NECの2011年度上期決算は3年連続の最終赤字~下期はスマートフォン事業などを強化へ


NEC 代表取締役執行役員社長の遠藤信博氏
2011年度上期の業績
セグメント別の業績

 日本電気株式会社(NEC)は27日、2011年度上期(2011年4~9月)連結決算を発表した。売上高は前年同期比1.8%減の1兆4432億円、営業損益は同525.7%増の68億円、経常損益は前年の223億円の赤字から119億円改善し、104億円の赤字。当期純損益は前年の270億円の赤字から160億円改善したが、依然として110億円の赤字となった。

 売上高では、「個人向けPCや液晶など、連結を外れたものを除くとほぼ前年並み」(NEC 代表取締役執行役員社長の遠藤信博氏)とのこと。一方の損益面では、社会インフラ事業などが改善。経常損益では持ち分法による当期損益が減少したほか、純損益では関係会社(主としてNECパーソナルコンピュータ)の株式売却益など、計156億円を計上したため、いずれも前年同期からは改善している。

 7月28日に公表された予想に対しては、売上高が468億円下回っているが、「社会インフラ事業を除き、時期ずれ等の影響によるもの。営業利益は7月の予想を上回り黒字化している」とした。

 セグメント別では、ITサービス事業の売上高は前年同期比2.2%減の3627億円、営業損益は6億円悪化の30億円。自治体や医療機関、製造業向けなどが堅調に推移する一方で、流通業や通信業向けが減少した。遠藤社長は、「上期の国内サービス投資における震災の影響は、予想ほどではなかったものの、国内のITサービス投資は不透明感がある。しかし受注は第1四半期が前年同期比101%、第2四半期が同106%と回復しているので、需要が堅調な領域に引き続き注力し売り上げ拡大を図っていきたい」と述べ、いっそうの売り上げ拡大を図るとした。

 プラットフォーム事業の売上高は前年同期比1.6%減の1740億円、営業損益は7億円悪化した22億円の赤字。ソフトウェアや企業向けネットワークなどが堅調に推移したが、ハードウェアの減少が響いて減収減益となった。遠藤社長も、特にハードウェアが厳しいとしながらも、「省電力化を含めサーバーのメニュー化が上期に行われた。クラウド需要に伴うデータセンター、BCPなどお客さまの優先度合いの高い分野に注力していく。収益面では、原価低減や投資の効率化に積極的に取り組む」としている。

 キャリアネットワーク事業の売上高は前年同期比8.6%増の2942億円、営業損益は83億円増の153億円。スマートフォンの増加などを背景に、国内のモバイルトラフィックはこの1年で倍になったとのことで、こうした需要を取り込んだほか、海外事業においても、iPASOLINKがシェアを回復するなど、好調に推移した。

 社会インフラ事業の売上高は前年同期比1.8%増の1403億円、営業損益は21億円増の61億円。航空宇宙、防衛システムは売り上げが減少したが、交通、消防など社会システム分野が堅調に推移したことで増収を達成。営業損益も、売り上げの増加やコスト削減などにより増益となった。

 パーソナルソリューション事業は売上高が前年同期比9.6%減の3543億円、営業損益は5億円増の34億円。売上高は個人向けパソコン事業が非連結化されたことで、前年同期から大きく減少した。一方で営業損益では、携帯電話端末の開発効率化などによって改善している。

 その他事業の売上高は前年同期比2.3%減の1178億円、営業損益は5億円増の35億円となった。


上期の成果と課題

 

通期の売上高を500億円下方修正も、利益は変更せず

 NECでは、このような結果を受け、通期連結業績予想を修正した。

2011年度通期の業績予想
セグメント別の業績予想

 売上高は前年比4.3%増の3兆2500億円で、「上期の実績や足元の円高の影響を織り込み」(遠藤社長)、7月28日の予想からは500億円下方修正した。利益については変更なく、営業利益は900億円、経常利益は550億円、当期純利益は150億円。

 セグメント別では、放送、消防、防災などの社会システムが堅調で、それらを含む社会インフラ事業の売上高を50億円上方修正しているが、プラットフォームとキャリアネットワークの売上高を各100億円、またモバイルターミナルの販売計画を見直したパーソナルソリューションの売上高を350億円、それぞれ下方修正している。

 通期の業績予想達成に向け、遠藤社長氏は「営業黒字化し、会社計画達成していても、国内ビジネスが中心であることから、下期偏重の収益構造に課題がある。マクロ環境の悪化、著しい円高への対応のために、いっそうの原価低減やITサービス事業、キャリアネットワーク事業の収益構造強化が必須だ。ITサービス事業では、受注に回復感が見られるものの、計画には届かなかった。受注の改善、収益の改善に力を入れていく。また主にハードウェアが厳しかったプラットフォーム事業でも、海外を含めて大きな案件を取り出せているので、下期に向かって着実な利益の獲得を目指したい」と説明。

 また、急激に普及しつつあるスマートフォン端末への対応については、「キャリアネットワーク事業については、スマートフォンを含めたトラフィック増に応えるため、基地局増強などの需要を取り込む必要がある。パーソナルソリューション事業では、(NECカシオモバイルコミュニケーションズが提供している)MEDIASを上期2機種のみ製品化していたが、下期はドコモ、au、ソフトバンクの各キャリアに提供する。海外を含めてボリュームに加速を付ける」とコメント。スマートフォン事業の強化に本格的に取り組む意向を示した。


業績予想達成に向けた下期の実行ポイントITサービス事業の重点施策
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