内田洋行、教育分野向けクラウドサービスを提供~小・中学校や自治体などへの導入促進図る


ウチダ教育クラウドサービスの概要
ウチダ教育クラウドサービスによって授業から授業準備、校務までの一元的なサービスが可能になる

 株式会社内田洋行は30日、授業支援サービスや校務支援サービスをクラウド・コンピューティング環境で提供する「ウチダ教育クラウドサービス」を、2012年1月から開始すると発表した。

 内田洋行が長年にわたる実績を持つ、教育支援システムや教職員の学校業務システムをベースに、学校向けオリジナルソリューションを、いつでもどこでもセキュアな環境で利用できる一元的サービスとして、教育委員会および小中学校を対象に提供。「わかる授業の実現」や「校務の効率化による子供と向き合う時間の増大」により、教育現場と家庭、地域を結ぶサービスと位置づける。

 内田洋行 公共本部長兼教育ICT・環境ソリューション事業部長兼教育総合研究所長の大久保昇取締役専務執行役員は、「文部科学省では、今年6月に教育の情報化ビジョンを発表しており、情報教育の充実、デジタル教科書の導入による1人1台端末環境の実現、校務の情報化、教員への支援といった内容が盛り込まれている。内田洋行は、この時期に満を持して教育クラウドサービスの提供を開始する」と意気込む。

 まずは、教育用デジタルコンテンツ配信サービス「EduMall」や英語学習用eラーニング教材配信サービス「ATR CALL BRIX」などから構成される「教育支援サービス」、教職員用ポータル・グループウェア「デジタル職員室」、校務支援システムの「デジタル校務」、学校ホームページ作成支援システム「Open School CMS」などを含む「校務支援サービス」を提供。

 また、学校向け運用支援の「学校ヘルプデスクサービス」、学校・自治体向けIT資産管理サービス「ASSETBASE PCスキャン」を用いた「サービス&サポート」、文書管理などの業務管理システムである「e-ActiveStaffシリーズ」による「地方行政向け業務管理システム」も、それぞれ提供する。

 教員は、ポータルサイトを通じて、教育委員会からの通達や、保護者からの連絡などを確認。さらに、クラウドを通じて必要な教材をダウンロードし、授業にあわせた形で準備したコンテンツをクラウド上で事前確認したり、クラウド上にアップロードしておくことで、教室で必要なものをダウンロードして授業に使用したり、といった使い方ができる。

 さらに、授業の終了後は、児童や生徒の作品などをクラウド上に保管。必要に応じてホームページなどに掲載するといった作業が手軽に行えるようになる。児童の出欠管理や授業の進ちょく状況の管理なども、クラウドサービスを利用して行える。また、校務システムの操作や教材コンテンツの取り扱いでわからないことであれば、ヘルプデスクサービスを利用して質問することができるようになっている。


教育用ポータルサイトからさまざまな校務支援システムが利用できるクラウドで提供される校務支援システム学校用ヘルプデスクサービスを利用して疑問点も解決できる
クラウド環境とすることでセキュアなネットワーク環境が実現できる教員は教室でタブレット端末を利用しながら授業を進めることができる職員室では校務システムをクラウドを通じて利用。ヘルプデスクもPCを通じて利用できる

 なお2012年1月から提供するサービスは、以前から教育委員会にサーバーを設置するスタイルを含んで、同社がネットワークサービスとして提供してきた経緯があるサービスとなる。

内田洋行 公共本部長兼教育ICT・環境ソリューション事業部長兼教育総合研究所長の大久保昇取締役専務執行役員

 大久保取締役専務執行役員は、「クラウド環境で提供することで、ネットワークのボトルネックがなくなり、セキュアな環境が実現できる。第2弾以降で、クラウドサービス独自のものも用意していくことになる。また、教育委員会の要望などもあるため、ネットワーク型のサービスも並行して提供していくことになるだろう。クラウドサービスでの料金体系は、従来のネットワーク型とほぼ同等であるが、今後は2~3割の価格の低減を図れるように努力していきたい」などとした。

 次のステップとして、同社が運営するウチダ教育クラウドモールを通じて、内田洋行グループや、同社と提携するコンテンツベンダーなどが提供するサービスを追加。家庭内からもコンテンツを利用できるようにするなど、地域住民と連携したサービスなどにも発展させていきたいという。

 「学校と学校、学校と行政、学校と地域をつなげる新たな教育、新たな地域交流のための支援サービスにも発展させたい」としている。

 また、今回のクラウドサービスでは、従来の年額契約ではなく、月額での契約が可能となっており、学期の途中や試験的な導入にも対応できるようにするなど、クラウドサービスならではの柔軟性をもたせた。

 ウチダ教育クラウドサービスの提供価格は、デジタル職員室クラウドサービスで1校あたり月額4万円から。デジタル校務では1校あたり月額5万円からなど。基本的には教育委員会(自治体)との契約となり、これらの価格体系は、1自治体10校、5年間導入した場合となる。

 同社では、2016年度までに200自治体、累計100億円の売り上げを見込む。

 

本社ビル内に“次世代のクラスルーム”を設置

 一方、同社では東京・新川の本社ビル内に、フューチャークラスルームを、12月1日付けで設置する。

 フューチャークラスルームは、大阪市の大阪支店にも2010年12月に設置しており、2拠点目となる。

 クラウドサービスを活用する新しい授業スタイルの研究開発・実証実験を、小・中・高・大学の学校関係者や企業・研究機関などと協働で行うことを目的としたもので、1人1台の情報端末や電子黒板、クラウドサービスを活用し、多様な教室環境を構築している。大阪や札幌などを結んだ遠隔教育などの実証にも取り組む。

 すでに大阪のフューチャークラスルームでは、市内の学校が実際の授業
に利用するといった使い方もでており、東京のフューチャークラスルームでも同様の利用も想定している。


フューチャークラスルームではクラウドを利用した実験も行われるフューチャークラスルームの机は自由にレイアウトを変更でき、教育スタイルにあわせて効果的な授業が行える

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