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アクセンチュアとSAPが緊密な協業体制、製造業でのHANA利用促進へ

 アクセンチュア株式会社は5日、8月から「業界テンプレート on Cloud for SAP HANA」を、国内において本格展開を開始すると発表した。

 業界テンプレート on Cloud for SAP HANAは、製造業における業務改革のノウハウを集約した業務テンプレートである「業界テンプレート」と、SAPが提供する「HANA」の技術を組み合わせ、クラウド環境からの利用を可能するソリューション。

 アクセンチュア 製造・流通本部の渡部英男マネジング・ディレクターは、「アクセンチュアは、業界テンプレートを約10年かけて成長させてきた経緯がある。その進化のなかで、クラウドに対応した業界テンプレート for Cloudを提供し、国内でも数社で本番稼働をしており、本番稼働前の開発プラットフォームとしての活用も拡大している。また、SAPがHANAを発表したのにあわせて、いち早く業界テンプレートを対応させ、業界テンプレート for SAP HANAを提供。検証済みテンプレートとして、Microsoft SQL Server版に加え、SAP HANA版業界テンプレートを提供している。このほど、これらの経験を生かして、製造業でのSAP導入ノウハウ、クラウドの経験、HANAの知見を活用することで、業界テンプレート on Cloud for SAP HANAとして、本格展開することになる」とする。

【訂正】
初出時、「SAP Sybase SQL Anywhere版に加え、SAP HANA版ABSOLUTE(現:業界テンプレート)を提供している」と記載しておりましたが、SAPの資料に誤りがあり、正しくはMicrosoft SQL Server版とのことでしたので、訂正いたします。

 アクセンチュアでは、社内に「業界テンプレートCenter」を設置し、進行中のプロジェクトへの支援のほか、完了したプロジェクトからのアセット収集をリソース循環型で実施できるという体制を整えている。これによって、業界テンプレートを永続的に進化させることができる仕組みを構築。テンプレートの進化などにも貢献しているという。

業界テンプレートの特徴
アクセンチュア 製造・流通本部の渡部英男マネジング・ディレクター

 また、SAP・Accenture協業チームを2社で設置。これを、業界テンプレート on Cloud for SAP HANAの協業フレームワークの核に位置づける。

 「SAP HANAの先進技術を業務改革に最大限寄与させるために、クラウドサービスの第1オプションとして、SAPのHANA Enterprise Cloudを選択することを提案している。2社で編成する協業チームが、実際のプロジェクトに参加し、クラウドを導入基盤として推進することになる」という。

 さらにアクセンチュアでは、クラウドサービスにおいて、環境提供やアプリケーション機能の提供を行うだけでなく、業務標準化、導入プロジェクトの遂行、運用フェーズでの包括的なアウトソーシングなど、クラウドで提供するアプリケーション機能を最大限活用するためのサービスラインアップを取りそろえているとする。

 「導入フェーズにおいては、テンプレートにあわせた業務改革による業務の標準化を提案。さらに運用フェーズにおいてはテンプレートに知見を持った人材がBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を担当することができ、一般的なBPOのような引き継ぎが必要な状況とは異なるのが業界テンプレートの特徴となる」という。

環境提供にとどまらないクラウドのサービスラインアップを提供する

 アクセンチュアの渡部マネジング・ディレクターは、「システムに求められる要件が増加し、業務要請に応じて広範囲のアプリケーションが求められていること、顧客接点が増加し、それに対応した運用が求められていること、さらに導入に与えられる時間が短くなっているという状況にある。こうした状況に対応するためには、テンプレートの活用や、SaaSアプリケーションの活用に解決を求めるといった動きが出てきている。また、モビリティなどへの対応という流れのなかで、クラウドによる拡張性確保といった動きも出ている。製造業においても、受注生産型と量産型と両方のビジネスモデルを導入するといった動きがあるが、そこにも業界テンプレートの強みが発揮できる」などとした。

 さらに、導入アプローチについては、業界テンプレート on Cloud for SAP HANAのテンプレート機能をそのまま導入する「既製服型」、テンプレートの機能をベースに若干の機能変更や機能追加を行う「イージーオーダー型」、テンプレート機能をプロトタイプとして参考にしながら実装機能は一から設計する「オーダーメード型」の3つの手法を用意。「顧客に最も適した形でのシステム導入を実現できる」と説明した。

3つの導入アプローチで顧客を支援

 アクセンチュア テクノロジーコンサルティング本部SAPビジネスインテグレーショングループ統括の米澤創一マネジング・ディレクターは、「米国の先進企業は、HANAを導入することを当たり前の認識があり、リアルタイムデータをいかに活用するか、ということを真剣に考えている。それに対して、日本の企業はいい事例があったら教えてほしいという段階。日本の企業の競争力を高めるためにも、HANAの導入を支援することは大切であり、そこにアクセンチュアが提供する業界テンプレート on Cloud for SAP HANAの意味がある」とした。

 また、SAPジャパン ソリューション&イノベーション統括本部リアルタイムプラットフォーム部・大本修嗣部長は、「HANAは、全世界で3500社以上が導入し、日本でも120社以上が導入しているが、より多くの顧客に使ってもらいたいと考えている。アクセンチュアの知見を生かしたソリューションと組み合わせたサービスを提供できることは大変心強い。システムのシンプル化に関心が集まるなか、パートナーとの連携は不可欠であり、そこに、SAPとアクセンチュアとの協業の意味がある」とした。

アクセンチュア テクノロジーコンサルティング本部SAPビジネスインテグレーショングループ統括の米澤創一マネジング・ディレクター
SAPジャパン ソリューション&イノベーション統括本部リアルタイムプラットフォーム部の大本修嗣部長

 アクセンチュアは、SAPと35年にわたるパートナーシップを持ち、日本では、「SAP AWARD OF EXCELLENCE 2014」を10年連続で受賞。SAP認定コンサルタントは約1100人となり、国内で2番目の規模を持つなど、SAP導入サービスでは多くの実績を持つ。

 2014年1月には、SAPビジネスインテグレーショングループをグローバル規模で再編。SAPの方向性であるクラウド化やHANAを中心にしたオファリングのインキュベーションなども担う。「SAPの新たなプラットフォームへの変化をとらえた組織再編。これにより、蓄積した知見や最新技術を生かしたビジネスが可能になる。業務改革、システム構築、そして両者にまたがるSAP活用という3つの側面で付加価値を提供できる」(アクセンチュアの米澤マネジング・ディレクター)としている。

SAPとは35年にわたるパートナーシップを持つ
組織を再編した

【8/19 製品名変更について】
初出時、製品名を「ABSOLUTE」と表記しておりましたが、アクセンチュアが「業界テンプレート」へ変更したため、混乱を避ける目的で、文中の表記をすべて差し替えました。

大河原 克行