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シスコ、応用技術室を設置してSDNの普及を加速

OpenDaylightプロジェクトへの参加にも言及

 シスコシステムズ合同会社(シスコ)は23日、日本におけるCisco ONE(Open Network Environment)の取り組みなどについて説明。新たにSDN応用技術室を設置し、国内におけるCisco ONEのサポート体制を強化する姿勢を示した。

 Cisco ONEは、ネットワークエレメントにインテリジェンスを組み込んだ、同社が提唱する次世代オープンネットワーク環境。クラウド、モビリティ、ソーシャルネットワーキング、ビデオなどのトレンドを取り込んだビジネスイノベーションを促進。これにより、プラットフォームAPIや、SDNコントローラとエージェント、バーチャルオーバレイを駆使し、アプリケーションとインフラを統合し、稼働させる、包括的なプログラマブルネットワークソリューションを構築できるという。

 シスコ 執行役員 システムズ・エンジニアリング担当の吉野正則氏は、「国内においては、プロフェッショナルサービスのAdvanced Service、テクニカルサポートスキームのJapan TACとともに、ユーザーおよびデベロッパーを支援するSDN応用技術室を設置した。SDNの推進において、軸となる組織体がSDN応用技術室。これにより、Cisco ONEのサポート体制を強化し、国内SDN市場を加速させたい」と語る。

国内でのCisco ONEサポート体制の強化
シスコ 執行役員 システムズ・エンジニアリング担当の吉野正則氏

 またSDN応用技術室では、Cisco ONEの技術普及活動とともに、ユースケースやエコシステムの開発、先進ユーザー事例の推進や構築支援を行うとのこと。吉野執行役員は、「SDNは大きなポテンシャルを持っているが、どんなインダストリーで、どんなアプリケーションが利用できるのかがわからないというのが実態。ユースケースや先進ユーザー事例は、SDNの普及において重要な要素になる」と、設置の狙いを話した。

 具体的な人員としては、専任プログラムマネージャー、専任システムズエンジニア、SDNエバンジェリストを配置。さらに、データセンター、セキュリティをはじめ、シスコが持つすべてのポートフォリオが関連してくることから、社内関連部門のプロジェクトメンバーとも連携を図る体制を構築する。

 「Interop Tokyoにおいても、Platform API、Controllers and Agents、Virtual Overlaysの3つの柱から、それぞれのデモンストレーションを行う。onePK APIによるPoCデモアプリケーション、Cisco ONEコントローラおよびNexus 3000によるOpenFlowのデモンストレーション、OpenStackおよびVXLANのデモ展示を予定している。データセンターでは、運用やプロビジョニングなどに対する関心が高まっており、APIの活用にも興味を持っている。APIを変えることが、差別化したいといったことを含めてSDNが注目を集めている」などとした。

SDN応用技術室の役割
SDN応用技術室の体制

 また吉野執行役員は、国内において、NTTデータ、情報通信研究機構、NTTネットワークサービスシステム研究所など7組織が参加した、onePKのEFT(Early Field Trial)フェーズが終了し、CA(Controlled Availability)フェーズでの検証、検討に入ったことを示し、「これは、より商用に近づいたフェーズでの検証になる」などと語った。

 onePKにおいては、さっぽろ雪まつりで情報通信研究機構が、アプリケーションによるネットワーク経路制御動作の実証実験を実施。パスの切り替え時にも画像転送への影響がないという結果を導き出したほか、同じさっぽろ雪まつりでは、NTTネットワークサービスシステム研究所が開発した、帯域オートスケールプログラムによるトラフィック量のリアルタイム制御も実現したとのこと。こうした結果を受けて、「どちらも商用化を前提としたものではないが、基礎的な検証として大きな成果が出ている」とした。

 なおonePKについては、研究開発機関のほか、サービスプロバイダやエンタープライズユーザーといった企業だけでなく、デベロッパーやシステムインテグレータなども関心を寄せていることを示しながら、「SDNをビジネスチャンスと考えている人たちとも、協業していく段階に入った」などとコメントしている。

国内市場での協業およびonePK EFTの情報
Cisco サービスプロバイダーグループ バイスプレジデント SPチーフアーキテクト兼最高技術責任者のデビッド・ワード氏

 一方、米Cisco本社とビデオ会議システムをつなげ、会見に参加したCisco サービスプロバイダーグループ バイスプレジデント SPチーフアーキテクト兼最高技術責任者のデビッド・ワード氏は、全世界で50社以上の企業がSDNを試験的に導入しており、顧客数が毎月増加していることを示しながら、「技術は大きな転換期にあり、それを支えているのがSDNである。できるだけ多くのネットワークに関する情報を抽出し、それに対して、新たな技術を入れていく一方、クロスドメインのオーケストレーションや自動化などによって、柔軟なアプリケーション開発とサービス構築および導入の加速化が図れる」などと語った。

 またワード氏は、OpenDaylightプロジェクトへの参加について言及。「これは、業界の要求に対するCiscoとしての回答である。コミッティを通じて、アプリケーションをネットワーク主体で展開し、オープンソース環境において、ひとつのコントローラを通じて、パートナーとともに、業界標準の流れを作ることになる。OpenDaylightコントローラは、ほかの企業の技術的につながるだけでなく、Javaによって書かれている点も重要な要素だ」としながら、「シスコは、onePKのすべてをコミッティに提供するものではなく、商用バージョンとして提供することになる」などと語った。

Daylightプロジェクトとは
OpenDaylightコントローラ 1.0の基本構成

 さらにCisco データセンターグループ シニア バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのデビッド・イェン氏は、「Ciscoは業界で最も広いデータセンターおよびクラウドネットワーキング向けのポートフォリオを持つ。何万ものEthernet、100万以上のバーチャルマシンに接続し、ネットワークベースの次世代クラウドファブリックを実現する」などと語り、現状でのインストールベースの広さと、今後の展開についても自信を持っている点を占めている。

Cisco データセンターグループ シニア バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのデビッド・イェン氏

(大河原 克行)