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富士通研、データを暗号化したままでの統計計算や生体認証を実現
「準同型暗号」の高速化技術を開発
(2013/8/28 14:52)
株式会社富士通研究所(以下、富士通研)は、データを暗号化したままさまざまな演算が可能な「準同型暗号」の高速化技術を開発した。
準同型暗号は、暗号化したまま加算や乗算などの演算処理が可能な技術。従来の暗号化では演算処理する際に、一度復号しなければならず、その時点で安全性が低下するという問題があった。そのため、暗号化したまま加算や乗算などの演算処理が可能な準同型暗号が、新しいクラウドサービスを提供する技術として期待されている。
しかし、従来の準同型暗号には、データのビットごとに暗号化を行うため、処理性能に課題があった。暗号化されたデータ間の単純な加算のみであれば、それほど処理時間もかからないため、電子投票などに実用化されているが、例えば、暗号化されたデータ間で統計計算を行う場合には、それぞれ暗号化されたデータをビットごとに乗算した後、それぞれの結果を加算して内積結果を出さなければいけないため、ビット長に比例して処理時間が増大。いまだ実用化には至っていなかった。
今回の技術では、データのビット列の並び方を工夫して一括暗号化を実現。暗号化したまま統計計算などを行う場合に必要なビット列の内積計算を一括して行えるようにしたこれにより、例えば2048ビットのデータを用いた場合は2048倍の高速処理が可能になったという。
この技術により、さまざまな実用的な秘匿機能が実現する。例えば、集計・平均・標準偏差などを暗号化したまま行うことで、全国テスト集計やウイルス感染者の集計などが安全に行える。共通集合計算に応用すれば、病歴データの統計計算やマーケット分析(購買履歴)にも利用可能だ。
また、富士通研は8月5日に、手のひら静脈画像から2048ビットの特長コードを抽出して照合することで、従来の生体画像のパターン照合よりも高速に生体認証を行う技術を発表している。今回の新技術と組み合わせれば、生体認証の照合計算も暗号化されたまま高速に行えるようになるという。
「安全に生体認証が行えるようになれば、より身近なシーンで利用できる。従来は銀行や企業など高いセキュリティを持つシステム出利用されていたが、生体情報が暗号化により常に保護されるため、レジャー施設やリゾートホテル、空港荷物預かりなどの一時的な本人確認にも、キーやパスワードの代わりとして生体認証が使えるようになる」(ソフトウェア技術研究所 セキュアコンピューティング研究部 主管研究員の小暮淳氏)。
富士通研では同技術について、2015年の実用化を目指して実証実験などを進める方針。