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日立Sol、ソチパラリンピックに出場するスキー部を支える特訓システムを開発

GPSデータと映像を組み込んだトレッドミルで現地の斜面を再現

日立ソリューションズ 人事総務統括本部 総務部 部長の大類浩氏

 株式会社日立ソリューションズ(日立Sol)は8月26日、同志社大学 スポーツ健康科学部の協力の下、GPS(全地球測位システム)データと映像をトレッドミルに組み込んだシミュレーションシステム「アバタープロジェクト」を開発し、ソチパラリンピック大会の日本代表に内定した同社スキー部選手の強化トレーニングを支援すると発表した。

 同社では、2004年に障がい者スキー部「AURORA(アウローラ)」を設立し、クロスカントリースキーやバイアスロンで世界を目指す選手や監督、コーチを社員として雇用し、障がい者スポーツを支援してきた。ソチパラリンピック大会においては、「AURORA」に所属する新田佳浩選手、久保恒造選手、太田渉子選手、阿部友里香選手の4選手が日本代表に内定しているという。日立Sol 人事総務統括本部 総務部 部長の大類浩氏は、「当社のニーズとして、スポーツ支援を通じた社会への貢献、有力選手の応援による社員一体感の醸成、そして世界を舞台にした企業イメージの向上があった。一方で、障がい者スポーツは、競技・練習環境が整っていないことや活動資金が少ないこと、競技人口が少ないなどの課題を抱えていた。そこで、世界を目指す有能な選手を支援するべく、日本初の本格的な障がい者スポーツチームとしてスキー部を立ち上げた」と、障がい者スキー部の設立経緯を説明する。

【訂正】
当初の発表において阿部友里香選手のお名前が誤っておりましたが、訂正がありましたため、記事中のお名前も訂正いたしました。

 今回開発したシミュレーションシステム「アバタープロジェクト」は、来年開催されるソチパラリンピック大会で使用する競技コースの地面の傾斜や景色を再現するもの。同志社大学 スポーツ健康科学部が保有するスキー用の大型トレッドミルに、コーチが現地でテスト走行して測定したGPSデータや記録した現地の映像を組み込むことで実現した。

日立Sol スキー部 監督の荒井秀樹氏
「ソチ・センターポールプロジェクト」の概要

 日立Sol スキー部 監督の荒井秀樹氏は、「スキー部では、ソチパラリンピック大会での金メダル獲得を目指して、『ソチ・センターポールプロジェクト』を推進している。その中の重要な施策である『ソチ・コースシミュレーションプロジェクト』の中核を担うシステムとして、今回のシミュレーションシステムを開発した」と話す。「ソチパラリンピックのコースは、工事が遅れていて、まだ完成していないのが実状。選手は、現地まで行って練習する機会が少なく、コース戦略などは本番直前で考えなくてはならない状況になっている。そのため、ソチのコースを日本にいながらトレーニングできないかと考え、これまで当社が培ったGISや映像システムの技術を結集し、同志社大学の協力を得てスキー用大型トレッドミルにコースを再現した」と、シミュレーションシステム開発の狙いを述べた。

ソチパラリンピックのコースを再現したシミュレーションシステム「アバタープロジェクト」
「アバタープロジェクト」のシステム概要

 開発にあたっては、事前に決めた区画ごとに、現地で測定したGPSデータ(緯度、経度、高さ)からローラーを動かす速度や傾斜を算出。トレッドミルの動作プログラムにその数値を連携させる仕組みを作るとともに、目の前のスクリーンにはその位置情報に合った景色が映し出されるように調整した。また、走行中の選手が傾斜の上り下りを速やかに判断できるように、映像に矢印を表示する。そして、スクリーンの下部分にはコース全体と走行中の区画も表示し、コース全体を見据えたトレーニングが行えるようにした。システムの開発費は700万円となっている。

 スキー部の選手は、同システムを主にオフシーズンの間のイメージトレーニングとして、月1回のペースで活用していく予定。「これによって選手は、ソチのコースを早くから体感し、あらかじめコース戦略を立てることで、優位な立場で本番レースに臨むことができる。また、選手の身体測定データを分析し、選手に合った効果的なトレーニングプログラムを実施することが可能となる。さらに、コースの全景を把握できるため、日当たりを考慮したワックス対策も検討できる」(荒井氏)と、シミュレーションシステムの活用メリットを強調した。

 なお、同志社大学 スポーツ健康科学部 藤澤義彦教授のゼミナールでは、学生が研究活動の一環として、トレッドミルでの走行時の選手たちの乳酸値や心拍を測定して分析。それらの結果も今後の選手のトレーニングに活用していく予定。

唐沢 正和