「2013年度はデバイス・クラウド・ソリューションの3本立て、Windows 8にも大きな期待」~日本マイクロソフト樋口社長


代表執行役社長の樋口泰行氏

 日本マイクロソフト株式会社は3日、2012年度(2012年6月期)の報告と2013年度(2013年6月期)の重点施策などを説明する記者会見を開催。代表執行役社長の樋口泰行氏は2013年度の方針として、「デバイス、クラウド、ソリューションの3事業に注力し、日本の力を世界の力にするためにこれからも貢献していきたい」と話した。

 日本マイクロソフトはあくまでも米国に本社を持つ外資系企業の日本法人であるため、日本独自の事業戦略を打ち出すのではなく、本社の事業戦略に沿った形で、それをうまく日本市場に着地させるという立場になる。本年度で就任5年目を迎える樋口社長だが、最初の3年間はそうした本社との連携体制を整備しつつ、市場の変化に対応できる組織を作り上げてきた。

 しかし同時に、日本法人としての枠を超えた「日本に根付いた企業にする」という点を強く打ち出してきたのが、樋口社長体制での大きな特徴といえる。特に、法人向けのビジネスを遂行するにあたっては、「会社として信頼されなければ、大事な情報システムに(当社の製品・サービスを)使っていただけない」と樋口社長が話すように、顧客やパートナーとの信頼感の醸成が非常に大事な要素となる。このため、品質を非常に重んじる日本企業の声をよく聞き、必要なことは本社に対して改善を働きかけてきたほか、社名を「日本マイクロソフト」へ変更したり、積極的に大手企業の社長・幹部を社内に招いたりして、対外的にもそうした姿勢をアピールしてきた。

 その結果が、「3年連続で予算達成し、2011年度は先進国の中でももっとも高い成長率を実現したが、特に法人ビジネスは2けたの成長と、大きな実績を残した」(樋口社長)ことにつながっている。もちろん、市場で競争力を持つ製品、サービス、ソリューションといったものがあってのことではあるが、こうした姿勢が大きく顧客企業にも評価されているのだという。

 また、「日本に根付いた企業にする」という姿勢を強く反映していたのが、復興支援だ。クラウドサービスの無償提供、再生PCの寄贈など、クラウドとPCを軸に支援を提供したほか、被災3県を中心とした就労プログラムの提供、中小企業支援などを行ってきたと、樋口社長は説明する。


社長就任5年目の豊富
重点目標の1つ「デバイス」

 一方で2013年度は、「デバイス」「クラウド」「ソリューション」の3つを柱として展開するという。その中で大きな注目を集めるのは、「デバイス」分野で提供される予定のWindows 8だろう。2012年中の登場が予定されているこの新OSについては、「これまでの延長線上ではなく新しいユーザー体験を提供する、Windowsの再創造だ」とアピール。これまで同様、OEM、ISV、周辺機器メーカー、流通など多くのパートナーとエコシステムを構築し、市場の活性化を図るとした。

 またWindows 8では、新たに導入されるMetroスタイルのアプリケーションをどれだけ提供できるかが、プラットフォームの勝敗の鍵を握る面もある。このため、iOSやAndroidなど他プラットフォームの開発者にも働きかけるとともに、技術支援体制を整えていくと話す。

 残る2つの「クラウド」「ソリューション」については、顧客やパートナーとの信頼関係を維持していくことに全力を尽くす。特に、米国側がサービスの提供元になるクラウドサービスについては、日本法人のチーフクオリティオフィサー(CQO)を軸に、きちんと米国側とやりとりすることで、日本のユーザーが満足できるサービス/サポートの品質を維持する。

 なお、具体的な注力分野としては、樋口社長は「ワークスタイル変革」を挙げ、テレワーク、節電、BCPやデータセンター/仮想化といった、昨今の社会情勢も加味したソリューションの提供により、日本のユーザーのニーズに応えていく考え。パートナーについても、日本のSIerが自社導入し、その経験を生かして外販を行ったり、日本のパートナーのデータセンターとMicrosoftのデータセンターを組み合わせたハイブリッド型のソリューションを提供したり、といった連携により、さらなる法人ビジネスの伸長を目指す。

 「社内の活性化を図る(ユニファイドコミュニケーション製品の)Lyncには期待している。今では、メールがないと仕事できないのは当たり前になったが、Lyncもそうなる手応えを感じており、Lyncが固有名詞ではなく普通名詞になるくらい普及することを期待している」(樋口社長)。


「クラウド」と「ソリューション」
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