富士通研究所、CPU廃熱を利用した冷却技術を開発~データセンターの空調電力を20%削減可能


 株式会社富士通研究所は7日、CPUから発生する廃熱を利用し、サーバールームの冷却水を製造する技術を開発したと発表した。水冷式のCPUより排出される廃水は、55度と温度が低く、また負荷によって温度も変動するため活用が難しかったが、開発された新技術により、15~18度の冷水を連続的に製造可能になったという。

 工場施設の冷却に使われるような冷水を製造するには、高いエネルギーが必要だが、その熱源として、高温の廃水に含まれる熱を利用する試みが始まっている。具体的には、廃熱を利用した冷水発生装置としては、吸着材の水分吸着力により水を蒸発させ、その際に周囲の熱を奪う性質を利用する、吸着式ヒートポンプが採用されている。この仕組みでは、連続的に冷水を製造するためには、室温で吸着材へ水を吸着させ、さらに廃熱を利用した乾燥させる、といったサイクルを繰り返す必要があるという。

 しかし従来の技術では、冷水を連続的に製造するためには、水温が65度以上でかつ安定しているという条件が必要だったが、今回富士通では、新素材の吸着材を開発。室温での水の吸着性能、および55度での乾燥性能を向上させ、従来よりも低温での動作を可能にした。また、連続的に冷水を製造するためには、廃水の温度を吸着材が乾燥できる40~55度の範囲に維持する必要があるが、CPUの負荷に合わせて廃水の流量を制御することで、廃水の温度をこの範囲に保つ技術も開発された。

 これら2つの技術により、冷水発生装置へ入力された廃熱量を100%としたとき、最大で60%の熱量に相当する量の冷水出力が得られることが確認され、これまで利用されていなかったCPU廃熱を冷却に利用できるようになったという。

 具体的な効果としては、既存データセンターの消費電力のうち、約40%を占める空調消費電力を、最大で約20%削減できるとのことで、サーバーラック1台あたり、年間で最大1.2万kWhを削減し、杉の木360本分のCO2削減に貢献するとした。

 今後、富士通研究所では、2014年ごろのデータセンターでの適用を目指し、大規模化、スペース効率の向上、信頼性の向上などの技術開発を進めていく考え。また、工場、オフィスビル、太陽熱発電システムなど、データセンター以外の用途においても、利用されていない低温廃熱への活用を目指すとしている。


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(石井 一志)
2011/11/8 06:00