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シトリックス、ネットワーキングおよびクラウド事業に関する戦略を発表

通信事業者やクラウドサービス事業者への販売強化、シスコとの協業拡大

シトリックス クラウド ネットワーキング ソリューション事業部長 兼 パートナービジネス担当の鈴木和典氏

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下、シトリックス)は3日、同社のネットワーキングおよびクラウド事業戦略について、記者説明会を行った。説明会では、クラウドネットワーク事業とクラウドプラットフォーム事業に関するビジネス戦略を明らかにするとともに、それぞれの事業における製品展開や新製品の特徴などを紹介した。また、あわせてシスコシステムズ合同会社との協業展開についても発表された。

 まず、クラウドネットワーク事業成長に向けた戦略として、シトリックス クラウド ネットワーキング ソリューション事業部長 兼 パートナービジネス担当の鈴木和典氏は、(1)プロダクト戦略、(2)ハイタッチ戦略、(3)チャネル戦略、の3つを重点施策に挙げる。

 「プロダクト戦略では、ソフトウェア製品とのアタッチ強化によってシェア拡大を図るとともに、サービス事業者向けの製品提案を強化し、テレコムマーケットの拡大を目指す。ハイタッチ戦略では、メジャーアカウントへの営業強化を行い、マルチプロダクトセルを推進する。そして、チャネル戦略では、販売チャネルを拡充し、エコパートナーとの関係をさらに強化していく」との考えを示した。

 具体的には、OEMを含めたパートナーエコシステム強化を通じて、通信事業者およびクラウドサービス事業者へのトータルなネットワークソリューション提案の体制を確立するとともに販売チャネルの拡充を図る。特に、シスコシステムズを通じたCitrix NetScaler製品ファミリーの販売、マルチテナント型サービスデリバリープラットフォーム製品である「Citrix NetScaler SDX」上でのサードパーティ製仮想アプライアンスの展開、IaaS事業者との販売協業、「Citrix XenMobile」など他のシトリックス製品との機能連携強化を推進していく。

 また、従来のアプリケーションデリバリーコントローラ(ADC)という枠を超え、顧客に対してADC単体では提供できなかったファイアウォールや認証機能を提供するほか、投資コスト削減や運用効率化のメリットを提供する。これによって、通信事業者およびクラウドサービス事業者における導入を加速し、国内ADC市場におけるシェア拡大を目指す。

 一方、クラウドプラットフォーム事業の取り組みについて鈴木氏は、「これまで、当社のクラウドプラットフォーム製品は、多くのサービス事業者のクラウド基盤として採用されてきた。その中で、最近では、エンタープライズ向けソリューションのクラウド基盤としてのニーズも高まってきている。今後は、この分野への展開をさらに強化し、市場拡大を図る。そして、その先の展開として、ハイブリッドクラウド環境におけるクラウドフェデレーションとしての利用が拡大していくと見込んでいる」と述べた。

 具体的なビジネス戦略としては、エンタープライズ市場向けに機能を強化した「Citrix CloudPlatform」および「Citrix CloudPortal Business Manager」の最新版をリリースするとともに、富士通による販売開始およびシスコシステムズとの協業拡大を通じて導入組織の拡大を図る。これによって、クラウドサービス事業者はもとより、企業、大学、研究機関向けにクラウドプラットフォーム製品の採用促進を強化し、クラウドOS市場における導入実績数のさらなる拡大を目指す。

シトリックス クラウドネットワーキング ソリューション事業部 ネットワーク クラウド技術統括部 SE部 統括部長の犬塚昌利氏

 次に、クラウドネットワーク事業における製品展開について、シトリックス クラウドネットワーキング ソリューション事業部 ネットワーク クラウド技術統括部 SE部 統括部長の犬塚昌利氏が説明した。「当社のクラウドネットワーク事業の主力製品となっているのが、『Citrix CloudBridge』と『Citrix NetScaler』である。『Citrix CloudBridge』の最新版となるバージョン7では、VDI環境の効率利用やアプリケーション最適化、トラフィック管理といった従来の機能に加え、ビデオ配信の最適化やセキュアなクラウド接続機能を新たに追加した」という。

 ビデオ配信の最適化機能としては、XenDesktop環境におけるコンテンツ圧縮/キャッシング、イントラネットを含むコンテンツの最適化、YouTube等のコンテンツアクセスの監視などを提供。また、セキュアなクラウド接続機能としては、IPsecとL2トンネリングの実現によるトランスペアレント接続を可能にする「CloudBridge Connector」によって、ハイブリッドクラウドを実現する。

「CloudBridge Ver.7」の機能
NetScalerのTriScaleテクノロジー

 「『Citrix NetScaler』は、TriScaleテクノロジーによって、スケールアップ、スケールイン、スケールアウトの3つの方向から性能拡張を進めている。特に、最新の『NetScaler MPX 22000シリーズ』では、56万SSL TPSという業界最高のSSL処理能力を達成した。また、今後リリース予定の『NetScaler SDX』最新版では、最大80インスタンスの『NetScaler VPX』を集約することができるだけでなく、さまざまなベンダーの仮想アプライアンスが動作可能になる」(犬塚氏)としている。

 「NetScaler SDX」最新版のサードパーティ連携では、第一弾としてBluecat Networks、シー・エス・イー、Websenseの仮想アプライアンスが動作可能となる予定。さらに、今後、Palo Alto Networks社、RSA Security、Splunk、Trend Microなどとの連携を計画している。

シトリックス 事業開発本部 プロダクトマーケティング部の北瀬公彦氏

 クラウドプラットフォーム事業の製品展開としては、クラウド基盤ソフトウェアの最新版「Citrix CloudPlatform 4.2」とクラウドサービス管理ソフトウェアの最新版「Citrix CloudPortal Business Manager 2.1」を提供開始することが発表された。「『Citrix CloudPlatform』は、多様なワークロードを実行するためのクラウド基盤を提供するソフトウェア。今回の最新版では、サービスプロバイダにとっても企業にとってもメリットがあり、それぞれの顧客のビジネスニーズをサポートする、70以上の新機能と機能拡張を実施した」と説明するのは、シトリックス 事業開発本部 プロダクトマーケティング部の北瀬公彦氏。

 企業向けの新機能で注目されるのが、「リソースの占有利用」と「VMwareとの連携強化」だ。「グループ単位でのリソースの占有利用を可能にすることで、企業向けのワークロードをクラウドで実行するためのコンプライアンス、セキュリティ、パフォーマンスの要件をカバーする。また、VMwareとの連携強化では、VMware DRS、VMware VDS、スナップショット、ストレージマイグレーション、リンクドクローンなどの機能に対応した」(北瀬氏)という。

グループ単位でのリソース占有
VMwareとの連携強化

 サービスプロバイダ向けの新機能としては、「可用性リージョン」、「オブジェクトストレージ」、「高度なクラウドネットワーキング」の3つをピックアップ。「可用性リージョン」は、複数のゾーンを管理し、異なる地域に複数のリージョンを構成することで、ディザスタリカバリー(災害復旧)も実現できる機能。「オブジェクトストレージ」は、特定のリージョン、または複数のゾーンにわたりオブジェクトストレージを提供し、ワークロードの可用性と運用効率の向上、管理の簡素化を実現する。「高度なクラウドネットワーキング」では、仮想ネットワーク、ネットワークサービスを多様な組み合わせで利用者に提供することが可能となる。

 一方の「Citrix CloudPortal Business Manager」は、企業のIT部門が、既存のITをサービスとしてのITに進化させることができるソフトウェア。最新版では、「クラウドサービスカタログ」機能を新たに搭載。シンプルなセルフサービスカタログを通じて、ユーザーにさまざまなサービスを提供することが可能となる。サードパーティから提供されるコンテンツ管理、不正管理、顧客管理、ヘルプデスクなどのサービスと連携でき、さらに、カスタムサービスも作成できる。また、新たに提供するBSS(ビジネス支援システム)/OSS(運用支援システム)APIを利用することで、外部システムから、「CloudPortal Business Manager」で管理されている利用者情報、使用状況、クラウドサービスや価格情報などのデータを抽出し、内部および外部の業務/運用システムに統合したり、ビジネスルールやワークフローのカスタム要件を組み込むことが可能となる。

 このほか最新版では、Appcara、ActiveState、Caringo、Cloudian、Cloudsoft、CumuLogicなどのパートナーのサードパーティ製コネクターを使用して、さまざまなクラウドサービスを連携させることができる。また、IaaSクラウドとしては、Citrix CloudPlatformに加えて、試用版として、Apache CloudStack 4.2およびOpenStackと連携することも可能。さらに、セルフサービスデスクトップや、CloudPortal Services Manager用のコネクターも含まれている。

シスコシステムズ ソリューションズシステムズエンジニアリング データセンターソリューション SEマネージャーの葛貫信次氏
シスコとシトリックスの戦略的提携の経過

【お詫びと訂正】
初出時、葛貫氏の写真が北瀬氏になっておりました。お詫びして訂正いたします。

シスコとの連携を強化

 最後に、シスコシステムズ ソリューションズシステムズエンジニアリング データセンターソリューション SEマネージャーの葛貫信次氏が、同社とシトリックスの協業展開について説明。「シトリックスとは、2010年にクラウドとデスクトップ仮想化領域において最初の戦略的提携を行った。その後、2011年に、Cisco WAASによるCitrix XenDesktopの最適化ソリューションを発表。2012年のCitrix Synergy Barcelonaでは、両社による協業戦略が発表された。2013年には、Flexpodプラットフォームでのリファレンスアーキテクチャの日本語化対応を完了するとともに、Citrix Synergy Anaheimで、モビリティ、ネットワーキング、クラウドの3つの領域での提携を発表。そして、この9月には、Citrix EBCにおけるCisco UCSでのデモ環境構築について協業を行った」と、これまでの協業展開の経過を紹介した。

 こうした中で、今回、新たにクラウドネットワーキン分野での協業を開始するという。「クラウドネットワーキング分野の協業では、『Citrix NetScaler』を、シスコブランドで『Citrix NetScaler 1000V』として展開していく。また、クラウドサービスプラットフォームの『Cisco Nexus 1100シリーズ』に、『Citrix NetScaler 1000V』を展開することも可能となった」(葛貫氏)としている。「Citrix NetScaler 1000V」の販売、製品サポートについては、今後シスコシステムズから提供される予定。

 さらに、クラウドプラットフォーム分野においてもシスコデータセンターソリューションとの連携を推進。「『Citrix CloudPlatform』から、Cisco UCS Manager APIを経由して、物理サーバーのプロビジョニングが可能となった。これにより、並列計算処理や非常に高いIO性能を求めるシステムなどで、物理サーバーを利用することができるようになる。また、『Cisco Nexus 1000V』や『Cisco ASA 1000V』と連携し、当社が提供する仮想ネットワークやネットワークサービスを利用することも可能になる」と、新たな協業によるメリットを訴えた。

唐沢 正和