アシスト、Ericom社のデスクトップ仮想化製品「PowerTerm WebConnect」の販売を開始


 株式会社アシストは9月14日、イスラエルEricom Softwareのデスクトップ仮想化製品「PowerTerm WebConnect」を販売すると発表した。価格は「PowerTerm WebConnect Desk View」のシート・ライセンス10~99の場合で1ライセンスあたり9720円(税別)。

 年内は自社でファーストユーザーとして導入するほか、11月まではモニターユーザー募集期間として、希望する顧客企業に限定提供。これらの実運用を踏まえて検証を進め、年内には販売を開始する見込み。全国展開は2012年以降となるが、2014年に3億円の売上を目指す。

左から、株式会社アシスト システム基盤ソフトウェア事業部 技術2部部長 岡田昌徳氏、株式会社アシスト取締役 勝田 誠氏、Ericom Software社プレジデント兼COO Brian Berns氏、Ericom Software社チャネルマネージャー Adam Greenblum氏

 開発したEricom Software社は創業から18年になり、「PowerTerm WebConnect」は世界でインストールベースで700万、顧客企業は3万社に上るという。グローバル企業ではMcDonaldやShellなどが導入している。日本ではアシストが独占契約は結んではいないものの、それに近い形で当面独占的に扱っていくという。

 「PowerTerm WebConnect」はデスクトップ仮想化製品のため、別途ハイパーバイザーなどが必要となるが、VMWare、VirtualCenter、Microsoft Xen、SCVMM、Parallels、Oracle、KVMなど多様なプラットフォームに対応。クライアント側も、Windows OS、Linux、Mac OS、シンクライアント、タブレットやスマートフォンなど多彩な機器に対応できる。

 Ericom社の製品群はデスクトップ仮想化製品「PowerTerm WebConnect」のほか、RDP環境を圧縮・高速化するプロトコル「Ericom Blaze」、HTML 5対応RDPクライアント「Ericom AccessNow」、スマートフォンやタブレット端末から利用できるクライアント「Ericom AccessToGo」の4製品から成る。

 対応するシステム環境は多岐にわたるが、統合管理機能により、導入および運用コストを大幅に削減することが可能だという。また、HTML 5対応RDPクライアント「Ericom AccessNow」により、クライアントにプラグインの配布が困難であったり、運用管理が難しい環境でも、ウェブブラウザを介して仮想デスクトップ環境を構築することができる。

 RDP通信を高速化するプロトコル「Ericom Blaze」を標準で備えており、RDPの伝送性能を5~25倍に向上させることも特長だ。

 アシストでは、社員が利用する業務用パソコン約800台と更新予定のサーバーをWindowsOSおよび他のOSからUbuntuへ年内に切り替えることを目指しており、各アプリケーションをUbuntu環境でも利用できるようにするため、Ericom社のPowerTerm WebConnectをまずは自社で利用する予定だという。

 アシストではこうした社内導入経験なども活かし、2012年度末までの販売目標として、PowerTerm WebConnectを50社への導入を目指す。

Ericom社製品取り扱いの経緯Ericom社製品群
PowerTerm WebConnect導入イメージPowerTerm WebConnectの優位性

導入コストで二の足を踏んでいた企業にも仮想化デスクトップを

 株式会社アシストの取締役 勝田 誠氏は、「デスクトップ仮想化製品は企業にとって非常にメリットが大きくニーズも高いが、価格が高いのがネックだった。そこで、より安く、また多様な環境に対応できる製品としてEricom社のデスクトップ仮想化製品を扱わせていただくことになった」として、多様な環境への対応、コストの安さにより、導入企業の裾野が広がるだろうと述べた。

 勝田取締役は、「独占権は取っていないが、それに近い形で積極的に販売していきたい」とコメント。アシストでは直販製品が多いが、PowerTerm WebConnectについては、他社からも販売できるよう、パートナー体制も構築していくと述べた。

 Ericom Software社のプレジデント兼COOのBrian Berns氏は、「調査会社ABI Research社は、デスクトップ仮想化市場は2016年には50億ドル規模に成長すると予測している。中でも、Ericomでは仮想化製品を導入する企業が増加している日本市場を非常に重要な市場と位置づけている」と日本市場を重視していることを強調。

 そのうえで、「日本におけるパートナーを決めるにあたっては、技術を理解していること、たくさんの製品を取り扱っていて既存顧客に提供しており、単一製品ではなく複数の製品を通じて顧客の環境を把握していることを重視した」とコメント。多くの製品を扱っており多様な環境に対応できる技術力と経験があるアシストとパートナー契約を結ぶことになったと提携の理由を語った。

Ericom社の概要Ericom社の顧客企業

多様な環境のサポート、フレキシブルな導入が可能

 株式会社アシスト システム基盤ソフトウェア事業部技術2部 部長 岡田昌徳氏は、「日本では震災をきっかけにした在宅勤務の必要性や事業継続性への意識が高まっていること、タッチパッドやスマートフォンの普及など、クライアントの仮想化を後押しする要素が非常に多い。アシストでは仮想化環境は400社に導入実績があるが、その倍以上の企業が初期コストの高さを理由に断念されている。Ericom社の製品を取り扱うことにより、アシストの顧客企業すべてに仮想化デスクトップ環境を提供できるのではないかと考えた」として、デスクトップ仮想化環境を利用する企業の裾野を広げる製品だと述べた。

 岡田氏は、PowerTerm WebConnect製品の特徴としては、多様な環境をサポートしていること、HTML 5に対応したクライアントソフトを持つこと、独自開発の高速圧縮転送プロトコルを持つこと、を挙げた。Ubuntuなどオープンクライアント環境にも仮想化ソリューションを提供できる。独自の高速圧縮プロトコルのBlazeは特にナローバンド環境に強く、「ナローバンドの時にはCitrixよりも速いといった結果も出ている」という。

 「PowerTermはWebConnectは価格が安いだけではなく、設定がシンプル。昨今のハイブリッドの製品では、VDIサーバーと配信サーバーは別の管理になるが、Ericomではサーバーは1つ。したがって、導入もしやすく維持管理コストも下げることが可能だ。」(岡田氏)

 また、PowerTerm WebConnect製品の特徴として、高速圧縮転送プロトコルのBlazeだけを利用したい、あるいはHTML 5対応RDPクライアントの「Ericom AccessNow」だけ導入したい、といった単体販売も可能な点を挙げた。たとえば、Citrixを導入したが、VDIまでは手が出ないといった場合に、「Ericom AccessNow」を導入して、HTML5互換ウェブブラウザーからデスクトップ仮想化環境を利用するなど、既存環境に混在させての利用が可能だという。

導入時のライセンス価格例。単体販売も可能だ(ハイパーバイザーは別途必要)今後のスケジュール。年内は試験導入とブラッシュアップを行い、2012年から本格的に販売を開始する

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(工藤 ひろえ)
2011/9/15 06:00