アリスタ、10GBASE-T対応のボックス型スイッチなど4製品~100%データセンターにフォーカス

スイッチ内でアプリを動作させるためのSSDも


 アリスタネットワークスジャパン合同会社(アリスタ)は14日、データセンター向けのレイヤ3スイッチ「Arista 7050シリーズ」に、10GBASE-T搭載スイッチや全ポート40Gigabit Ethernet(GbE)に対応した高密度型など、4機種を追加すると発表した。また、自社の全スイッチで共通して採用しているOS「Arista EOS」についても、機能を強化する。

 米Arista Networks(以下、Arista)は、データセンター市場に特化してスイッチを提供している非公開企業。2008年より製品の出荷を開始したばかりであるが、わずか3年の間に1000社の顧客を獲得するまでに成長しているという。製品としては、ラインレート・低遅延・省電力といった特徴を売りにしており、主力であるトップオブラック向けのボックス型「7050シリーズ」、300μ秒の超低レイテンシが特徴の「7100シリーズ」といったボックス型スイッチや、シャーシ型スイッチ「7500シリーズ」などを販売している。


新製品の概要新製品の7050T-64(左)と7050Q-16(右)

10GBASE-T普及をにらんだ「7050T-64」「7050T-52」

 今回、新製品が追加されるのはこのうちの「7050シリーズ」で、まずは、10GBASE-T対応の「7050T-64」「7050T-52」がラインアップに追加された。いずれも10GBASE-T/1000BASE-T/100BASE-TX対応のRJ45ポート×48を備えるほか、アップリンク用ポートとして「7050T-64」は40GbE対応のQSFP+スロット×4を、「7050T-52」は10GbE対応のSFP+スロット×4を搭載している。

 10GBASE-Tはこれまで、価格面や消費電力の高さがネックになって普及していなかったが、「『7050T-64』の場合でポートあたり7Wと、他社製品に比べて50%近い低消費電力化を実現。業界でもっとも低い10GBASE-Tのポートあたり消費電力を提供できる」(アリスタ テクニカルセールスマネージャーの兵頭弘一氏)点が、この新製品の特徴。サーバー側でも「2012年には間違いなくNICの標準ポートが10GBASE-Tになってくる」(兵頭氏)ため、1000BASE-Tから10GBASE-Tへの移行ニーズを狙うという。

 価格は、「7050T-52」が230万円から、「7050T-64」が300万円から。


7050T-64/7050T-52の概要10GBASE-Tの利用シーン

40GbE×16を搭載するアグリゲーション向けスイッチ「7050Q-16」

 3機種目の「7050Q-16」は、40GbEに対応したQSFP+スロット×16を備えたスイッチ。「70+50T-64」「7050T-52」のような10GbEスイッチのスパイン(アグリゲーション)用途に向くほか、金融機関におけるトレーディング基盤など、超高速・低レイテンシを求める一部顧客では、サーバーとの直接接続に用いられるケースも想定される。

 なお40GbEのトランシーバはまだMMF(マルチモードファイバ)にしか対応してないため、現時点のケーブル長は最長150mまでに限られ、データセンター間などの接続には対応しづらい。「7050Q-16」ではこれを解決するために、SFP+スロット×8(QSFP+スロット×2とのコンボ)を搭載し、10GbEによる長距離接続を行えるようにしている。

 一見、40GbEスイッチの接続を10GbEで行うのは矛盾しているように思えるが、兵頭氏はこれについて「現在のデータセンターでは仮想化の普及に伴って、データセンター内で完結するトラフィックが全体の8割以上となった。データセンター間のトラフィックは少ないため、これでも対応は可能だ」と述べた。なお2012年にはSMF(シングルモードファイバ)のトランシーバも登場してくる見込みで、その際にはアリスタでも対応するとしている。

 「7050Q-16」の価格は450万円から。


7050Q-16の概要7050Q-16の活用例

 最後の「7050S-52」は、既存の10GbEスイッチ「7050S-64」の兄弟製品。「7050S-64」はアップリンク用にQSFP+スロットを搭載していたが、「7050S-52」はこれを搭載せず、SFP+スロット×52のみを備えている点が異なる。価格は300万円から。

汎用チップとLinuxベースのモジュラーOSによるメリットを提供

Arista インターナショナル担当副社長のマーク・フォス氏
標準のLinuxカーネルを用いているので、スイッチのOS上で他のアプリケーションが動作するという

 なおこれらの新機種を含めたアリスタのスイッチはすべて、特定用途向けのASICではなく、汎用チップを使っているのだという。それは、「近年の汎用チップはかつてないほど性能が高まっており、社内で開発するASICよりも優れた汎用チップが、大手のチップベンダーが提供されるようになった」(Arista インターナショナル担当副社長のマーク・フォス氏)ためだ。

 従来はASICを開発しないと提供できなかった性能を、安価な汎用チップで実現できるのであれば、大きな投資をしてASICを開発・製造する必要はなく、スイッチ自体も安価に提供できる。「汎用チップを使っているからといって劣ることはなく、最高レベルの低遅延と省電力を提供している」(フォス氏)のであれば、デメリットも特にない。

 ではアリスタがどこに投資しているのかといえば、それはソフトウェアということになる。同社のスイッチが共通して採用している「Arista EOS」はLinuxベースだが、標準のカーネルの上で各コンポーネントが併存して動作する仕組みのため、開発の自由度が高い。ベンダー側ではなく、ユーザーがアリスタのスイッチ上で既存、あるいは自作のアプリケーションを動作させることもできるのだという。

 これに対応するため、今回発表された4機種はいずれも50GBのSSDをオプションで搭載することが可能。兵頭氏は、「DHCPサーバーやDNSサーバーなどを走らせたり、仮想マシンの配信をスイッチから行ったりしているお客さまの例がある。やるかどうかは別にして、KVMハイパーバイザーやApacheなどもスイッチ上で動作させられる」と述べ、この価値をアピールした。


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(石井 一志)
2011/12/15 06:00