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2017年のモバイルトラフィックデータは134エクサバイトに~シスコ予測
(2013/2/6 17:32)
米国シスコ、シスコシステムズ合同会社は2月6日、「Cisco Visual Networking Index Global Mobile Data Traffic Forecast for 2012 to 2017」を発表した。同予測によると、世界のモバイルデータトラフィックは2012年からの5年間で13倍増加し、2017年には月間11.2エクサバイト(年間134エクサバイト)に達する。
1エクサバイトは、IPトラフィックの計測単位で、100京バイト=100万テラバイトに相当。2017年の年間モバイルデータトラフィック量は134エクサバイトと予測されているが、これはSNSでやりとりされる30兆枚の画像ファイルやYouTubeなどで共有される3兆本のビデオクリップに相当するという。
発表会は日本で行われ、世界で配信された。米シスコシステムズのサービスプロバイダー マーケティング担当副社長 ダグ・ウェブスター氏は、「モバイルにおいては日本が将来を予測するひとつの要となっており、この発表を行うのにふさわしい場所だ」とコメント。日本は普及率などで成熟した市場でありながら高い成長率が予測されているとした。
2012年から2017年の間に、世界のモバイルデータトラフィックは年平均増加率(CAGR)66%の割合で増加すると予測。2017年には、モバイルデータトラフィックは固定データトラフィックの3倍に達すると予測している。この大幅な増加の要因としては、(1)モバイルユーザーの増加、(2)モバイル接続の増加、(3)モバイル通信の高速化、(4)モバイルビデオの増加、を上げる。
(1)モバイルユーザー数の増加は、2012年から2017年の間に43億人から52億人になる見通し。5年で9億人という増加割合は、全世界の人口の増加スピードより3.5倍強の速さにあたる。世界的には発展途上国などで2Gも増加が見込まれている。
(2)モバイル接続の増加については、モバイル対応デバイスやM2M接続数が2012~2017年の間に70億から100億に増加する見通し。うち17億はM2M接続が占める。
(3)通信速度は、モバイルネットワークの平均速度は2012年から2017年の間に0.5Mbpsから3.9Mbpsへ、約7倍に高速化する見通しだ。
(4)モバイルビデオの増加については、世界のモバイルデータトラフィック全体に占めるモバイルビデオの割合は、2012~2017年の5年間で16倍に増加。また、モバイルゲームも5年間で10倍の増加が見込まれている。
成熟した市場ながら高い成長率が予測される日本
全世界のモバイルデータトラフィックの増加を地域別に見ると、2012~2017年に最も成長率が高いのは中東とアフリカでCAGRで77%、17.3倍に伸びると予測。ただし、トラフィックの絶対量が多くなるのはアジア太平洋地域で、2017年には全モバイルデータトラフィックの47%がアジア太平洋地域で生成されると予測している。
中でも日本のモバイルデータトラフィックの増加は最高水準で、2012年から2017年にかけてのCAGRは70%、14倍に増加する見込み。ダグ・ウェブスター氏は、日本はすでに成熟している市場ながら世界最高レベルの成長が見込まれている点で特筆すべきものがあり、2017年には、日本は全世界の接続の2%、トラフィックの16%を占めるようになると述べた。
ユーザーあたりの月間平均モバイルトラフィック量でも日本は2012~2017年を通して全世界で最大となり、2012年には1092MB、2017年には1万5300MBと予測されている。日本では4Gの普及が速いことからもトラフィックの増加が見込まれている。
4Gスマートフォンがトラフィックを増加させる
モバイル機器別の平均トラフィックでは、2012年はノートパソコンが2503MBでトップ、4Gスマートフォンが1302MB、4G以外のスマートフォンが342MBと続く。2017年にはノートパソコンが5731MBで対2012年で約2.3倍となるが、4Gスマートフォンは5114MBと同約4倍に増加。機器別の平均でもノートパソコンに迫るトラフィックとなる。2017年には全モバイルデータトラフィックの67.5%をスマートフォンが占めると予測している。
また、全世界の接続数を2G、3G、4Gに分けそれぞれの占める割合を見ると、2012年は2Gが76%、3Gが23%、4Gはわずか1%となっている。これが2017年には、2Gが33%、3Gが57%、4Gが10%になる。2Gは3Gや4Gに置き換わる形で減っていくと予測されている。
一方、トラフィックを2G、3G、4G別で見ると、2012年には2G/2.5Gが10%、3G/3.5Gが76%、4Gが14%となっており、接続数ではわずか1%にしかすぎない4Gユーザーがトラフィックの14%を発生させていることがわかる。これが2017年になると、2G/2.5Gが4%、3G/3.5Gが51%、4Gが45%となり、4Gのトラフィックが全体の半分近くを占めるようになる。
日本だけで見ると、接続数の占める割合は2012年に2Gが8%、3Gが87%、4Gが5%。2017年には、2Gが14%、3Gが51%、4Gが36%となる。世界と比べると2017年に4Gが世界で10%のところ、日本は36%ときわめて4Gへの移行が速いことがわかる。また、日本では2Gが8%から14%へと伸びると予測されているが、この増加分についてはほぼすべてM2M用途だという。
日本国内のトラフィックに占める割合を見ると、2012年に2G/2.5Gが0.4%、3G/3.5Gが71%。2017年には2G/2.5Gが0.3%、3G/3.5Gが37%、4Gが62%と4Gのトラフィックが6割を超えると予測されている。
課題となるモバイルデータトラフィックのオフロード
携帯電話のセルラー網からWiFiを通じて固定網へトラフィックを流し、セルラー網の負荷を軽減することを「オフロード」と呼ぶ。4Gやクラウドサービスの普及で飛躍的にモバイルデータトラフィックが伸びると予想されるため、通信事業者らはこうしたトラフィックに耐え得るネットワークの構築が急務となるが、すべてをセルラーネットワーク上で流すのではなく、Wi-Fiを通じてトラフィックの一部を固定系に逃がそうという試みが日本をはじめ世界で行われている。
全世界のモバイルデータトラフィックのうち、2012年には33%がオフロードされた。2017年にはトラフィックの46%と、全体の約半分がオフロードされる見込みだ。
シスコシステムズ グローバルテクノロジー政策担当副社長のロバート・ペッパー氏は、重要なのはユーザーエクスペリエンスで、そのためにはネットワークにインテリジェンスをもたせることが重要だと述べ、今後クラウドサービスが主流となる中で、レイテンシー(リスエストが送信されてからその結果が返るまでの時間)が低いのは大きな問題になると指摘。ネットワーク構築において、キャパシティ、インテリジェンス、レイテンシーの3つが重要な要素になるだろうと述べた。