを作る「SUSE Studio」での提供も用意される。
SUSE Linux Enterprise 12のライフサイクルは、ジェネラルサポートが10年、延長サポートが3年。SP1の提供以降、約18カ月間隔でSPを提供する。
これにともない、サブスクリプションやアップデートへのアクセス、カスタマーサポートへの連絡などのカスタマー向けポータルサイト「SUSE Customer Center」も刷新された。
同日開催された記者発表会では、ノベル株式会社 SUSE事業部 テクニカルセールスマネージャーの羽田勝治氏がSUSE Linux Enterprise 12について解説した。
羽田氏はまず、こまでSUSE Linux Enterpriseが利用されてきた分野として、SAPアプリケーションのプラットフォームやIBMのメインフレーム用Linuxという「ミッションクリティカル」を挙げ、「SUSE Linux Enterprise 12では、この高可用性をハイパーバイザーやプライベートクラウド、パブリッククラウドと、あらゆるところで実現する」と語った。
具体的な技術としては、まず、正常稼働していた状態にワンクリックでロールバックする「フルシステムロールバック」を説明した。ファイルシステムのBtrfsや、スナップショット管理ツールのSnapperによって実現する。要素技術としてはSUSE Linux Enterprise 11 SP2から対応していたが、SUSE Linux Enterprise 12ではGrub2との組み合わせによりブート時にシステムを丸ごと復元できるようになった。
これにともない、SUSE Linux Enterprise 12ではシステム領域のデフォルトのファイルシステムがBtrfsになった。Btrfsは歴史の若いファイルシステムだが、羽田氏によると「ヨーロッパではBtrfsを採用したユーザー企業のところでOS開発チームも参加してサポートし、そこで改善し実績を積んだ」という。
また、動作中のOSカーネルに再起動なしにパッチを当てるライブパッチ技術「kGraft」を採用。対象となるパッチはクリティカルなバグで、CVE/CVSS Severity 6以上のセキュリティパッチなどをSUSEが選定して提供する。なお、プラットフォームはx86_64に限られる。kGraftの必要となる分野として、羽田氏は、金融系のシステムや長時間実行するHPC計算のほか、ブートに数時間かかるというSAPのインメモリデータベースHANAなどを挙げた。
HAの拡張機能「Geo Clustering for SUSE Linux Enterprise High Availability」は、距離無制限の複数拠点でHAやディザスタリカバリーを構成する。各拠点のHAクラスタを組み合わせた、オーバーレイクラスタの形となる。
そのほか、セキュリティOSのAppArmorでのUDP用プロファイル設定や、起動デーモンSystemdの採用、IBMのCPUである「POWER8」に対応しPPC64リトルエンディアンをサポートしたこと、コンテナ管理技術Dockerのテクニカルプレビュー、最大論理CPU数8192(x86_64プラットフォームの場合)などが紹介された。
ノベル株式会社 代表取締役社長の河合哲也氏は、SUSE Linux Enterprise 12について「HA(高可用性)を再定義」との言葉を掲げた。メインフレームLinuxや、SAPアプリケーションのプラットフォーム、HPCでの実績をもとに、SUSE Linux Enterprise 12では「計画停止・計画外停止を含め、ダウンタイムを限りなくゼロに近づける」と説明した。
また、その技術をSUSEのOpenStackディストリビューションであるSUSE Cloudにも展開し、エンタープライズで使えるOpenStackの開発に挑戦していくと語った。
さらに、「これまではLinuxとハードウェアが紐づき、『このサーバーならこのLinux』という固定化が起こっていた。しかしいま、パブリッククラウドやプライベートクラウドでその関係が大きく変わってきた。これはわれわれにとって大きな追い風となる」と語った。
SUSEの取り組みを含むOpenStackについては、ノベル株式会社 SUSE事業部 エバンジェリストの村川了氏が、今月開催された「OpenStack Summit Paris」のハイライトを報告した。
OpenStack Summitでの話題からは、ベアメタル(物理)サーバー対応やNeutronのHA化などが紹介された。
また、SUSEからのSUSE Cloud HAについての発表が紹介された。そして、「何のためにOpenStackをHAにするか。それはミッションクリティカルのため」と語った。