NEC、スケールアウト型データベースソフト「ImfoFrame Relational Store」

~初期導入コストは従来比1/2に


NEC 第三ITソフトウェア事業部長 伊藤晃徳氏

 日本電気株式会社(以下、NEC)は、スケールアウト型データベースソフトウェア「InfoFrame Relational Store(インフォフレーム・リレーショナル・ストア)」を2月13日より販売開始する。出荷開始は4月上旬となる見込み。価格は最小構成で510万円(税別)から。

 NECでは、「InfoFrame Relational Store」を「データの急増に応じた柔軟な拡張性と高い信頼性を両立するビッグデータ時代に最適なデータベースソフトウェア」と位置づけている。主なターゲットとしては、予測不可能なデータ量増加への対応が必要な通信キャリア、金融、流通サービス、交通などの業種を想定している。

 NEC 第三ITソフトウェア事業部長 伊藤晃徳氏は、現在の主流であるRDB(リレーショナル・データベース)は、世界標準規格のSQLを用いているため開発が容易だが、あらかじめ将来のデータ増加を見込んだ大規模で高価なシステムが必要という問題があると指摘。また、拡張性に優れた先進技術として注目されるKVS(キーバリューストア)は、無限に近い拡張性をもっているが、新しい技術だけに導入時の懸念も多いなどの問題があると説明した。

 新製品のInfoFrame Relational Storeは、これらの課題を解決し、RDBの開発容易性とKVSのシステム拡張性を両立するとともに、NECの北米研究所で開発した独自技術「MicroSharding(マイクロシャーディング)」により、KVSでは難しい信頼性の高いデータ処理も可能だとしている。

 MicroShardingは、KVSに対するトランザクション処理とSQLアクセスを実現したNECの技術で、日米で特許を出願中だ。伊藤氏によれば、InfoFrame Relational Storeの「KVSを使って、拡張性の上にSQLを載せたのは世界初」だという。

InfoFrame Relational Storeの特長ビッグデータ時代のデータベースに対するユーザーの悩みRDB、KVS、InfoFrame Relational Storeの比較


データ量の増加に応じて柔軟に拡張可能なため、導入時の初期コストがRDBに比べ安くあがるアクセス数とデータ量の増加時に無停止でシステムを増強SQL対応により、RDBのプログラム資産が利用できる

 InfoFrame Relational Storeは、SQLインターフェイス部、トランザクション部、キーバリューストア部の3つに分かれており、それぞれ独立に増やしていくことができる。SQLインターフェイス部は、Apatchのオープンソース「Voldemort」をベースに独自開発したもの。Voldemortは昨年10月に日本語版サービスを開始したSNSサービス「LinkedIn」などで用いられている。

 SQLに対応しているため、既存システムのアプリケーションが有効活用できる点が特長となる。NECはBIGLOBEと共同で、試験的な先行導入を実施。BIGLOBEの画像管理サービスをInfoFrame Relational Storeにリプレースしたが、既存のアプリケーションのプログラム流用率が99%だったとしている。

 また、必要最低限のシステムで導入し、必要に応じてスケールアウトが可能なため、NECの試算によれば、初期導入コストは従来比で約50%の削減が可能だという。

 さらに、独自技術のMicroShardingにより、複数のデータを1カ所にまとめてメモリ上で処理することで、高速なトランザクション処理を実現。通常使用しているサーバーやストレージのデータを常に複数のバックアップサーバーに複製しているため、サーバーが故障してもデータを確実に保護する。

 マスターとなるサーバーの障害検出時にはバックアップサーバーへ1秒以内に切り替えを実施。サービス中断が許されないようなミッションクリティカル性の高い業務にも耐えられる高信頼なシステムを実現可能だとしている。

 伊藤氏は、「たとえば、銀行の振り込み処理では、振り込む口座と振り込まれる口座で、同時に、かつ確実に処理を行う必要があり、この処理でエラーが起こると大混乱になる。KVS技術では、2カ所を確実に同時に実行するというのが難しい。それに対してMicroShardingでは、高速メモリにMicroShardを格納し、確実に2つのDBに処理を行うことが可能だ」と具体例を上げ、KVSに対するmicroShardingの技術的メリットを述べた。

 山元常務は、「個人情報保護、情報セキュリティについては特に触れていないがこうした対策については」という質問に対して、「NEC単独ではなくて、いろいろなセキュリティソリューションのベンダーと相談しながら事業を進めている。すべてをNEC独自開発製品でそろえようとは思っていない。顧客ニーズを実現するために他社製品が必要という話になった場合は、その他社製品を使うかNECブランドでやるかは、都度最適なものを選択することになる。他社製品はいまも使っているし、今後も使っていきたいと考えている」とコメント。他社製品の利用も柔軟に考えていく方針を示した。

 NECでは、通信、流通、金融をはじめとする様々な企業やデータセンター事業者などに拡販し、今後、3年間で150システムの販売を目指す。

 なお、InfoFrame Relational Storeは、2月28日と29日の両日、東京国際フォーラムにて開催される「BigData EXPO 2012 Spring」に展示される予定だ。

複数の更新データをまとめたログ(MicroShard)で高速化を実現マスターサーバー障害の検出から復旧完了までの所用時間は1秒以内デモ画面。3つに分かれたグラフ表示の一番下がサーバーユニット数。黄色がストレージサーバー、緑がトランザクションサーバー。ストレージサーバーを増やしても、複数サーバーの負荷バランス再調整でパフォーマンスが落ちるのはほんのわずかな間だけということがわかる


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