キヤノンMJ、2013年度にクラウド事業で450億円目指す~長期経営構想フェーズIIおよび中期経営計画を発表
キヤノンマーケティングジャパン株式会社(キヤノンMJ)は27日、2015年を最終年度とする「長期経営構想フェーズII」、2013年を最終年度とする「中期経営計画」を発表。そのなかでクラウド関連事業の売上高を2013年度に450億円を目指す方針を明らかにした。
■2015年度の連結売上高目標は8500億円
キヤノンMJ本社の外観 |
2015年度の事業目標 |
2015年度の連結売上高は8500億円、営業利益が425億円、営業利益率は5%を目指すほか、外部仕入れ商品および独自サービスの売上高を約1000億円増加させることで、売上高比率を現在の21%から30%に増加。海外売上高および輸入商品売上高比率10%を挑戦目標に掲げた。また、2013年度の連結売上高は7850億円、営業利益は285億円、経常利益は300億円、当期純利益は175億円を目指すとした。
同社の川崎正己社長は、「長期経営構想フェーズIIは、『事業創造で新しい成長の道へ』を旗印に推進する。重点戦略として、キヤノン製品のシェア拡大、事業の多角化、サービス事業会社化、グループ経営革新に取り組む。これを表現する言葉が『Beyond CANON,Beyond JAPAN』になる」とした。
同社では、2006年~2010年まで取り組んだ「長期経営構想フェーズI」において、コンスーマ製品の高水準のシェア保持となどによる「キヤノン製品事業の国内圧倒的ナンバーワンの実現」、データセンターを基盤とした新たなクラウド型事業の推進準備などの「次世代事業の確立」など5項目に取り組んできたが、「MFPなどナンバーワンに届いていない製品分野があるほか、品質、サービス、顧客満足度の向上という取り組みには終着駅がない。また、ITソリューション事業における売上高3000億円を目指すITS3000計画は、経済環境の激変の影響もあり、道半ばの状況にある」などと総括した。
新たな長期経営構想におけるキヤノン製品のシェア拡大では、「IT活用によるマーケティング&ソリューション力」、「グループ全体での開発力・コスト競争力」、「すべての事業分野での顧客満足度」、「サービス&サポート力によるグローバルキヤノン世界ナンバーワンへの貢献」を果たすとしたほか、事業の多角化では、2つの方向性があるとして、「商業印刷、MR、医療といったグローバルキヤノングループとしての新規事業の拡大、産業機器分野における世界の優れた製品の積極販売に取り組み、これらの多角化により、2015年度までに売上高1000億円増を目指す」と語った。
サービス事業会社化では、「ITS3000計画の発展系と位置づけ、グループ全体がサービス事業会社となることを目指す。ドキュメントソリューションでの保守サービス事業、クラウドベースのITS事業、ドキュメント・ITソリューションのアウトソーシングビジネス、コンスーマサービス事業などのサービス拡大のほか、アジア進出企業へのITソリューションの提供により、2015年には、2000億円の増加を見込み、現在、38%の売り上げ構成比となっているサービス事業の比率を45%以上に引き上げる。できれば50%の構成比を伺いたい」と語った。
グループ経営革新では、強固な経営基盤の維持・強化を掲げ、経営戦略とIT戦略の連携強化、グローバルサービス企業にふさわしい人材育成、グループ要員構造の改革、CSR活動の推進に取り組むとした。
一方、中期経営計画では、サービス事業会社グループへの転換を掲げながら、「キヤノン製品の圧倒的世界シェアナンバーワンへの貢献」、「独自性のある高付加価値ソリューションの創出」、「新たなビジネスドメイン、ビジネスモデルへの変革」を基本方針とした。
ITソリューションでは、SIサービス偏重の事業モデルからの脱却を目指し、クラウドビジネスやアウトソーシングビジネスによるストック型ITサービス事業の拡大に取り組む姿勢を強調した。
ITソリューションでの重点施策 |
川崎社長は、「アウトソーシングの領域における新規ビジネスとして、データセンターサービス、システム運用サービス、クラウドサービス、BPOサービスの4つの分野でサービスを展開する。昨年、クラウドビジネスセンターを、今年1月にクラウドテクニカルセンターと新設し、合計100人体制のクラウド専門組織をスタートした。2012年秋には自社データセンターを設立する予定であり、2013年度にはクラウド関連事業で450億円の売上高を目指す」とした。
SIサービス事業ではプライム案件の拡大や収益管理の徹底による収益改善、組み込みソフト事業ではキヤノン向け車載用ソフトの開発、ソリューション事業ではセキュリティ、CAD、ERP、ワークフローといった得意分野の販売拡大を目指すとしたほか、新規事業の創出として、MR(Mixed Reality)事業をスタートし、「設計、開発部門を対象にCADソフトの販売と連携したビジネスを展開して、国内のみならず、海外にも展開していく」と述べた。
海外展開では、キヤノングループの海外生産拠点や販売拠点へのITサービスの提供や、キヤノングループと協調したソリューションビジネスの展開、日本企業のアジア圏進出にあわせたITサービスの提供を計画しており、アジアへの拠点設置も視野に入れていることも明らかにした。
2013年度のITソリューション事業の売上高は1530億円、営業利益は65億円を計画している。
ビジネスソリューションでは、ドキュメントビジネスの再構築による新たな利益体質の確立、大手企業や印刷会社などを対象に展開するオセ商品をはじめとするプロダクション事業の拡大を掲げており、「手薄だった1000~3000人の従業員規模の企業を対象としたビジネスを行うBC営業本部を1月に設置しており、これにより、大手・中堅市場への対応強化のほか、保守サービスの収益力向上に取り組む。またプロダクション事業では2013年度に500億円の売り上げ規模を目指す」という。ビジネスソリューション全体の2013年度の売上高は3785億円、営業利益は75億円を目指す。
コンスーマイメージング事業では、トータルナンバーワン戦略により、デジタル一眼カメラ、デジタルコンパクトカメラ、インクジェットプリンターでのシェアナンバーワンの維持、イメージングポータルサイト事業をはじめとする新規事業の立ち上げに取り組む。2013年度の売上高は2315億円、営業利益は115億円を目指す。
産業機器事業では、産業機器ビジネスの拡充、医療事業の積極拡大、放送・映像ソリューション事業の創出によって、2010年度実績で134億円の売り上げ規模を、2013年度には500億円規模にまで拡大させる考えを示した。営業利益は30億円を目指す。
さらに、2013年までの3カ年で、1000億円の設備投資を行う計画を明らかにし、「データセンター、新規事業、M&A、クラウドIT基盤を戦略投資項目にする。データセンターは約150億円、クラウドIT基盤では100億円。ここは、基本的にはITソリューション事業への投資ということになるが、グループ全体のさまざまな事業に波及していく投資になると考えている」とした。
2013年度までの業績目標 | 2013年度までのセグメント別業績目標 |
■2010年度連結決算は減収増益、最終利益は37億円の黒字に
なお、1月26日に発表された2010年度(2010年1月~12月)の連結業績は、売上高が前年比1.8%減の6741億円、営業利益は同22.8%増の77億円、経常利益は同15.3%増の94億円、当期純損益は前年の43億円の赤字から黒字転換し、37億円となった。
ビジネスソリューション事業の売上高は前年比0.5%増の4407億円、営業損失は8億円の赤字。そのうち、ドキュメントビジネスの売上高が同51%増の2895億円、ITソリューションの売上高が同31%減の1513億円。
コンスーマ機器事業の売上高は2197億円、営業利益は91億円。産業機器事業は売上高が136億円、営業損失は5億円の赤字となった。
「ITソリューションは、企業の投資抑制が続いており、厳しい状況が続いている。またドキュメントビジネスもまだ本格的な回復には至っていないが、ビジネスソリューション全体では第3四半期に続き、第4四半期も黒字となった」(キヤノンMJの柴崎洋常務取締役)とした。
2010年度決算の概要 | セグメント別の売り上げ |
2011年度の業績見通しは、売上高が前年比2%増の6850億円、営業利益は同17%増の90億円、経常利益は同5%増の100億円、当期純利益は同8%増の40億円とした。
2011年度からの新セグメントによる内訳では、ビジネスソリューションの売上高が前年比1.5%増の3475億円、営業利益は同4.3%増の24億円、ITソリューションは売上高が同1.0%減の1321億円、営業損失は19億円の赤字、コンスーマイメージングの売上高が同0.1%増の2141億円、営業利益は同14.3%減の84億円、産業機器は売上高が同32.8%増の178億円、営業利益が1億円とした。