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日本IBM、1Uあたりコア数3倍の高密度サーバー「IBM NeXtScale System」を発表~日本のデータセンターに革新を

6U/12ベイのエンクロージャ「IBM NeXtScale n1200」
日本IBM システムx事業部 事業部長 理事の小林泰子氏

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は11日、データセンターでの利用を前提にした高密度x86サーバー「IBM NeXtScale System」を発表した。最小構成価格は126万円からで、10月28日より、日本IBMおよび同社のパートナーから出荷される。

 IBM NeXtScale Systemは、1Uハーフサイズのコンピュートノード「IBM NeXtScale nx360 M4」と、各コンポーネントを格納する19インチ標準ラックに搭載可能な6Uサイズ/12ベイのエンクロージャ「IBM NeXtScale n1200」で構成される。

 ブレード型のコンポーネントであるIBM NeXtScale nx360 M4には、9月10日に米国で発表されたばかりの「Xeon E5-2600 v2」プロセッサが搭載されており、従来比3倍の1Uあたり48コアを実現。一般的な42Uの19インチラックに、最大84台/2016コアを搭載可能だ。

 高密度ながらデータセンターの耐荷重を意識した軽量設計を採っており、耐荷重600kgの場合、標準的な1Uサーバーに比べて搭載サーバー台数を約40%増やすことができる。さらに電源や冷却ファンはエンクロージャで共有できるため、システム全体の部品数や重量を大幅に低減、システムの消費電力を5~10%削減する。

 日本IBM システムx事業部 事業部長 理事の小林泰子氏は「IBM NeXtScale Systemはデータセンターのためのサーバー」と前置きした上で、「データセンター事業者やサービスプロバイダなど、エンタープライズにクラウドを提供する側に必要なサーバーの要件は、それ以外のユーザーのサーバーニーズと大きく異なる。加えて、昨今はクラウドやビッグデータなどのトレンドによりエンタープライズのワークロードが多様化している時代。データセンターには、汎用的なx86サーバーに対するニーズ増大への対応や消費電力/スペース削減、オープンソースなど標準技術の積極採用およびベンダ依存の低減などが求められている。こうした新たな要求に応える製品が、高密度サーバーのIBM NeXtScale System」と語る。

IBM NeXtScale Systemをデータセンターに設置した場合の効果
可能な限り無駄な部品を削ぎ落したエンクロージャの構成
耐荷重や消費電力など、データセンターに求められる要件を考慮した設計
ハーフワイドのコンピュートノード「IBM NeXtScale nx360 M4」
nx360 M4の内部

自由自在、シンプル、スケール

 “データセンターにおける高密度コンピューティングに最適化”をうたうIBM NeXtScale Systemだが、小林氏はその特徴を「自由自在」「シンプル」「スケール」と表現している。

・自由自在――システム構成の自由度が高くオープンスタンダードに準拠
エンクロージャごとの統合管理モジュールを含まず、ネットワークスイッチもない、いわゆるミッドプレーンレス設計であるため、自由で柔軟な構成を取ることが可能。サーバーの基本機能はコンピュートノードであるIBM NeXtScale nx360 M4より提供され、ニーズに応じて同サイズのストレージユニットやGPGPUなどのコンポーネント(NeX)を追加できる。またSDN、OpenStack、IPMI 2.0といったオープンスタンダードに準拠しており、管理ツールやネットワークスイッチの選択肢が広く、ほかのシステムとの連携が容易。

・シンプル――管理者の負担軽減を図る効率的な運用/管理
すべてのネットワークケーブルとスイッチに筐体の前面からアクセスでき、LEDインジケータも前面に配置。エンクロージャの後ろに回って操作する必要がない。コンピュートノードの抜き差しの際も電源ケーブルへのアクセス不要。各コンピュータノードに統合管理モジュールIMMを搭載。設置場所での導入作業を簡素化するために、ケーブリング/ラッキング/動作検証が終了した状態で出荷することも、コンポーネントごとの個別包装による出荷も可能。

・スケール――スモールスタートから大規模導入まで
ノード単位でもシャーシ(複数エンクロージャ)単位でも増設が可能で、大規模ユースのニーズに応えるクラスタ構成のコンテナ(NeXtPods)にも対応。ビジネスのニーズに応じた拡張性を提供。

特徴はデータセンターのニーズにあわせた「自由自在」「シンプル」「スケール」な設計

データセンター特化型の高密度サーバーという新しい市場

日本IBM システムx事業部 システムズ&テクノロジー・エバンジェリストの早川哲郎氏

 「IBMらしさを極力排除し、標準的なx86アーキテクチャを用いながら、データセンターにおける電力、温度、重量などの課題を解決するサーバーにしたかった」と小林氏は強調するが、エンクロージャにあまり一般的ではない6Uサイズを採用したり、ハーフワイドサイズのコンポーネントに基本機能を詰め込むなど、随所に“IBMらしさ”が見て取れる製品となっている。

 「6Uにしたのは、ある程度の台数のサーバーがエンクロージャに入っているほうが電源やファンを共有でき、効率性が上がって省電力につながるから。標準的なラックサイズが42Uなので、6で割り切れる数字にした部分もある」と語るのは日本IBM システムx事業部 システムズ&テクノロジー・エバンジェリストの早川哲郎氏。

 エンクロージャには最大6個の900W電源(100V~240V)および最大10個のホットスワップ冷却ファンが含まれ、各ノード間で共有することができるが、これは一般的な1Uサーバーに比較して大幅に少ない部品構成だ。サーバー密度は高めながらも、重量や消費電力の削減が必至のデータセンターのニーズに応えるためにこのデザインとなったともいえる。

 「海外のデータセンターだと1ラックあたり10KVなどが普通であり、日本のデータセンターもラックあたりの供給電力量をアップする傾向にある。これまでは1Uサーバーをたくさん積むのがデータセンターの常識だったが、その流れが変わってきていると感じている。また日本のデータセンターは耐荷重が小さいところが多く、通常の1Uサーバーであれば30台くらいがマックスだった。IBM NeXtScale Systemのような高密度サーバーであればこうした常識を変えていくことができると思っている」と小林氏。

 ビッグデータやクラウドといったトレンドにけん引されるようにしてエンタープライズの求めるワークロードが変わり、それに伴って国内データセンターがサーバーに求める要件も”世界標準”へと変わりつつある。データセンターに特化した高密度サーバーという新しい市場が日本でも活性化するのはそう遠くないのかもしれない。

五味 明子