日本HP、ネットワークを仮想化する新ビジョン「Virtual Application Network」

管理ツールへのアドオンなど対応製品を7月より販売開始


日本HP 執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂氏
ネットワークも仮想化し、リソースプールへ加えられるようにする

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は24日、自社のネットワーク戦略を説明する報道向けの説明会を開催。その中で、次世代のネットワークビジョン「Virtual Application Network」を発表した。対応製品は7月から販売を開始するという。

 現在のデータセンターを構成する主要素のサーバー、ストレージ、ネットワークのうち、サーバーでは仮想化が当たり前の存在となり、ストレージも仮想化機能がさまざま盛り込まれている中で、ネットワークは旧来のまま、というケースが多く、仮想化・自動化といったテクノロジーへの対応が遅れてしまっている。そのため、サーバーやストレージはリソースプール化されていても、ネットワークのプロビジョニングや設定変更については、ネットワーク管理者がCLIやスクリプトを利用して設定する、従来の手法からほぼ変化はないのだという。

 日本HP 執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂氏は、「(ネットワークベンダーの雄たる)シスコは日本でも大きなシェアを持ち、10万以上の認定資格保有者が国内にもいるが、逆にいうと、10万人でかからないとネットワークの維持ができない。トータルコストが一番高く、分かりづらいのはネットワークだ」という点を指摘。「ストレージやサーバーは仮想化によってリソースプール化されていても、そこに派生するネットワークは、相当数の人間がデプロイしないとダメ。当社ではそれに対して、ネットワークも仮想化し、リソースプールへ加えられるようにしよういうのが、Virtual Application Networkだ」と説明する。

 そのVirtual Application Networkは、複数のネットワークスイッチを一元的に管理するとともに、物理ネットワーク上に、アプリケーションに特化した仮想的なネットワークを作ってしまおうという技術。サーバー仮想化に例えると、ネットワークスイッチ群がサーバープールに相当する部分で、その上にハイパーバイザーをかぶせて、個々の仮想マシンに当たる仮想ネットワークを構築する、といったイメージになる。

 ネットワークが仮想化され、プール化できるようになれば、アプリケーションの視点から、サーバー、ストレージ、ネットワークを一気にプロビジョニングできるようになる点は、大きなメリットだろう。これを実現するために、Virtual Application Networkではアプリケーションにあわせたテンプレートを日本HPが提供することで、帯域幅やQoS、ACLなどの各種設定を容易に実行できるとのこと。

 そのインパクトについて、杉原氏は「設定はCLIを用いずGUIから行え、数カ月かかっていた設定変更が5分できるようになる」、エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPネットワーク事業本部 事業本部長の大木聡氏は「500台の物理サーバー環境では、25万行ものコマンドラインが必要との試算があり、従来型の導入ではもう難しい。GUIでポリシーを適用・展開することで、問題を迅速に解決できる」とそれぞれアピールした。

 こうした一括設定を実現するために、日本HPでは自社のネットワーク運用管理ツール「HP Intelligent Management Center(IMC)」のアドオンモジュールとして、「IMC Virtual Application Network Manager Module」を提供。7月より販売を開始する計画だ。


Virtual Application Networkと仮想サーバーの構成の対比仮想マシンとの連携も対応。現在はVMwareをサポートする
Virtual Application Networkの構成

 なお、ネットワークを仮想化し、アプリケーションや環境に応じたリソースを提供する、という考え方自体は、米Niciraが提供するネットワークハイパーバイザー「Nicira Network Virtualization Platform(NVP)」に近い。しかし、Nicira NVPではOpenFlowのコントロールプレーンを利用し、ネットワークを単なる“土管”としてのみ利用するのに対して、Virtual Application Networkは、あくまでスイッチの機能を利用して仮想的なネットワークを構成する、という点が異なる。

 従って、NVPはスイッチの機種を問わずに利用できる一方、Virtual Application Networkは日本HPのスイッチでの利用に限られてしまう。しかし現実的には、1社のスイッチだけでデータセンターが構成されることはありえず、マルチベンダー対応が必須となる。これを解決するため、日本HPでは「IMC Extended APIs」を用意し、「さまざまなサードパーティがVirtual Application NetworkのAPIを利用して、ほかのスイッチや仮想マシンなどと連携できるようにしていく」(大木氏)としている。


16機種について、OpenFlow対応ソフトの提供を開始している

 日本HPでは、このほかにもさまざまな標準技術への取り組みを進めているという。Nicira NVPでも採用されているOpenFlowについては、ProVision ASICを搭載した6モデル16機種が無償対応したとのことで、大木氏は「世間でも、数多くOpenFlow対応や今後のコミットがなされているが、多種多様な16種類のスイッチで、商用として対応したのは、当社がこの面でもリーダーシップを発揮していること。オープンソースを含めたコントローラとの接続実績もある」と、その先進性を強調。「現在のL2プロトコル延長であるTRILLのようなものでも、新しい革新的なOpenFlowでも、投資保護の観点から標準をサポートしていく。これがユニークな訴求ポイントである」と述べた。

 「当社のNWは、日本では全然有名ではないが、米GartnerのMagic Quadrantでリーダーに位置付けられているのは、CiscoとHPだけだ。日本でのシェアはまだ1けただが、数年で2けたへ持って行きたい。シスコ1社だけでなく、お客さまの選択肢ができるようにがんばっていく」(杉原氏)。

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(石井 一志)
2012/4/25 06:00