ノベル、インテリジェント・ワークロード・マネジメントを中核としたクラウド戦略に注力

物理、仮想化、クラウド環境をまたいだセキュアなワークロードを実現


米Novell シニア・バイス・プレジデント兼チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)&チャネル・チーフのジョン・ドラグーン氏

 ノベル株式会社は7月22日、米Novellシニア・バイス・プレジデント兼チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)&チャネル・チーフ、ジョン・ドラグーン氏の来日に合わせ、都内で記者説明会を開催。同社が推進する「インテリジェント・ワークロード・マネジメント」ソリューションを中核としたクラウド戦略について説明した。

 Novellでは、昨年10月、インテリジェント・ワークロード・マネジメント市場において、リーディングベンダーを目指す戦略を打ち出している。インテリジェント・ワークロード・マネジメントとは、同社が定義する新たな市場であり、物理環境、仮想化環境、クラウド環境をまたがって、セキュリティとコンプライアンスを確保した状態でコンピューティングリソースを最適化し、プラットフォームに依存しないビジネスサービスを実現するための製品、ソリューションで構成されるという。

 ドラグーン氏は、ノベルがインテリジェント・ワークロード・マネジメントを中核としたクラウド戦略を打ち出した市場背景について、こう説明する。「近年、IT業界では、仮想化やクラウドの話題が盛り上がっているが、2010年における企業のITワークロードは物理環境が82%を占めているのが実情で、仮想化環境は16%、クラウド環境は2%にすぎない。しかし、2015年には、物理環境が35%、仮想化環境が45%、クラウド環境が20%と、すべての環境でITワークロードが稼働すると予想されている。そこで、当社では、クラウド環境に特化するのではなく、物理環境、仮想化環境をまたがって、セキュリティとコンプライアンスを保持したまま安全にITを使えるワークロード作りを支援することが重要だと判断した」。

ITワークロードにおける物理環境、仮想化環境、クラウド環境の稼働比率クラウド導入における障壁データセンターコンピューティングの変革

 また、インテリジェント・ワークロード・マネジメントでは、既存のIT資産を生かしたままクラウド環境への拡張を推進するのも特徴となっている。「クラウド導入にあたって、最も大きな障壁とされているのがセキュリティ問題。続いて、パフォーマンス、アベイラビリティが上位に挙げられるが、4番目の障壁となっているのが既存のITシステムとのインテグレーションの問題だ。この障壁に対して、インテリジェント・ワークロード・マネジメントは、プラットフォームに依存しないため、現在稼働している物理環境のIT資産を活用しながら、仮想化環境やクラウド環境へのシームレスな拡張をサポートする」という。

 そして、将来的にデータセンターのコンピューティング環境は、物理から仮想化、クラウドまでをすべて包含するインテリジェント・ワークロード・マネジメントへと変革するとの見通しを示し、そのためのカギとなるテクノロジーが「アイデンティティ」だと指摘する。

 ドラグーン氏は、「インテリジェント・ワークロード・マネジメントは、ビジネスサービスに高い柔軟性をもたらす一方で、セキュリティやコンプライアンスをより厳密にコントロールすることも求められる。柔軟性とコントロールのバランスを取るためには、すべてのビジネスプロセスを統合したアイデンティティ管理が必須になる」と述べている。

米Novell インテリジェント・ワークロード・マネジメント担当ディレクターのリチャード・ホワイトヘッド氏

 では、同社はインテリジェント・ワークロード・マネジメント市場で、具体的にどんなソリューションを展開しているのか。Novell インテリジェント・ワークロード・マネジメント担当ディレクターのリチャード・ホワイトヘッド氏がインテリジェント・ワークロード・マネジメント市場における製品戦略を説明した。

 「インテリジェント・ワークロード・マネジメント市場のライフサイクルは、構築/セキュリティ/評価/管理という4つのフェーズに分けられる。この4つのフェーズのうち、ほかのベンダーがカバーできているのは、1つもしくは2つのフェーズのみ。それに比べて、当社はすべてのフェーズをカバーし、幅広い製品ラインアップをそろえている」という。

インテリジェント・ワークロード・マネジメント市場のライフサイクル

 まず、「構築」フェーズでは、主力となるSUSE Linux Enterprise製品に加え、「SUSE Application Toolkit」を投入。「これにより、ISVやエンタープライズ企業は、プラットフォームを問わず動作する、統合されたワークロードを構築することが可能となった」としている。

 「セキュリティ」フェーズでは、「Novell Identity Manager 4」を新たにリリース。同社が重視するアイデンティティ管理の中核を担う製品であり、「クラウドレディ環境に求められるすべての要件をクリアするとともに、物理環境、仮想化環境、クラウド環境をまたがって、アイデンティティをマネージできる唯一のソリューションだ」と強調する。あわせて、「Novell Cloud Security Service」にも新たな機能を加えているという。

 「評価」フェーズでは、「Novell Sentinel」および「Novell Sentinel Log Manager」において、物理環境、仮想化環境、クラウド環境にかかわらずイベントのトラッキングが可能となる機能を追加。また、「Novell Operations Center」の機能強化も実施しているとのこと。

Novell Cloud Managerの概念図

 「管理」フェーズでは、「PlateSpin」製品群のラインアップに加え、「Novell Cloud Manager」「Novell Server Manager」「Novell Definitive Software Library」を新たに投入するという。特に「Novell Cloud Manager」は、仮想化環境上にプライベートクラウドを構築して管理できるツールで、すべてのハイパーバイザーに対応。さらに、将来的にパブリッククラウドのインフラをサポートできる点も特徴となっている。

 最後にドラグーン氏は、「インテリジェント・ワークロード・マネジメント市場の開拓は、ノベル1社だけでは難しい」と、エコシステムの重要性をアピール。マイクロソフトやVMwareなどのテクノロジーパートナーとの協力体制をさらに強化していく考えを示した。また、「昨年10月に戦略発表を行って以来、インテリジェント・ワークロード・マネジメントへの認知度が徐々に高まってきており、すでに数社の採用実績も出てきている」とし、米国の大手通信事業者Verizon、南アフリカのネットワーク事業者であるVodacom Business、欧州・富士通などの事例が紹介された。

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(唐沢 正和)
2010/7/23 09:30