ブロケード、シンプルなネットワークを実現する「Brocade One」構想

アプリケーション視点での仮想化を支援


「Brocade One」のイメージ

 ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社(ブロケード)は16日、統合ネットワーク・アーキテクチャおよび戦略である「Brocade One」を発表した。アプリケーション仮想化の複雑性を軽減し、シンプルなネットワークを実現するための構想で、管理の簡素化や既存の技術投資の保護などが可能になるという。

 ブロケードでは、Data Center Bridging(DCB)として標準化が進んでいるConverged Enhanced Ethernet(CEE)や、DCB上でファイバチャネル(FC)プロトコルを利用するFCoEといった統合ネットワークアーキテクチャを推進し、ネットワークの簡素化を実現しようと提唱してきた。そうした中で、2008年には米Foundryを買収し、FCのみならずIPネットワークに関する技術も取得。「この買収によって、1つの統合されたネットワーク、つまり超高性能で、拡張性のあるネットワークを提供可能になった」(米Brocade ワールドワイドセールス担当シニア・バイスプレジデント、イアン・ホワイティング氏)という。

 一方、世の中ではデータが爆発的に増大し、ネットワークへの圧力もまた増加している。さらに、モバイルを含めたさまざまなデバイスが登場し、データセンターの中だけでなく、世界中どこからでも、オンラインでアクセスできることを期待するようになった。

 こうした変化の中で、ブロケードが提唱する「Brocade One」とは、データセンターでの活用が急速に進みつつある、仮想化を十分に考慮したアーキテクチャ。ネットワークを統合・簡素化した上で、サーバー上の仮想マシンにフォーカスし、アプリケーションの視点からリソースを適切に利用できるようにするという。

 米Brocade データセンター製品部門 プロダクト・マネジメント担当バイスプレジデントのダグ・イングラハム氏は、「アプリケーションごと、仮想マシンごとにネットワークを結び付ける技術や、複数のスイッチをあたかも1つスイッチであるかのように運用し、コスト削減を図る技術などを提供。また、サードパーティの管理ツールとも連携し、LAN、SAN、統合ネットワークなどをすべて統合して管理できるようにする」と、このビジョンを説明する。

 「Brocade One」にはいくつかの要素技術があるが、イングラハム氏が挙げたもののうち、仮想マシンとネットワークを結び付ける技術が「Brocade Virtual Access Layer(VAL)」。VEPA(Virtual Ethernet Port Aggregator)やVEB(Virtual Ethernet Bridging)といった標準技術を用いることで、特定のベンダー、ハイパーバイザーに依存せずに、ネットワーク機能を仮想マシンから物理スイッチへオフロードできるようにする。

 また、スイッチをクラスタ化するのが「Brocade Virtual Cluster Switching(VCS)」技術。スパニングツリープロトコルを利用しなくとも、マルチパスや自動リルーティングなどによって高い可用性を実現するほか、ロスがなく低遅延なため、iSCSIやFCoEといったストレージネットワークにも対応するという。さらに、仮想マシンが別のサーバーへ移動したとしても、ネットワーク全体で仮想マシンの情報を共有しているので、きちんと追従してサポートできる点もメリットだ。VCSの管理面では、単一のスイッチとして管理可能な仕組みを導入するほか、暗号化などの機能を後から導入する際にも、稼働中のアプリケーションを止めずに無停止で行える柔軟性も持つ。

Brocade Virtual Access LayerBrocade Virtual Cluster Switching
ブロケード 代表取締役社長の青葉雅和氏

 ブロケードでは、こうした技術を搭載したスイッチ、アダプタなどの製品を順次提供するほか、SAN/LAN/統合ネットワークをすべて管理できるツール「Brocade Network Adviser」を2010年第3四半期に提供。また、他社製品への組み込みも行う考えで、同社の代表取締役社長、青葉雅和氏は、「仮想化は複雑なため、垂直統合型の導入になりがち。しかし、現実には1社でデータセンターを構築することは少なく、マルチベンダーの対応が求められる。当社はもともとOEMベンダーであり、サーバー/ストレージベンダーとの関係が強い。大手ベンダーと広く協業し、マルチベンダー対応が可能なネットワークベンダーは当社だけだ」と述べ、自社の強みを強調した。

 なお、現在広く利用されているFC SANについても、ブロケードでは顧客の投資保護の観点から継続してサポートしていく意向で、これからも提供を継続することをあらためて表明していた。

広範なパートナーとの関係によって、マルチベンダーのソリューションを提供できるのが強みという
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(石井 一志)
2010/6/16 18:40