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クラウドの運用手順書から運用フローを自動生成、富士通研が新技術

 株式会社富士通研究所(以下、富士通研)は12日、クラウドシステムの運用管理に必要なフローを自動生成して運用を支援する技術を発表した。

 富士通研によれば、業務システムのクラウド化が進み、ログ・構成情報・手順書などの運用データがクラウド上に蓄積されつつある。従来の運用管理は、定期的なシステム保守などの運用方針から、運用管理者がマニュアルや過去ドキュメントを参照しながら、自身の経験やノウハウに基づいて各システムに対する運用手順を具体化。そのノウハウは現場のスキルや経験に依存しており、知識の明文化はあまり進んでいないという。

 業務システムごとに異なる運用手順(ファイルのバックアップやサービスの起動・停止など)を実行することもあり、特に複数の業務システムを管理する場合にトラブルが発生しやすい状況にあった。

 今回開発したのは、さまざまなシステムの運用手順書から共通化できる部分を抽出して、“標準的な手順”を推定する「運用手順書の分析技術」と、運用手順を自動実行するフロー作成を効率化する「自動化支援技術」。

運用手順書分析・自動化支援技術の流れ

 運用手順書の分析技術では、(1)手順書中の作業を記述した部分を抽出し、できるだけ大きな単位かつ再利用性が高くなるような部分に各手順を分割、(2)分割結果を重ね合わせることで共通となる運用手順を推定、(3)共通となる運用手順の複雑さと、含まれる運用作業により分類、(4)自動運用フロー化することで短縮される時間と現在の手作業時間を推定し、自動化の優先度順を算出する。

 ポイントは、共通となる運用手順の算出は組み合わせ問題を解くことになり、計算量が発散するが、同技術では段階的に部分列を求めることで計算時間を短縮した点。これにより、従来人手で1カ月以上かかっていた運用手順書の分析作業が数時間に短縮できるという。

 自動化支援技術では、サービスの起動・停止など運用作業として最低限の要素を運用設計書に記述することで、そこから自動運用フローを自動生成する。運用設計書には処理を実行する条件も指定可能だが、条件分岐などの実装は自動化されているため、運用設計者のスキルを必要としない。これにより、自動運用フローの作成時間を最大1/10に短縮できるという。また、運用手順書の分析で得られた共通手順に対応して運用設計書を記述することで、再利用性が高い自動運用フローの維持管理も容易になるとのこと。

自動運用フローの自動生成

 富士通社内のデータセンターで使用している運用手順書に試験適用した結果、運用作業の約30%を自動化できることを確認。同技術により、「お客さまがクラウド上でシステムを利用することで、生成されるさまざまな運用データの再利用が可能となり、運用管理の効率化と高信頼化が期待できる」としている。今後も研究開発を進め、2014年度中の実用化を目指す。

川島 弘之