KDDIがプライベートクラウドサービスを拡充、DaaS・PaaSなどのサービスを提供


 KDDI株式会社は29日、閉域網を利用した法人向けのクラウドサービス「Virtual データセンター」を強化すると発表した。法人向け広域ネットワークサービス「KDDI Wide Area Virtual Switch(WVS)」のオプションとして提供されているもので、「仮想サーバプラットフォーム」「仮想デスクトップ」「テレビ会議」など4つの新機能を、2011年1月4日より提供開始する。

 「Virtual データセンター」は、KDDI WVSの大容量バックボーンに直結したサーバー機能を利用できる、プライベートクラウド型のサービス。KDDI WVSの特長である「トラフィックフリー機能」により、顧客とデータセンターの間の通信速度をインターフェイスの速度(100BASE-TX対応なら100Mbps)まで拡張できるため、契約する速度にかかわらず、ストレスのない通信を行える特徴を持つ。

 従来はファイルサーバー機能を提供する「ファイルサーバ」と、ファイアウォールなどのセキュリティ機能を提供するインターネットアクセスサービス「セキュア・インターネット」の両サービスを提供してきたが、今回より、大幅にメニューが拡大された。

 今回はまず「ファイルサーバ」において、バックアップサイトを提供する「DR対応オプション」が用意されている。従来は、東日本、あるいは西日本のいずれか顧客から近い方のデータセンターを利用していたが、「DR対応オプション」を利用すれば、もう一方のデータセンターにもほぼリアルタイムでデータがミラー化されるようになる。また、データのコピーは顧客とデータセンターを結ぶKDDI WVSとは異なる専用回線を利用するので、顧客の業務トラフィックには影響を与えないとのこと。

KDDI WVS+Virtual データセンターの全体像「ファイルサーバ DR対応オプション」

 

占有PaaS型サービスの「仮想サーバプラットフォーム」

ソリューション商品企画本部 データ商品企画部長の山田靖久氏

 その他の新機能のうち、「仮想サーバプラットフォーム」は、「Virtual データセンター」内の占有サーバー環境を提供するPaaS型サービス。「クラウドサービスでは、コストやセキュリティの不安をまだ払しょくできていない」(ソリューション商品企画本部 データ商品企画部長の山田靖久氏)といった課題があるが、閉域網のKDDI WVS上に冗長化された占有サーバーを用意し、なおかつバックボーンには二重化構成で接続することで、安心して利用できる環境を整えたという。

 また、KDDI WVSの契約が前提となるため、センター側の接続回線からサーバーの運用までを含めた、トータルのアウトソース環境を実現可能。2つのメニューに絞って提供するほか、「他の事業者の占有タイプは個別見積もりが多い中で、明確に料金を提示していることから、使いやすいサービスになるのではないか」(山田氏)とした。

 月額基本料は、CPU12コア分、48GBメモリ、システムストレージ200GBの「ハイグレード」で25万2000円。CPU4コア分、8GBメモリ、システムストレージ100GBの「スタンダード」では12万6000円。サービス開始当初はWindows Server/Hyper-V環境での提供となり、今後はRed Hat Linuxにも対応する予定である。


「仮想サーバプラットフォーム」の概要「仮想サーバプラットフォーム」の特長

 

DaaS型サービスの「仮想デスクトップ」

「仮想デスクトップ」の特徴

 2つ目の「仮想デスクトップ」は、クライアントPCのデスクトップ環境を「Virtual データセンター」環境に集約・集中管理し、クライアント端末へ配信するDaaS(Desktop as a Service)型サービス。山田氏は、「企業では、PCの購入費用よりも運用費用にコストをかけており、この部分の最適化を提供するサービス。紛失などによるリスクも削減できる」と、このサービスの特徴を話す。

 具体的には、仮想PCの作成や削除、アプリケーションの一括導入といった集中管理機能を標準で提供し、運用負荷の軽減やコスト削減に寄与するほか、「仮想サーバプラットフォーム」と同様、「Virtual データセンター」内に冗長化された占有サーバーを用意し、二重化されたアクセス回線を提供することで、信頼性を確保している。

 また、ファイル共有環境として「ファイルサーバ」を、業務アプリケーション環境として「仮想サーバプラットフォーム」を利用し「Virtual データセンター」内に環境を集約すれば、端末側とデータセンター側のトラフィックをさらに削減でき、快適な使用環境を提供できるとのこと。

 端末側は、PCやシンクライアント専用端末に加えて、スレート端末にも対応する。契約単位は60台ごとで、台数が増えるとお得になるボリュームディスカウントも設定され、最小の60台では月額22万500円(1台あたり3675円)だが、660台では月額194万400円(1台あたり2940円)となる。なお、このほか初期費用として21万円が必要。

 

HD対応のビデオ会議環境を提供する「テレビ会議」

「テレビ会議」の特徴

 3つ目の「テレビ会議」は、他拠点でのビデオ会議環境を提供するサービス。「HD対応の多地点接続装置(MCU)は一般に効果だが、米Vidyoの技術を利用し、安価に提供できるのが特徴だ」(山田氏)という。

 サービスでは、標準で50拠点まで同時接続可能のMCU機能を提供するのみならず、必要な機器をパッケージ化し、レンタルで提供する。クライアントは専用機とPCに加えて、Android端末もサポートする予定。また、すでにユーザーが導入しているビデオ会議専用端末などを接続できる「既存端末接続オプション」も用意した。

 価格は、基本となる「テレビ会議サービス利用料」が月額10万5000円で、100同時接続を追加するごとに月額10万5000円。PCを接続する場合は、同時1接続ごとに月額1万5750円。また「既存端末接続オプション」は、同時接続するHD画質端末3台(SD画質は12台)ごとに月額10万5000円。レンタルする機器は、3年契約のハイエンドパッケージ(フルHD対応)が月額5万6700円などとなっている。

関連情報
(石井 一志)
2010/11/29 14:19