オートデスク、クラウド型PLMソリューションへの参入に向けた製品戦略を説明


オートデスク アジア太平洋 製造業担当マーケティングマネージャ(PLM担当)のジェイク・レイズ氏

 オートデスク株式会社は19日、クラウドを通じた製品/プロジェクトのライフサイクル管理(PLM)分野への参入にあたり、製造業向けのPLMソリューション「Autodesk 360 for PLM」、および建築業向けのPLMソリューション「Autodesk 360 for BIM」に関する記者説明会を開催した。

 「Autodesk 360 for PLM」と「Autodesk 360 for BIM」は、いずれもオートデスクの新しいビジョンである「Autodesk 360」を構成するソリューションで、昨年11月に米国ラスベガスで開催したコーポレートイベント「Autodesk University」で発表されたもの。「Autodesk 360」とは、製品やプロジェクトの業務プロセスを効率化するための総称で、安定性、簡便性、低コストといった特徴を備えている。Autodesk Cloudを利用し、ビジネスに関する情報や業務プロセスを全面的にデジタルビューによって行うことができる。また、セキュアなデータ管理機能と組み合わせることで、時間と場所を問わず、正確な情報にアクセスできるようになる。

オートデスクが捉えるPLM

 「Autodesk 360 for PLM」は、あらゆる規模の製造業を対象に、製品の設計・製造から保守に至る製品情報や業務プロセスを管理し、製品の継続的な改善を実現するという。Autodesk アジア太平洋 製造業担当マーケティングマネージャ(PLM担当)のジェイク・レイズ氏は、「PLMソリューションというと、価格が高く、導入が難しく、アップグレードも複雑というイメージが強い。これに対して、『Autodesk 360 for PLM』は、導入しやすく、スケーラビリティがあり、直感的に使えるソリューションになっている」としている。

 「また、従来型のPLMソリューションは、エンジニアリングやPDM(製品情報管理)の分野に導入するものがほとんど。しかし、当社では、PLMソリューションはそうした分野だけでなく、品質管理やサプライヤ管理なども含めて、製品のライフサイクル全体をまたがって管理する必要があると考えている。顧客からもPLM全体の業務プロセスの合理化に焦点を当てたPLMソリューションが求められている」と説明。

 「『Autodesk 360 for PLM』では、アプリケーションがプリインストールされており、またコンフィギュレーション設定も容易に行えるため、顧客個別のビジネスニーズに合わせながら、導入したその日に利用することができる」と、そのメリットを訴えた。


オートデスク AECソリューション ソリューション コンサルタント マネージャの大浦誠氏段階に応じて柔軟な導入が可能なソリューション

 一方、「Autodesk 360 for BIM」は、建設プロジェクトチーム全体のコラボレーションやコミュニケーションを大幅に改善する建設業向けBIM(ビルディング インフォメーション モデリング)ソリューション。「現在、建設分野のプロジェクトチームは、安全に、いつでも、どこからでも、プロジェクト情報を360度すべての視点から、またBIMのライフサイクルから捉えていくことが必要とされている」というのは、オートデスク AECソリューション ソリューション コンサルタント マネージャの大浦誠氏。「こうしたニーズに応えるべく、『Autodesk 360 for BIM』では、建設分野における強力で柔軟なコラボレーション、データおよびライフサイクル管理の機能を提供する」としている。

 「また、安全で、簡単に使えて、すぐに利用できる様々なソリューションを用意し、プロジェクトライフサイクルにわたって、必要な時にいつでも、どこからでもプロジェクトデータの利用を実現にする。そして、Autodesk Cloudや設計アプリケーションとの統合により、ビジネスプロセスやワークフローの効率を向上させるとともに、収益性の改善や高品質な結果をプロジェクトチームにもたらしていく。さらに、『チーム』『プロジェクト』『エンタープライズ』と、段階に応じて柔軟な導入ができるのも『Autodesk 360 for BIM』の特徴だ」とソリューションの概要を説明した。

矢野経済研究所 専門研究員の庄司孝氏

 なお、説明会では、矢野経済研究所 専門研究員の庄司孝氏が、アナリストの視点から、PLMの課題と将来展望について解説。「PLMの課題としては、まず導入コストや運用コストの削減が挙げられる。TCOの低減を図り、投資を回収しやすくする必要がある。また、ERPなどエンタープライズ系システムと接続し、調達や購買との連携を図っていくことも必要だ。さらに、最近ではクラウドコンピューティングへの対応が求められている。『所有』から『利用』へという変化の流れに対応していくことも大きな課題といえる。そして、大企業や組立製造業など特定の業種だけでなく、中小企業や幅広い業種にもターゲットを広げ、ユーザー層を拡大していくことも重要だ」と指摘した。

 PLMの将来展望については、「近い将来には、設計だけでなく、生産や調達、販売、保守など、すべての工程において3Dデータが活用されると見ている。また、クラウド型ソリューションへの移行が進み、SaaS型サービスやモバイル型サービスへとビジネスモデルが変化していくことが予測される。そして、グローバリゼーションやコラボレーションへの対応が求められるだろう」との考えを述べた。

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(唐沢 正和)
2012/1/20 06:00