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「ucode」開発元のYRP UNLとマイクロソフト、オープンデータ/IoT分野で提携

YRP UNLの坂村健氏【左】とマイクロソフトの加治佐俊一氏【右】
提携内容

 YRPユビキタス・ネットワーキング研究所(以下、YRP UNL)と日本マイクロソフト株式会社(以下、マイクロソフト)は7日、オープンデータ・ビッグデータとIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の分野で提携すると発表した。

 オープンデータ・ビッグデータの活用は、2013年6月に閣議決定された日本政府のIT戦略「世界最先端IT国家創造宣言」でも成長戦略の筆頭として取り上げられており、さまざまな社会実験を通じて技術の標準化やガイドライン化が進められている。

 YRP UNLとマイクロソフトも総務省や経産省が推進する標準化や実証実験にそれぞれ取り組んできたが、提携することで取り組みを加速する狙い。

 提携内容は、「オープンデータ・ビッグデータ活用の推進」と「IoT分野での技術協力と共同事業」の大きく2点。YRP UNLが推進するオープンデータ/IoTプラットフォームの基盤としてMicrosoft Azureを採用し、新たな付加価値や将来的なサービス展開を見据える。

YRP UNLで推進している技術

 YRP UNLは、東京大学教授・工学博士の坂村健氏が所長を務める第三セクター。平成14年に設立され、ユビキタス社会を実現するための基盤技術を推進。昨今はオープンデータやIoTなどの新たなトレンドに対する技術の確立も進めている。

 オープンデータ分野では、公共交通オープンデータシステムやオープンデータを受け取るためのスマホアプリ「ドコシル」を開発。オープンデータをやりとりする基礎となる総務省「情報流通連携基盤」や経済産業省「共通語彙基盤」などを活用したオープンデータ提供基盤も開発している。

 IoT分野では、個々のモノ・場所・概念を一意に識別するために付与できる固有識別番号で、「全世界共通製造番号/場所番号」ともいえる「ucode」を開発。ucodeを割り当てたセンサー端末「ココシルマーカー」、同端末からBLEで発信される電波を受け取るスマホアプリ「ココシル」などを展開している。

ucodeの概要
uIDにひも付けられた情報をスマホにプッシュするための「uID 2.0アーキテクチャ」
ucodeで場所とクラウドをつなぐ「ココシル」
「ココシルマーカー」

マイクロソフトとの提携で何をする?

uID-Azure基盤の概要
公共交通オープンデータ研究会

 両社の提携では、YRP UNLのオープンデータプラットフォーム(情報流通連携基盤、ボキャブラリ管理基盤、公共交通オープンデータ)と、IoTプラットフォーム(uID 2.0アーキテクチャ、ucode、ココシル)をMicrosoft Azureに乗せ、「uID-Azure」としてそれぞれの活用を促進させる。

 その取り組みを大きく分けると「オープンデータ・ビッグデータ活用の推進」と「IoT分野での技術協力と共同事業」の2つとなる。

 「オープンデータ・ビッグデータ活用の推進」では、YRP UNLのオープンデータプラットフォームとAzureによるクラウド基盤を構築することで、政府・自治体のオープンデータ提供基盤の構築事業を支援する。

 また、YRP UNLが推進し、主要交通機関などが勢揃いする公共交通オープンデータ研究会にマイクロソフトも会員として参画し、公共交通事業者のオープンデータ情報通信プラットフォームや、PC・タブレット・スマホ向け公共交通情報提供アプリの開発に取り組む。

 この提携に際し、マイクロソフト側では、複雑なイベント処理エンジンやデータストレージ、端末管理機能を提供する新機能「インテリジェントシステムサービス」をAzureに実装し、近日中に公開する予定という。

 一方の「IoT分野での技術協力と共同事業」では、高精度位置情報サービス事業を展開。ユーザーの所在地の地図や口コミ、音声ガイドなど町の情報を知るための空間情報サービス「ココシル」と、路線バスや鉄道の時刻表やリアルタイムな運行情報を表示するサービス「ドコシル」をAzureに乗せるほか、マイクロソフトの機械翻訳技術を組み合わせることで、海外からの観光客への情報発信を強化する。

 例えば、2013年の実施された「東京ユビキタス計画・銀座」では銀座の街中にucodeが設置され、専用アプリをインストールしたスマホを持って近づくと街の情報が表示されたが、こうした内容をその場で43言語に翻訳可能となる。「リアルタイム翻訳」を銘打っており、刻一刻と変わる運行・渋滞情報や緊急情報なども即座に翻訳できるようになるという。

 技術協力としては、「.NET Micro Framework」でucodeをサポート。ucodeによる組kみききとクラウドサービスの融合による「ucode by default」の実現を目指す。また、T-Engineフォーラムと連携して、IoT分野の新しい技術標準の普及に向けた活動も展開する。

リアルタイム翻訳
「.NET Micro Framework」でucodeをサポート

 なお発表会には、YRP UNL所長の坂村健氏とマイクロソフト業務執行役員 最高技術責任者の加治佐俊一氏が登壇した。坂村氏は「当社の技術がマイクロソフトに気に入ってもらえ、Azureに乗せてもらえた。こうした他社との連携が技術の普及には重要。提携のための提携ではなく、実事業として加速できるよう、両社で協力していく」などと抱負を述べた。

川島 弘之